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くりぃむです! いつもご愛読ありがとうございます🙇♀️ 作者のバカ過ぎるミスにより、垢に入れなくなってしまったので今後はこちらの垢でやらせて頂きます😭
夏都side
赤暇なつ
美術部員として何度もコンクールを 経験しているとはいえ面と向かって しかも参加者がお互いに顔を 揃えた状態で審査されるのは 初めてなんじゃないだろうか。
部活の手伝いだし審査員は知り合い 賞状が出るわけでもない。
それでも3人のうち1人だけが 選ばれたら気まずい思いを させてしまう可能性が高かった。
赤暇なつ
解決策は思いつかないものの 気付いてしまった以上 見過ごすのは躊躇われる。
せめて威榴真達に相談しようと 椅子から腰を浮かせた時 準備室のドアが開いた。
桃瀬らん
赤暇なつ
桃瀬らん
蘭に反射的に答えてしまい 俺は「あっ」と息を呑む。
だが既に後の祭りだ。
てきぱきと準備を進めていく蘭達を 横目に威榴真達にならって大人しく 壁際に並ぶしか道は残されていない。
作業用の大きな木工机に ずらっと作品が並ぶと迫力があった。
赤暇なつ
俺と澄絺は中学時代絵を描くのが 好きで美術部に所属していたが 3年も前の話だ。
こうして間近でキャンバスに 描かれた絵を見るのはやはり 心惹くものがある。
ぱっと目を引かれたのは手前に 並べられた色鮮やかな水彩画だ。
高校に入って授業では音楽を 選択している俺たちは蘭達の 作品に触れる機会は少ない。
賞を獲って校内に飾られたり 文化祭で展示されたりするのを 目にする程度だ。
赤暇なつ
桃瀬らん
緊張感の漂う中 蘭が勢い良く名乗りを上げた。
そして俺の読み通り手前の水彩画を 自分の作品だと指差した。
春緑すち
春緑すち
真っ先に感想を告げたのは 意外にも澄絺だった。
蘭もぽかんと口を開けそれ以外の リアクションをとれないでいる。
その様子を微笑ましく 思いながら俺も続く。
赤暇なつ
紫龍いるま
客観的なコメントをしているようで 威榴真の顔は自分のことのように はにかんでいた。
赤暇なつ
赤暇なつ
苦笑交じりに蘭へと視線を戻すと うわずった声が響いた。
桃瀬らん
素直に褒められておけばいいのに 蘭は居た堪れなくなっているようだ。
嬉しいけど、困る!
そんな心の声が全身から 洩れ聞こえてくるようで 俺は堪らず吹き出した。
赤暇なつ
紫龍いるま
春緑すち
桃瀬らん
威榴真と澄絺も同じように笑い出し 蘭はますます顔を赤くする。
立ち尽くす彼女に 不意に澄絺が手を伸ばした。
春緑すち
ぽんぽんっ、と優しい手つきで 頭を撫でられ、蘭が「わっ」と 小さく声をあげる。
それがきっかけになったのか 金縛りが解けたように口元を緩めた。
桃瀬らん
赤暇なつ
ほっとしたのが半分 残りは上手い切り返しだなぁと 感心して、また笑いが 止まらなくなっていた。
次第に本格的な笑い声になり 恋醒や美琴にも伝染っていった。
先程から部屋に張り詰めていた 緊張感も一気に和らいで いくのが分かる。
紫龍いるま
和やかな空気に 威榴真の低い呟きが落とされた。
シャツに絵の具をこぼして しまった時のように困惑が じわじわと染みをつくっていく。
桃瀬らん
蘭は発言の意図が飲み込めなかった らしく見事に固まっている。
もう1人の当事者である澄絺は 威榴真の気持ちが手に 取るように分かったのだろう。
あからさまに「しまった」と いう顔で眉を顰めた。
突如訪れた気まずい沈黙を前に 恋醒と美琴は困惑したように 見守っている。
赤暇なつ
澄絺から蘭に向けられるのは あくまで幼馴染としての感情だが 美琴が勘違いしてしまう 可能性もゼロではない。
そんなことになれば澄絺との関係が ややこしいことになってしまう。
赤暇なつ
力技で、気まずい空気ごと 話題を変えた。
蘭の絵の隣に並ぶ美琴の 作品を眺めながら 「細かい描き込みだな」と 感想をもらすと威榴真と澄絺も それに続き、再び準備室に 独特の緊張感が漂い始める。
だがほっとしたのも束の間 今度は澄絺が場を凍らせる 一言をもらした。
春緑すち
直前の蘭への好評価とは 打って変わって美琴の作品に 対するコメントは辛辣だった。
まるで遠慮のない発言に 俺はもちろん、威榴真も ぎょっとしている。
赤暇なつ
紫龍いるま
慌ててフォローを入れてはみたが 澄絺の口を突いて出たのは さらに痛烈な感想だった。
春緑すち
澄絺らしい、率直な感想だった。
含むところがないのは 俺もよく知っているが 実際にぶつけられるとなると 話は別だ。
真冬に冷や水を浴びせられたような 心地になるし悪気がないからこそ辛い
赤暇なつ
俯いてしまった美琴を 両隣に立つ蘭と恋醒が 心配そうに見やっている。
威榴真も面と向かっては非難しないが じろりと澄絺を睨む。
赤暇なつ
不安げに2人を交互に見ると 澄絺の視線は既に恋醒の 作品に向かっていた。
蘭と美琴の時とは違い 無言で見入っている。
他のメンバーも気付き この場の視線が1枚の絵に 注がれていく。
赤暇なつ
机の端に置かれていた油絵 を目にした瞬間俺の心臓が 大きく跳ねた。
長らく他校や展示会に 貸し出されていた為こうして 実物を見るのは久しぶりだ。
『いつかの桜』というタイトル通り キャンバスには満開の 桜が咲き誇っている。
眩しい程の陽の光に照らされながらも どこか切なさも香ってくる絵に 一目惚れしたのはちょうど 2年前のことだった。
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