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第1話 - あ

2023年09月17日

#恋愛

結城　真矢

マサト

サキ、ワイシャツにアイロンかけてもらえない？

マサト

しわがひどくてさ

サキ

うん、分かった

サキ

次からかけとくね

マサト

あ～あと、今日のお弁当のご飯、なんか水分多かったことね？

サキ

え？そうかな～？

サキ

私は柔らかめが好きなんだけど

マサト

俺は、固めが好きなんだよ

マサト

水分多いと、べちゃべちゃしておいしくないだろ

サキ

べちゃべちゃしてるとか、マサトはそう思ってても、私は違うの

サキ

イヤなら、今度から自分で水少なめにしてご飯用意してもらえる？

マサト

は？なんでそうなるんだよ？

マサト

分かりました、って言えば済むことじゃん

サキ

あのさ、なんで私が召使みたいにマサトのお願い何でも聞いてあげないといけないの？

マサト

リクエストだろ？これは

サキ

マサトは求めるものが多すぎるの！

サキ

ギブアンドテイク、って言葉知ってる？

サキ

明らかに私がマサトにしてあげてることの方が多いじゃん

マサト

そんなことねーだろ

マサト

俺の収入の方が圧倒的に多いし、それでサキは暮らしていけてるだろ

マサト

めちゃくちゃありがたいギブしてるじゃん

サキ

毎日働いてくれてるのはありがたいけど、

サキ

私だって仕事してるじゃん

マサト

クリニックの受付だろ？しかもパートタイムの

マサト

俺は営業職で、多い時は１日に10件もクライアントのところに行って営業したり、

マサト

挨拶してつかれてるんだよ

マサト

帰った時には疲れすぎてあるけねーほどだし

マサト

そんな状態で俺に家事やれとか言うのかよ？

サキ

疲れてるのは私も知ってるよ

サキ

だから、そんなに家事やれなくても文句言ってこなかったよ

サキ

でも、最近のマサトはやってもらって当たり前、って気持ちが多すぎる、っていうか

サキ

私に頼りすぎなの

サキ

何かやってもらったらもっと感謝して欲しい、っていうか...分かる？

マサト

は？わかんねーよ

マサト

それに、いつサキは俺に感謝してくれてるんだよ？

サキ

私はマサトに感謝の気持ち伝えてるつもりだよ

サキ

仕事終わりにLINEするときは、「いつもありがとうって最後に加えてるじゃん」

マサト

え？あれで感謝の気持ち伝えてるつもりだったの？

マサト

マジかよ...毎日頑張ってるんだから、

マサト

なんかもっと高価なものくれてもいいもんだと思ってたけど

サキ

へ？何よ...高価なもの、って...

マサト

例えば時計とか...

サキ

は？時計？

マサト

そっ！最近、今まで使ってたやつがよく時間ズレるんだよな～

マサト

もう寿命だと思うから、買い替えたくてさ、

マサト

今最近欲しいと思ってる時計のリンク送るんだけど...ほら、これ見てみて

サキ

え...！何これ...６万円もするじゃん！

サキ

こんなブランドもの、今の私に変えるわけないでしょ！

マサト

なんでそうやってすぐに諦めるんだよ

マサト

貯金使えば、簡単に変えるだろ？

サキ

今、溜めている貯金は他のことに使う予定があるから無理なの...

サキ

でも、時計が欲しい、っていうのは把握しておくよ

サキ

今すぐには無理だけど、帰るように頑張ってみるから、少し時間ちょうだい

マサト

マジ！？期待しておくよ

～翌日9時～

マサト

サキ！

マサト

またワイシャツのシワ、ちゃんと伸ばしきれてないんだけど！？

サキ

え？ちゃんとかけたよ？

マサト

お前のちゃんとはどれくらいなんだよ...

マサト

会社の同僚はみんなピシッとしたワイシャツ着てるのに、

マサト

俺だけ一部シワのよったところがあると、着ていくのが恥ずかしいんだよ

マサト

営業職の人ってみんな、しっかりスーツ着こなしてるだろ？

マサト

スーツくらい着こなさないと、だらしなく見られるんだよ

サキ

私は精いっぱいしわ伸ばしたつもりだよ！

サキ

でも、しわが結構深くてちょっとは残っちゃったの

サキ

しょうがないじゃん

マサト

本当に頑張ったのかよ？

サキ

そんなに文句言うなら、私もうやらないから

サキ

どうせやっても、全然できてない、って言われるならもうやりたくない

マサト

なんでそんな子供みたいな言い方するんだよ...

