輝夏寂々。〖完結〗

珍しく早く起きれたため

チーノが起きてるか確かめるために

チーノに電話をかけた。

いつもなら数回のコールの後

すぐに応えてくれるのにだ。

送られていたLINEと文章を読むと

「　ごめん　」の3文字だけが送られていた。

チーノから折り返しの電話を待つことにした。

その待ち時間はもちろん寝るとする。

ﾋﾟｯ…ﾋﾟｯ…

ﾋﾟｯ…ﾋﾟｯ

なんや……、ここ…

夢よな……、？

夢で見た景色

ぼんやりとしか見えなかったけど

真っ白な天井と、隣に2人か3人。

チーノから連絡が来てないか確かめるために

スマホを手に取ると、もう正午を回っていた。

ﾋﾟｰﾝﾎﾟｰﾝ

チーノを後ろに乗せて、バイクを走らせながら

俺は秋の風を感じていた。

頬を優しく撫でる様な風。

チーノのヘルメットを座面に乗せて

チーノが踏切へゆっくり歩くのを数秒見てから

チーノの後をゆっくりと着いて行った。

得体の知れない恐怖に駆られながら

チーノに踏切から出るように促した。

電車が近づき踏切が降りて

警告音がうるさく鳴り始めた。

ファンファン

チーノは振り向いて

泣きながら辛そうに笑いかけた。

そう叫んだ。

でも、

もう届かなかった。

右から勢いよく走り抜けようとする電車で

チーノの姿は見えなくなった。

空を切りながら走る電車は

頬を撫でるような風ではなく

頬を切りつける様な痛々しい風だった。

最後に撮ったチーノの写真

それを確かめるにフォトアプリを開いて

カメラのフォルダを開いた。

やっぱり、写っていない。

カメラでチーノの姿を捉えても

画面内には映らなかった。

反射的に写真を撮ったが

やはり、写っていない。

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