相澤桜子
…ねぇ、翡翠
一条翡翠
なに?桜子。
翡翠がとろけてしまいそうな笑みで、優しく私の名前を呼ぶ
普通の人ならそれだけで恋に落ちてしまいそうだが、あいにく、今の私には響かない。
相澤桜子
あと一つだけ、お願いがあるの…
一条翡翠
フフッ、桜子のお願いだったら何でも聞いたげるよ?
一条翡翠
さぁ言って?僕の可愛い彼女さん🖤
相澤桜子
…ッ、蒼と、友達でいることだけは許してほしいの…
一条翡翠
…え?
相澤桜子
(声のトーンが変わった…)
こんなことを言えば、彼の機嫌が悪くなるのは分かっていた。
私といれば、蒼に迷惑がかかってしまうことも…
それでも、蒼との縁がこんなかたちで切れてしまうのは、どうしても嫌だった。
私を支え、守ってくれた大切な人だから…
一条翡翠
…ッ桜子、まだわかんないの?
一条翡翠
君は僕の『彼女』になったの
一条翡翠
だから…
彼の顔が至近距離に近付く
一条翡翠
他の男なんて必要ねぇだろ?
相澤桜子
…ッ!
鋭い目力に怯んでしまう
相澤桜子
ちょ、ちょっと待ってッ!
私は両手で彼を押しのけた
相澤桜子
えっ、えっと…
相澤桜子
…もう蒼とは登下校も一緒にしないし、お昼も一緒に食べないし、一緒にも出掛けない…ッ!
一条翡翠
それで?
相澤桜子
それで…ッ、
相澤桜子
……ずっと翡翠の傍にいる
相澤桜子
何処へ行くにも何をするにも、翡翠と一緒にいる。
一条翡翠
…それって、桜子の時間を全部俺にくれるってこと?
相澤桜子
そう…
相澤桜子
だから翡翠ッ、お願い…ッ!
じっと彼の顔を見つめる
一条翡翠
……わかった。
相澤桜子
ッ!
コツンと彼が自分の額と私の額を合わせた
一条翡翠
でもちゃんと約束守ってよ
一条翡翠
君の一番は僕なんだから
相澤桜子
翡翠…
一条翡翠
もしアイツを優先したら…わかってるよね?
相澤桜子
うん…
『ずっと傍にいる』なんて、自分で自分の首を締めるようなものだ。
そんなことを言う自分に驚いたけど、やっぱり蒼と離れる事の方が辛かった。
相澤桜子
(…ッ!もしかして私、蒼のことが…)
失ないそうになって、ようやく自分の気持ちに気づいた
相澤桜子
(…だけど、絶対翡翠にバレちゃダメだ…ッ)
もしバレたら彼は…
相澤桜子
(蓋をしなくちゃ…)
相澤桜子
(蒼のことが好きだって気持ちに)