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東京から貰った本
まっさらで、ノートみたいなもんだった
これから、日記でも書こうかなと思う
もし、うちが駄目になったら
鹿児島か高知か東京か
または別の誰かが
この日記を見てくれたら
きっとわかってくれる
9/22
初めての会議
東京の家は広くてびっくりした。流石都会
正直、固くて怖い人に見えたけど、会議で見せたあの顔は心配になった
高知が言っていた“美々津”って人、ちょっと会ってみたい
明日は弘前県に行く
遠いし、緊張もするけど、きっとなんとかなる
9/23
鹿児島
奈良
鹿児島
べしっ
奈良
奈良
鹿児島
奈良
奈良
鹿児島
目が覚めると
鹿児島が布団を引っ剥がしてきた
もう少し寝かせてくれてもいいやん…
とは思ったが
目に入った日記で、そういうわけにもいかないと思い知らされた
奈良
鹿児島
なんだろう
堺と同じことをされたんだけど
どこかと寂しく感じた
鹿児島
奈良
奈良
鹿児島
奈良
鹿児島
鹿児島
奈良
そういえば、遠いな〜とだけで
はっきりとは見ていなかった
奈良
“弘前県”
奈良
奈良
鹿児島
奈良
鹿児島
名前、だけだ
名前だけなんだ
最初に弘前にしたのが間違いだった
高知
奈良
先日の部屋に行くと
もう既に、高知と東京が居座っていた
床には地図が広げられていて
弘前県にピンが刺されてあった
向かうための道も書いてあってわかりやすい
東京
鹿児島
鹿児島
高知
東京からならまだ近かった
それでも遠いけど
鹿児島から行く、なんてしたらとんでもない
奈良
奈良
鹿児島
高知
東京
東京が、後ろの毛布を畳んでいた
この部屋で寝ていたのだろうか
片付けながら、こちらを真剣な目で見つめていた
東京
東京
奈良
その目は鋭くて
目の奥まで刺してくるような
東京
東京
…うちにはよくわからなかった
「人によって違う」
そんな考えは、許されるのだろうか
東京
高知
鹿児島
奈良
奈良
東京のあの言葉が
まだ、残っていた
気になって、どうしようもない
考えたって仕方がないことはわかる
けど、それこそ考えてしまう
うちの、昔からの
ずっとある、いらない癖
高知
奈良
鹿児島
鹿児島
奈良
東京
東京
奈良
奈良
東京の、笑った顔
初めて見た
生き物らしい顔だった
仙台
仙台
一関
一関
平
弘前
いつも通り
仙兄の話に笑い合う皆
僕もいつも通り
その話にはいることはできなかった
不思議だよね、兄弟なのに
でも、話にはいれないのは僕だけじゃない
若松
二本松
二本松
若松
…………
あっちはあっちで話せてるようだ
やっぱり、浮くのは僕と
盛岡
あいつだけだ
盛岡、僕は好きじゃない
なんだか、近づきたくなかった
何故かはわからないが…
その顔を見る度、少しばかり恐怖を感じる
それが何故かもわからない
なにもわからない
けど、苦手なんだ
僕への対応からして、あいつも同じだろう
盛岡は僕にとっての兄だったが、兄さんなんて呼んだことがない
盛岡
盛岡
弘前
弘前
盛岡
盛岡
弘前
盛岡
急に立ち上がる
いつもそうだ
弘前
盛岡
盛岡
弘前
机からキセルを取り出して
そのまま、外へ出て行った
扉は明けっ放しだった
兄弟なんて、人数が多いだけ無駄だ
それを今実感している気がする
……けど
これ以上は、なにも変わらないでほしい
そんな、塵のような願いさえ
世界は許してくれない
盛岡
いつからだろう
よく、「弘前」と呼んでしまう
確認がしたかったんだ
反応するのか
あいつは、ちょっと前までは弘前じゃなかった
もっと、別の名前があった
わがままなんて、言うにも引けるけど
前のほうが、よかった
前の名前がよかった
だから、反応しないでほしかった
「弘前」って呼んでも
あいつはきっと俺が嫌いだ
だから、無視されるかと思った
嘘でもいいから、「弘前」には、答えないでほしかった
かと言って、弟にお願いなんてできるはずもなく
ただただ俺が勝手に辛くなるだけだった
盛岡
弘前の顔にできた、傷
顔半分が、皮が、ベリッと剥がれてしまっていた
別に、痛々しいからとか、そんなのではなかった
けど、見るにはどうも気が引けた
平
平
一関
一関
仙台
仙台
何故か?
そんなのわかるはずがない
でも、よく聞くだろう
兄弟は、みんな仲良しで
お互いが大好きで
信頼しあっていて
お互いをよく知っている
そんなわけ、あるはずないだろう
ステレオタイプ、というやつか
考えてみれば、そんなものばっかりじゃないか
今こうして話せていることすら難しいというのに
仙台
仙台
平
一関
一関
その通りだ
別に、兄弟なんて関係ない
好きな人と話して、嫌いなやつからは離れればいい
それができる世の中だったら、どれほどよかったのか
盛岡以外は、みんな部屋にいた
この会話も、全部聞かれている
部屋は、急に静かになった
二本松
二本松
二本松
二本松
沈黙を破ったのは二本松だった
少しだけ優しい声で
いつも通りの表情で
若松
二本松
二本松
若松
若松は苦い顔をした
なんとも言えない、噛み締めたような
若松は、二本松に体を向けた
少しだけ近づいて
少しだけ笑った
安心したような、落ち着いたような
不思議な笑顔だった
弘前
「兄弟だからって仲良くする必要はない」
確かに、そうかもしれない
けど、盛岡とは
盛岡と僕の間には
深い亀裂が入っていて
割れて
離れて
溝は、深く
どんどん深くなって
僕は、それを埋めたかった
離れたい気はしなかった
もし、手を伸ばして、届くのなら
僕は今でもそっちに行きたい
綺麗に拭かれた机は、窓からの微小の光を反射した
中途半端に綺麗なものが、どうしようもなく尊くて
気持ち悪くて
すぐになくなる
弘前
二度と会いたくないけど
一番好きだよ
盛岡
これが
僕が弘前としてみんなと一緒にいた
最後の記憶
コメント
6件
うぁ…なんか…つら… 最後の1行で泣きました…
コメント失礼します あぁあぁもうほんっとうにもうあの心臓がすっごい優しくキュって締められました本当にこの辺りの時代大好き人間を本当に刺しに来てて本当にありがとうございます(号泣) 弘前......そうよなぁ...そうよなぁっ...😭😭 もうここの話してるメンバーがっ...酒田っっ......出てきて嬉しいのと悲しいのと寂しい(?)のが...😭😭 今もう視界がぐしゃぐしゃなので誤字ってたらすみません長文失礼しました...
べりっと…痛々しいですわ…