マサト

マキさんにやり方頼んでみたらいいんじゃないの？

マサト

家事上手だし、アイロンがけもできるんじゃない？

サキ

まあ、お母さんは確かに家事上手だし...頼ってみるのはありかもね

～翌日朝～

サキ

ねえ、ママ

マキ

うん？どうしたの？

マキ

最近マサト君とはどう？

サキ

そのことなんだけど...マサトがワイシャツのアイロンがけがヘタだ、って言うんだよね

サキ

私はちゃんとやってるつもりなんだけど、なんかシワが少し残っちゃうの

サキ

ママにコツ教えてもらおうかな～と思って...

マキ

もちろんいいよ

マキ

いつ来る？

サキ

う～ん...まだしっかり予定分からなくてさ

マキ

そう？でも母さん、基本家にいるから、いつ来てもいいよ

マキ

家つく少し前でも連絡くれたら、買い物の予定とか簡単にずらせるし

サキ

ほんと？ありがとう

サキ

じゃあ、私の仕事の予定、あとで送るね

サキ

その時間帯以外は、なるべく空けておいてほしいかな

マキ

うん、大丈夫よ

～その日の12時～

サキ

マサト～この前欲しい、って言ってた時計だけど、

サキ

何色がいいの？

マサト

え？あ～いや、もう大丈夫

サキ

え？なんで？

サキ

欲しかったんじゃないの？

マサト

いや、もう自分で買ったからさ

サキ

そうなんだ...

マサト

あ、あと...今日は飲み会に行くからご飯いらないよ

サキ

分かった

マサト

サキは、今日は仕事だったけ？

サキ

うん、今日は21時くらいになる予定

マサト

そうか、了解

マサト

じゃあ、またな

～その日の20時～

マキ

サキ！待って！

マキ

少しだけ、ママの話を聞いてほしいの！

サキ

何？話って...！

サキ

娘の彼氏と寝ておいて、話すことなんてある？

サキ

マサトがつけてた時計も、ママがプレゼントしたんでしょ！？

サキ

ドアの外から話してるの、聞こえてたよ！

マキ

ママね...マサト君からサキの家事のできなさにイライラしてる、って相談を受けてたの

マキ

サキも、たまに料理教えてもらいたくて努力はしてたと思うけど、

マキ

なんか、マサト君もイライラがおさまらなかったみたいでね

マキ

相談を聞いてるうちに、お互いに好きになっちゃってたの

サキ

は？相談聞いてる、って...いつから？？

マキ

サキたちが結婚して3か月目くらいかな

サキ

そんな前から...それで、たまにあって、プレゼントまでしたんだ！

サキ

最低！

マキ

でも、ママもう、マサト君のこと好きになっちゃって...

マキ

2人で話した結果3人で住むのはどう？って話をしてたのよ

サキ

は？3人？

サキ

私と、ママとマサトのことを言ってんの？

マキ

そう

マキ

私は家事できるし、マサト君も家事出来る人が欲しいし、サキは私が加持すればラクでしょ？

マキ

ママも、マサト君と住めるし...悪い話ではないと思うんだけど？

サキ

あのさ、自分が何言ってるか分かってんの？

マキ

分かってるわよ

マキ

このタイミングで切り出したのも、理由があるの

マキ

ママ、最近株初めてね、前から買っていたブランド会社の株で、高い利益が出そうなの

マキ

だから、3人でもう少し大きな家に住めるかな～って...

