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元気とは言えない心持ちの中、
俺と二子は蜂楽に逢いに遠くの他校に来ていた。
正直に言って、多分蜂楽もサッカーはしていないだろう。
けれど前世仲良かったと言う事もあり、
仲良くなれたら良いななんて思いながら
正門をくぐろうとしたその時、
前から独特な髪の青年が走ってくる。
前世によく見た顔、
蜂楽 廻 が校舎から校庭に出てきて、
正門に向かって嬉しそうに走ってきているではないか。
オマケに手を大きく振りながら。
バッチリ目が合っているが、
今世では関わりがない。
友達でも居るのだろうと、周りを見渡すが
正門付近には俺ら以外誰も居ない。
恐る恐る手を振り返すと、
ぱあっと笑顔になった蜂楽が更に進める足を速めてこっちに来る。
俺と二子は目を白黒させながら、どうしようかとわたわたしていると、
蜂楽が走ってきた勢いに任せて俺に抱きついてきた。
目を点にしている二子を無視するように蜂楽は
蜂楽
と満面の笑みでそう言った。
蜂楽
蜂楽は俺らの有無を聞かず校舎に招き入れた。
見慣れない廊下を歩きながら蜂楽は説明をする。
蜂楽
蜂楽
くるくると回りながら歩く蜂楽に
潔
と声を掛けると嬉しそうに笑った蜂楽は
蜂楽
と俺を指さした。
蜂楽
蜂楽
蜂楽
蜂楽
そう言いながら前世と変わらない満面の笑みを見せる。
その後すぐに窓に駆け寄り、
窓を開けて風を感じながら蜂楽は続きを話す。
蜂楽
蜂楽
蜂楽
蜂楽
窓の縁に手を置いた蜂楽は
少し遠くを見つめながら、
どこか悲しそうにそう呟くような声で言う。
少し間を置いた後にパッと表情を変えて俺を見つめる。
蜂楽
蜂楽
蜂楽
にゃははと笑いながら俺の手を掴んで走り出す蜂楽に
引っ張られる形で俺と二子も廊下を走った。
しばらく走った後に1つの部屋に入る。
その部屋は少し独特の匂いが漂っていて、
いくつものイーゼルに絵が描かれたキャンバスが置かれていた。
どれもこれも不思議さがある絵ばかりだった。
蜂楽はその中でも一際不思議さが目立つ絵の前に俺を引っ張って行った。
いわゆる抽象画だろうか。
物という物が描かれていない。
二子も後をついてその絵の前に立つ
蜂楽
その問いに二子は大きく首を傾げる。
どうやら分からないらしい。
しかし俺はこの絵に感じる物があった。
潔
自信なさげにそう述べると、蜂楽は嬉しそうに目を輝かせた。
蜂楽
感動したような、そんな顔を蜂楽はしていた。
ならば次と蜂楽は俺をまた別の絵の前に立たせる。
その絵はこの部屋で一番大きな作品。
そのキャンバスには
絵を描いてる蜂楽の前にサッカーをしている、かいぶつ?らしき物体がある。
まるで絵の中の蜂楽はそれをモデルにして絵を描いている様に見えるが、
絵の中の蜂楽が描いてる絵にかいぶつは描かれておらず、
また絵を描いてる蜂楽の絵が描かれてあった。
蜂楽
ワクワクとした眼差しで俺を見つめる。
じっと俺はその絵を眺めた。
ふと頭によぎった言葉を零す様に呟く。
潔
その言葉を聞いた途端蜂楽の瞳が揺れる。
まるで虹を初めて見た子供のような顔。
蜂楽の大きな目に一層ハイライトが入ってキラキラと輝いて見えた。
良かった、正解だったようだ。
ほっと胸を撫で下ろしていると、
勢いよく抱き着いてきた蜂楽を支えきれず背中から床に倒れた。
床に打った背中も痛いけれど、
それ以上に蜂楽がギリギリと音がなるんじゃないかと思うほど強く俺を抱き締める。
あまりの痛さに俺は蜂楽にその事を伝えようと口を開けた。
潔
蜂楽
蜂楽
俺の言葉は遮られたものの、
零したように耳元で俺に言葉を伝えると、
蜂楽はフッと力を抜いて、俺の上から退いた。
その言葉にハッとしたように二子が口を挟む
二子
二子
それを聞いて蜂楽は首を傾げた。
蜂楽
蜂楽
目をぱちぱちさせながら驚いた顔で俺を見る。
数秒不思議そうにした後、ふふっと笑っては
蜂楽
倒れたままの俺と目線を合わせるようにしゃがむ。
顔が近い。
するといきなりズルズルと引きずりながら二子が蜂楽から俺を遠ざけた
少し不機嫌そうだ。
その様子を見ていた蜂楽が何かに気付いたように笑った。
どうやら蜂楽の絵は周りからあまりいい評価を貰えなかったようだ。
何を描いているのか分からない。と。
それもそのはず、
周りには芸術に差程興味のない者たちばかりで
抽象画で理解を得るには難しかったのだ。
そして真っ当な評価をくれたのは美術の先生と自分の親だけだったらしい。
けれど、誰一人として何を描いているのか当てれないで居た、
と蜂楽は教えてくれた。
だからこそ、俺と会えるのを楽しみにしていた。
と。
今世でも分かり合える事に安心感を覚え、
連絡先を交換して、
俺らは帰る為に校門に向かった。
校門について、いざ別れの時──
──その時に思い出す。
潔
二子