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裏に居る。

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裏に居る。

1 - 裏に居る。

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2022年08月11日

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今日も空は赤かった

それはここへ来てから 1度も変わりない

夜が深(ふ)ける毎に影が濃くなって、

木々や建物の輪郭が 其処は彼となくなるだけだった

日課の昼の散歩では

殺風景な田んぼの畦道を歩いた

遠い何処かで 声の低い蜩(ひぐらし)が

死にたげな、 か細い呻きをあげているのが分かる

ふと脇を見て

点々とある小山の暗い森から 頭無く覗く彼等には、

いつもの様に手招きをされたが、 微塵も興味はないし

それしか出来ない奴らが とても滑稽だった

本当

文字通りに〝のう〟がない

踏切の奥に

一際目立つ筈の 背の高い黒髪の女が立っていた

黒目は瞼の裏へ転がって

青紫の唇が 小刻みにぱくぱくと動作する

この人はいつも何かを 無くしていて

周りに騒ぎ立てながら 欲してばかりで阿呆らしい

然し

一度立ち止まって

目を凝らさなければ 分からぬ程に

その存在の薄さが鼻につく

そんなに 消えてしまいたいのなら

さっさと〝そう〟すればいいのに

なんて

周りを散々馬鹿にしていても

対して私も変わらないのだろうか

招いて、殺して、意味もなく

ただただ

『生きていて良かった』と

そう思える一瞬を探している事に 気が付いてしまえば

きっと正気ではいられない

女と通りすがりの風からか、

私の靡(なび)いた髪からか、

とても洗い落とせぬ程 勁烈な

そんな錆びた血の匂いがした

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