マサト
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
『めっちゃ前からやってるんだね』
って
シオリ
シオリ
軽く途切れた 君とのやり取りを
『どうやって、また繋ぎ直そう』
そんなことばかり考えていて
私の生活が
少し停滞する
既読がどうとか
最適な 返信のスピードだとか
話し掛ける タイミングだとか
そんな心理戦ばかり
んー…
なにか
なにか…違うような
恋愛ってもっと
明るくて、高鳴って、楽しくて
そんな感じじゃなかったっけ
…
そうやって
だんだんと
私の中の
純粋だった〝想い〟が
〝猛毒〟に
変わっていった
君を好きになった タイミングが
思えばよく分からない
まぁそもそも
〝そんな決まったタイミング〟 だなんて
きっとないんだろうな
和紙に落ちた墨汁の様に
ゆっくりと、じわじわと
うん、そんな感覚
毎日、毎朝、毎夕、
君と廊下ですれ違う
挨拶はもちろん 交わすのだけれど
どこか作り笑いで
ぎこちなくて
合わせる視線もなんとなく
君を外れて宙を見る
放課後には
君がグラウンドで
バットを振るっている
大きな掛け声と
舞う土埃
陽射しで光る汗の筋
〝頑張ってるなぁ〟
〝かっこいいなぁ〟
なんて
直接伝えればいいのに
私はそれを
2階の教室の
なびくカーテンの隙間から
ただただ無言で 約20秒間
見ているだけ
それでも
少し嬉しいような
何故だか
少し胸が痛むような
そんな言葉にならない想いを
静かに
心の中で
『あああー!!』って
ヘンに声を上げてみたりするのだ
まぁ
そういう事なんでしょうか
いわゆる 〝恋〟をしてる
毎日メールで やり取りしてるけど
付き合ってすらいない
〝惰性〟なんだ
進展があるようで
まるでない
ズルズルと
繋がりが切れないように
必死にその手を引いているだけ
シオリ
シオリ
先生
先生
先生
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
先生
先生
シオリ
シオリ
先生
先生がケラケラと笑いながら
白チョークで黒板に 数式を書き足していく
筆圧が少し強かったようで
チョークの先端が
2.3度ボロボロと 粉を上げながら折れていった
ユカ
ユカ
ユカ
放課後の音楽室
ユカが フルートの音合わせをしながら
息継ぎの合間を縫って 私にそう問い掛けた
らしい
シオリ
ユカ
ユカ
ユカ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
シオリ
ユカ
シオリ
シオリ
シオリ
ユカ
ユカ
ユカ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
〝恋は病〟って
本当だった
シオリ
シオリ
部活が終わって
家に着いたのは19時過ぎ
スマホを枕元にほおり投げると 着替えもせずに、
制服のままベッドに寝転んだ
シオリ
シオリ
シオリ
これからお風呂に入って ご飯を食べて
課題をやって、メールを見て
ぐるぐるぐるぐる
シオリ
〝ピロンッ〟
シオリ
シオリ
シオリ
メッセージを知らせに光った スマホの画面が
また静かに消えていった
シオリ
シオリ
シオリ
お母さん
お母さん
シオリ
ジャァァァ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
キュッ…
シオリ
シオリ
お母さん
お母さん
〝ピロンッ〟
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
止まらぬニヤケ顔を
枕にボスッと押し付けた
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
マサト
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
窓際の席に座っていると
半端に開いた窓から チラチラと弱い風が入ってきて
カーテンが波打つように たゆたうと
そのカーテンの形に合わせて
眩しい光も一緒に入ってくる
その光を反射させる 机をただ眺めて
どれくらいの時間が経ったのか
バクバクとした心臓を 気にしていたせいで
そんな事を気に留める余裕もなかった
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
マサト
マサト
マサト
シオリ
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
今なら
〝死んでもいいなぁ…〟
マサト
マサト
マサト
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
シオリ
マサト
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
雨が傘の上で弾けて
ぱらぱらと 綺麗な音を響かせる
マサト
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
お互い相手の傘に 当たらないよう気遣って
二人の間が少し空く
距離が保てて安堵する 気持ちもあったけど
どうせなら、こんなことなら、
傘持ってるとか言わなきゃ良かった
なんて思う私もいた
マサト
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
シオリ
マサト
マサト
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
〝好きだから〟の言葉は
雨の音でかき消された
シオリ
ユカ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
シオリ
ユカ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
先生
先生
ユカ
シオリ
先生
シオリ
先生
先生
ダダダダダ…
ジャン!!
先生
先生
先生
『はいっ!!』
先生
シオリ
先生
先生
シオリ
シオリ
お母さん
お母さん
シオリ
お母さん
お母さん
シオリ
シオリ
お母さん
お母さん
お母さん
シオリ
お母さん
お母さん
シオリ
お母さん
シオリ
お母さん
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
カキンッ!!!
大きく上がったボールが
グラウンドの端にまで届くと
そのままグリーンのネットに かかって落ちていった
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
〝その時〟が
すぐそこまで来ていた
シオリ
シオリ
マサト
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
マサト
シオリ
シオリ
マサト
マサト
マサト
シオリ
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
シオリ
シオリ
マサト
シオリ
アイハラは俺から目線を逸らすと
シャーペンを握ったまま
両手の指を祈るように絡めた
マサト
マサト
マサト
シオリ
シオリ
シオリ
この時
俺は何故か
次に続く言葉を聞いてしまったら
シオリ
もう元に戻れないような
シオリ
この関係が終わってしまうような
シオリ
シオリ
そんな気がしたんだ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
アイハラは荷物を ガサガサと雑にまとめると
鞄にそのまま突っ込んで 教室から走り去ってしまった
マサト
分かってた分かってた分かってた
分かってたんだ
友達止まりってことも
恋人なんかになれないことも
そういう風に見られてないことも
分かってたんだ
だけどどうして
どうして…
こんな
こんなに
溢れてくるんだよ…!!
«翌日の放課後»
先生
先生
先生
追い討ちを掛けられるように
部活でも散々だった
演奏中、硬直してしまって
鍵盤に指が届かない
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
シオリ
シオリ
屋上へ続く、重い鉄扉を開ける
扉の隙間からは
雨音とその匂い
誰かさんの心の中みたいに
土砂降りだった
風邪を引くって 分かり切っているのに
そのまま雨の中へと 突っ込んでいくと
仰向けに寝転んだ
雑音で気持ちを 消してしまいたいような
そんな気分だったから
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
シオリ
こんな屋上で
失恋したからって雨に打たれて
ダダ泣きしてるなんて
本当に馬鹿だ
ユカ
シオリ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
ユカ
シオリ
シオリ
ユカ
シオリ
ユカ
シオリ
シオリ
シオリ
ユカ
ユカ
ユカ
ユカ
シオリ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
ユカ
ユカ
ユカ
シオリ
ユカ
ユカ
シオリ
シオリ
シオリ
ユカ
シオリ
シオリ
ユカ
ユカ
ユカ
ブルーに身を当てても
今のこの感情も、想いも、
きっと、
きっと、
通り雨だから
コメント
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泣いちゃいました
凄く感動しました… 青春を物凄く感じました…
小説家ですか?