サキ

何それ？頭おかしいんじゃないの？

マキ

サキ...マサト君から聞いてはいたけど、最近口悪いんじゃないの？

マキ

マサト君も、毎日そんな言い方されたら一緒に暮らすのも嫌になるわよ

マキ

もっと、旦那さんには優しくしなさい

サキ

パパに強く当たってたくせに、よくそんなこと言えるよね

サキ

それが嫌になって、離婚する原因になったんじゃん！

マキ

それがあるから、今はこうして男の人に優しくしようしてるんじゃないの

サキ

優しくして、結果、マサトがママのことを好きになったから、

サキ

お互いに離れるのは嫌なんだ？

サキ

何なの...それ...意味わからないでしょ！現実的に考えてあり得ないから！

マキ

でも、マサト君もそう思ってると思うし、

マキ

お互いの気持ち、もう変わらないのよね

マキ

あとは、サキが了承してくれたらいいのよ

サキ

なんでそうなるの？

サキ

ママ、娘の旦那と不倫した身なんだよ？

サキ

自分がしたこと、ちゃんと分かってんの！？

マキ

分かってるわよ

マキ

だから、こうして話し合おうとしてるんじゃないの

マキ

マサト君ともさっき話してたのよ

マキ

そろそろ、サキに今後のこと話さないとね、って

サキ

私、ママともマサトとも、何も話す気ないから

～5分後～

マサト

サキ、本当にごめん

マサト

マキさんに相談してるうちに、なんかどんどん好きになっちゃってて、

マサト

気づいた時には、もう引き返せなくなっててさ

サキ

ママも、マサトも、すごい謝ってくるけど、

サキ

2人とも別れる、とは言わないんだね

マサト

考えたよ、でも、俺サキのことも好きなんだよ

マサト

子供も欲しいし、マキさんはもう子供埋める年齢ではないと思うから、

マサト

子供はサキと作っていければいいな、って思ってる

サキ

は？私を道具みたいに使ってるみたいじゃん！ママとはどうするの？

マサト

マキさんとは、同じ家に住んで、体の関係を持たないカップルとして付き合っていこう、って...

サキ

そんな馬鹿な話、本気で考えてるの！？

サキ

いいわけないでしょ！

サキ

私、マサトともママとも...2人と縁切るから！

サキ

だから、もうこれ以上私に話してこないで！

マサト

あっ！待って！

サキ

もう、今から家に帰ってマサトと住んでるマンション、出て行くから！

~3日後～

マサト

サキ！一生のお願いがあるんだ！

サキ

は？何？

マサト

あのさ、実はマキさんが株を買ってた会社の不正がばれて、

マサト

会社が倒産を発表して、株価が大暴落したんだ

マサト

それで、500万円の借金ができちゃって...

マサト

サキ、貸してくれないか？

マサト

マキさんもアパート暮らしだし、家売るなんてこともできないし...

サキ

100万近くは、自分の貯金にあるけど

マサト

本当か！？それだけでも、助かるよ！

サキ

でも、それは私の元ママのマキさんへの、旅行のプレゼントをしたくてためておいたんだよね

マサト

え...？貯金、ってそのためだったのか...？

サキ

そうだよ

サキ

でも、もうその必要、ないよね

サキ

私にはもう、ママなんていないから

サキ

マキさんとも、もう連絡とってないし...

マサト

ほんと、これでサキに頼るのは最後にするよ！だから頼むよ！

マサト

マキが金貸してくれれば、マキも俺らと一緒のアパートに住めばいいから

サキ

私がいつそんなこと頼んだ？別に、住むところには困ってないんだけど？

マサト

え？家出て行く、って言ったから...てっきり困っているのかと...

サキ

私が貯めていた貯金の使い方は、私がどう使うか決めるから

サキ

この際、ずっと憧れてた沖縄での島生活を楽しむの

マサト

え？沖縄...？

サキ

高校の頃の友達が、沖縄に住んでて、

サキ

私が仕事と家見つけるまで、その子の家に泊まることにしたの

サキ

もう、今空港にいて、あと数時間後には出発するから

マサト

ちょっと待ってくれよ...！急すぎないか！？

サキ

私が貯めていた100万円、誰かのために使う必要なくなったし

サキ

私が使いたいように使うから、誰にも選択権はない

サキ

じゃあね

～後日談～

サキ

その後、親戚を伝ってマサトとママは2人で知り合いに土下座をして、

サキ

500万円をかき集めたと聞きました

サキ

親戚には理由を話すと、勘当されて追い返され、1円も貸してもらえなかったそうです

サキ

一方で、私は沖縄で診療所の受付の仕事をしながら、

サキ

のんびりとした生活を送っています

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結城　真矢

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