ピピピピピ……
聞き慣れたアラームの音
まだ冴えない脳と 覚めない目
手探りでアラームの音を消した
ザー……
窓を打つ雨粒の音
外は雨が降っているらしい
カーテンを開けながら
そんなことを思った
コンコン
パカッ
リビングのキッチンで
卵をボウルに入れた
サー…
砂糖を入れて、かき混ぜる
こうして朝食を作るのは
少しずつ板に付いてきたと感じる
なれない頃は 何度も砂糖をこぼして
床が粉っぽくなったっけ
懐かしい、あの日からの記憶
朝食を終えて
着替えて
身支度をして
私は今日も、仕事に向かう
髪がハネてないかとか
気になるけどまぁ良いか
降っていた雨もやんだらしく
蝉の大合唱が聞こえてきた
まだ湿気のある匂いに つられるように
私はドアノブを回した
傘立てに立ててある
白杖を持って
そう、これは
視覚を失った話