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駅前のカフェの窓際。
利部友香理は、ぼんやり外を眺めていた。
通りを吹き抜ける風が、少し冷たく感じる。
カップの中のカフェラテはもう冷めていて、泡の跡だけが残っていた。
──あの人と、最後に会うたんも、この季節やったな。
そんなことを考えてしまう自分に、思わず小さく苦笑いする。
別れてもう三か月。そろそろ前を向かなあかんって、頭ではわかってる。
せやけど、心はまだ、惣一の影を追いかけてる。
利部友香理
ため息をついたその瞬間。
ドアのベルが鳴って、カフェに秋の風がふわりと入り込んだ。
視線を上げた友香理は、思わず息を呑む。
そこに立っていたのは──西家惣一。
白いシャツにグレーのジャケット。少し伸びた髪が風に揺れて、
あの日と同じ笑顔で、店員に軽く会釈をしていた。
心臓が、痛いほど鳴る。
もう、何を話したらええんかわからへん。
目をそらそうとしたけど、遅かった。惣一の目が、まっすぐにこちらを捉えた。
西家惣一
その声を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
懐かしさと痛みが一緒に溶けて、言葉にならへん。
彼は変わってへん。
優しい声も、目の奥の寂しさも、あの頃のままや。
利部友香理
それだけ言うのが精一杯やった。
その頃、カウンターの奥では、
バリスタの制服を着た野々木果純が、ふたりの様子をこっそり見ていた。
野々木果純
野々木果純
驚きのあまり、カップを持つ手が震える。
そして、思わず口元を押さえて──
野々木果純