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夏都side
ペットボトルを抱えて準備室に 戻る頃には威榴真が蘭達に 一通りの説明を終えていた。
紫龍いるま
威榴真に促され澄絺は 「柄じゃないなぁ」と ぼやきながらも口を開いた。
春緑すち
春緑すち
春緑すち
話し始めた澄絺の口調は 淀みなかった。
迷いなく言い切る姿は 間違いなく「監督」だ。
蘭達は圧倒されたように瞬きし お互いに顔を見合わせた。
緊張した空気に気付いた威榴真が フォローの為か女子3人を見渡す。
その時、澄絺がいきなり 質問を投げかけた。
春緑すち
赤暇なつ
俺は堪らず心の中で叫び 意識が遠のくような気分になる。
どういう思考回路をしているのか 澄絺はここぞと時に 突拍子もないことを言う。
彼なりに考えがあってのことだと 後々分かるのだが前後の文脈を すっ飛ばすからみんな ついていけないことが殆どだ。
桃瀬らん
最初に反応したのは こういう事態に3人の中で 誰よりも慣れている蘭だった。
しかし蘭でも澄絺の質問の意図までは 汲み取れなかったようだ。
澄絺への返答も、視線も 真意を探ろうとするものだ。
けれど澄絺は真っ直ぐに 蘭を見返すだけだった。
赤暇なつ
ハラハラする俺と同じように 蘭も澄絺のモードに気付いたようだ。
桃瀬らん
尋ねられた通り恋から連想する色を 告げた蘭に澄絺は大きく頷く。
美琴もその反応に背中を 押されたらしく遠慮がちに 声を発した。
桜黄みこと
澄絺は今度も興味深げに頷き 残る恋醒を見やる。
春緑すち
雨乃こさめ
恋醒の答えを耳にした瞬間俺は あまりの衝撃に息をするのも忘れた。
隣に座る威榴真が「金色?」と 呟くのが聞こえハッと我に返った。
視線を走らせると蘭と美琴も呆気に 取られたように動かないでいる。
澄絺だけは目を輝かせ 机に手をつき身を乗り出した。
春緑すち
雨乃こさめ
雨乃こさめ
錆びるのは金じゃなくて銀だし どっちにしろ酸化しにくいと思う。
咄嗟にツッコみそうになり 俺は慌てて唇を噛む。
我ながら空気の読めない 反応だと思ったし何より 澄絺の表情を見てしまった。
心の底から嬉しそうに笑う、その顔を
春緑すち
今の言葉が決定打だ。
まず間違いなく恋醒に絵を 頼むことになるだろう。
威榴真もそう直感したはずだが 律儀に手順を踏むようだ。
紫龍いるま
赤暇なつ
威榴真の言葉の端に現れた動揺に 俺は耳ざとく反応する。
蘭も気が付いたらしくぴしっと 音を立てるように表情が固まった。
だが威榴真を責めることもなく 殊更明るい調子で応じる。
桃瀬らん
美琴と恋醒も頷いて 隣の美術室へと消えていく。
赤暇なつ
蘭達を待つ間も澄絺は 興奮冷めやらぬといった様子で 目を輝かせている。
一方の威榴真も俺と似た心境なのか 複雑そうな表情を浮かべたたままだ。
赤暇なつ
自分たちは単純に 「絵を描いてくれる人」を 選ぶつもりでいたけれど実際は 「3人の中から、1人だけ」を 選ばなければならなかった。
澄絺は自分の作品を審査に かけられることに慣れている分 他人の作品を評価することにも 抵抗が薄いのかもしれない。
俺も出品する側ならなんとか 耐えられそうだが選考する側に 回るのは気が重くなる。
next__♡800