テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
放課後の校舎は
昼とは別の顔をしている
窓の外で揺れる花壇の花は、
夕焼けの色を吸い込んで、
どこか息苦しそうだった
その廊下の奥に――
「宇佐美翔平」が立っていた
前と変わらないはずの制服
変わらないはずの制服
なのに、なぜか
目を合わせてはいけない気がした
宇佐美
低い声
優しかったはずの音が
どこか擦れている
彼は笑えない
正確には
「笑えなくなった」みたいだった
宇佐美翔平は以前は
”ちゃんとしている人だった”
誰にも丁寧で
距離感を守って
感情を乱さない
だからこそ、気づかなかった。
彼の中で、
何かが、
「静かに腐っていた」ことに
宇佐美
凛太郎
宇佐美
突然彼が口を開く
宇佐美
宇佐美
凛太郎
花壇を見る目は冷たい
愛でるでもなく
憎むでもなく
ただ「知っている」という目
宇佐美
宇佐美
その言葉が胸に引っかかる
それは花の話じゃない
彼自身の話だ。
最近の宇佐美は噂になっていた
・授業中にぼんやりと空を見る。 ・誰とも必要以上に話さない。 ・笑わない。 ・でも、妙に「優しすぎる」
まるで、自分を削ってでも
周囲を守ろうとするみたいに
宇佐美
彼はゆっくり振り返る
宇佐美
影が、彼の足元で歪む
夕焼けの赤が、
血の色みたいに見えて
思わず息を止めた
宇佐美
宇佐美
その瞬間、初めて彼が笑った。
それは救いの無い笑顔だった
宇佐美
宇佐美はそう言って、校舎の奥――
立ち入り禁止のはずの階段へ向かう
宇佐美
宇佐美
振り返らない背中
呼び止めたいのに声が出ない
彼の周囲だけ、空気が重い
まるで
「世界から切り離されかけている」
みたいだった
宇佐美
最後に彼がぽつりと言う
宇佐美
宇佐美
答えを待たず
彼は闇の中へ消えてった
花壇の花はまた咲いている
凛と、綺麗に
――でも。
その凛さは、本当に生きている証なのだろうか