ヒロト
今日も撮りにいってるの?
ケイジ
勿論。
ケイジ
そういうヒロトも行ってるんだろ?
ヒロト
まぁね、今日は歌舞伎町の雑居ビル跡地。
ヒロト
何年か前に火事で逃げ遅れて何人も死んだとこ
ヒロト
そっちは?
ケイジ
和歌山の千畳敷。
キレイな海に飛び込む自殺者が多いんだよね。
キレイな海に飛び込む自殺者が多いんだよね。
ケイジ
どんな景色を見ながら死んでいくのか…
今日も確かめないとね
今日も確かめないとね
世の中にはいろんなマニアがいる。 この二人は…事故現場マニア。
ある事故現場で出会い、意気投合した。ただ、二人の興味は少し違う。
ヒロトは、人が命を落とした場所で一晩過ごすことで、死者を感じたいというマニア。
ケイジは、人が死ぬ直前に見る景色を写真に記録することで、覚悟と失望の究極の一枚を探しているマニア。 つまり、ビルからの飛び降り自殺の場合、ヒロトは落ちた場所に、ケイジは落ちようとしている場所に、興味がある、ということ。
ヒロト
ケイジ、歌舞伎町に着いたよ。
ビルの跡地には、もう新しいビルが建っているけど、ちょっとしたスペースにテントは張れたよ。
今夜も地縛霊を感じられるかな♪
ビルの跡地には、もう新しいビルが建っているけど、ちょっとしたスペースにテントは張れたよ。
今夜も地縛霊を感じられるかな♪
ケイジ
相変わらず時間かけるね。
こっちは飛び込みスポットからカメラを覗かせて、パシャッとしたら終わり
こっちは飛び込みスポットからカメラを覗かせて、パシャッとしたら終わり
毎月第二日曜に、それぞれが興味ある事故現場を巡り、お互いの活動を実況し合う事が楽しみになっていた…
1ヶ月後
この活動を初めて一年。 いつもよりスケールの大きい現場に 行きたくなったヒロトは、 谷川岳にやって来た。
群馬県の谷川岳には、 一ノ倉沢という ロッククライミングルートがある。
このルートは岩が硬くとても滑りやすいことから、これまでの90年間で 800人以上の事故による死者が出た、事故死の多さがギネス記録にもなっている死のルート。
ヒロト
今日は谷川岳に来てまーす😀
ヒロト
ロッククライミングに失敗して滑落死した人が大勢いるらしい。
落ちてくるならここかな?
墓岩(はかいわ)ってポイントを見つけたから、今日はここにテントを張ります❗
楽しみ~
落ちてくるならここかな?
墓岩(はかいわ)ってポイントを見つけたから、今日はここにテントを張ります❗
楽しみ~
ケイジ
俺も今日は山に来てるよ。いつもジャンルはバラバラなのに奇遇だね
ヒロト
まぁ、山は山でも俺たちの興味は違うからね。
ヒロト
今日も楽しもうぜ❗
ケイジ
…今、落下して死んだ人が多いって、有名な所に来てるんだけど…なんか…いつもより気持ち悪いな…
ヒロト
どうした?
ケイジらしくないじゃん。
ケイジらしくないじゃん。
ケイジ
なんか、改めて考えると、俺たちのやってること、不謹慎だよな…いつか呪われたりして…ハハッ…
ヒロト
何言ってんだよ。いつもどおり、カメラ覗かせてパシャッで終わりだろ!
ケイジ
そうだよな…
ケイジ
…なんか気持ち悪いから、
さっさと撮って
終わらすか…
さっさと撮って
終わらすか…
ヒロト
そうだよ。
ヒロト
俺も落ちて死んだ人が多い山に来てるんだけど、ケイジは何山に来てるの?
ケイジ
よいしょ…
結構滑るな…
結構滑るな…
ケイジ
ん?何山か分かんないけど、何か、ロッククライミングで有名なとこみたい
ヒロト
え?ロッククライミング?
ケイジ
うん。一ノ倉沢なんとかって…あっ…やべっ…
ヒロト
えっ!それって…
ズルッ!
ケイジ
う、ウワーーッ‼️
ドン!!!
ヒロト
グェ…
人の不幸を楽しむ不謹慎な人に下された天罰かもしれない…








