街中に広がるクリスマスムード。
イルミネーションにツリー。
その光景を見て、俺は
もう一年か...
と呟く。
去年のクリスマス、弟の橙は俺の目の前から消えた。
橙
橙
桃
桃
そう言って目を輝かせていた橙。
なかなか寝てくれなくて、プレゼントを置くのにも苦労したっけ。
気づけば、次の日になっていたことを思い出す。
橙
橙
橙
桃
桃
俺たちの親は、数年前に亡くなった。
それから俺と橙は二人暮らしをしている。
俺はバイトで夜遅くなってしまうことが多く、橙を1人で待たせてしまうことも多かった。
心配だったので、何か連絡できるものを、と思い、スマホも考えたけど、まだいらないような気がして、小6になる前のクリスマスにタブレットをプレゼントすることにした。
桃
橙
目をキラキラさせながら新しいタブレットを大切に抱きしめる橙。
桃
橙
桃
桃
橙
橙
桃
桃
桃
橙
橙
桃
桃
桃
桃
橙
橙
バイトを終えた俺は、橙に一言「今から帰る」とだけ送り、帰路に着いた。
帰る途中でケーキ屋を発見したので、奮発してケーキを買い、急ぎ足で帰った。
ようやくついた家。
玄関のドアを開け、
桃
と言ったが返事はない。 いつもなら、
橙
と迎えに来るはずなのに。
桃
桃
桃
桃
桃
家中探したが、橙はいなかった。
さっき送ったLINEを見ても、既読すらついていなかった。
何を送っても既読にならず、俺はただただ帰りを待った。
せっかく買ったケーキも食べる気にはならず、ただずっと、待つことしかできなかった。
でも、いくら待っても橙が帰ってくることはなかった。
次の日には警察に捜索願を出したが、年が明けても、橙は見つからない。
俺は後悔した。
あの時、バイトに行かなければ。
あの時、一緒にいれば。
橙ともっと遊んでやればよかった。
でも、何度後悔しても、過去の自分を憎んでも橙が帰ってくることはなかった。
桃
気づけば、一年が経とうとしていた。
?
通話
00:00
イルミネーションの光に照らされながら、夜道を一人歩く。
誰だろう、と思いながら電話に出る。
桃
警察官
警察官
桃
警察官
桃
桃
警察官
警察官
桃
その言葉と共に電話を切り、俺は走り出した。
早く橙に会いたい。その想いだけで走り続けた。
桃
ようやくついた交番。
息を整えながらドアに手をかける。
桃
そこには、少しだけ大人になった橙がいた。
橙
桃
少し声も変わったな、などと思っていると、森さんに声をかけられた。
警察官
桃
警察官
桃
警察官
警察官
桃
警察官
桃
警察官
桃
警察官
桃
桃
兄ちゃんは、俺たちを1人で育てることに疲れて、4年前に出ていった。
それきり、兄ちゃんがどこで何をしているかさえわからず、俺たちは兄ちゃんをなかったことにして、過ごしてきた。
その兄ちゃんが、今さら橙を...?
警察官
警察官
桃
警察官
桃
俺に考える間もなく、彼は現れた。
スラっと細くて、綺麗な紫色の髪。
それは紛れもなく“紫ーくん”だった。
桃
紫
そう静かに言う紫ーくん。
俺はどうしたら良いのかわからなかった。
4年ぶりに話す、大好きな、大切な、たった1人の弟を奪った人。
何と声をかければ良いのか、返事さえわからなかった。
桃
桃
桃
抑えきれない様々な感情と共に出ていく言葉。
紫ーくんは俯きながら
紫
と小さく言った。
桃
桃
そう伝えると、ポツリポツリと話し出した。
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
紫
俺は悩んだ末、こう答えた。
桃
桃
桃
桃
桃
こんなこと、言いたくなかった。
でも、言うしかなかった。 橙を守るために。
紫
紫
紫ーくんは小さな声でそう言うと、交番から出ていった。
橙
橙
桃
橙
橙は寂しそうな顔をしてドアの向こうを眺めている。
桃
桃
俺は少し怖かった。
紫ーくんが良い、と言いかねなかったから。
でも、そんな心配はいらなかった。
橙
橙
橙はとびきりの笑顔でそう言った。
気を使うやつだから、本当は嫌だと思っているのかもしれない。
それでも、嬉しかった。
警察官
桃
警察官
桃
橙
一年越しに橙と迎えるクリスマス。
一年前、守れなかった約束。
ささやかではあるが、パーティーを 開くことにした。
ただケーキを食べる“だけ” なんだけど。
橙
帰り道に買ったケーキを本当に美味しそうな顔で食べる橙。
そんな橙を見て、俺まで幸せになる。
桃
一年前奪われた幸せを噛み締めるように、そう呟いた。
そんな彼が、 “弟のためにパティシエになる” と決めたのはまた別のお話。
_____ 一年越しのクリスマス Fin.
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!