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今日俺は

もう死んだんだ。

死んだ時の記憶も、その前の記憶もない。

名前だって忘れた。

亡霊

…………。

ガタンゴトン…ガタンゴトン

おばあさん

あら、こんな若いのに亡くなったの?

亡霊

交通事故で…。

おばあさん

しかも亡霊になっちゃうなんて。

亡霊

この列車はなんなんですか?

亡霊

気がついたら乗っていたんです

おばあさん

ここは自分の過去を知るための列車。

おばあさん

「亡霊列車」って言うのよ

おばあさん

亡霊は自分の事や深く関わった人のことを思い出さないと

おばあさん

成仏できないのよ

亡霊

へぇ…。でも何も覚えてないし……。

おばあさん

じゃあまずは家族の事から思い出しなさいな

亡霊

家族?

おばあさん

大切に育ててくれた「お母さん」

「いつまで寝てるの!?早く起きなさい!」

亡霊

ビクッ

亡霊

………??

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

列車運転手

まもなく「怪売横町前」

亡霊

ヨウバイ……?

おばあさん

あ–––。この駅は降りちゃいかんわ

亡霊

そうなんですか?

おばあさん

降りたら最後、妖怪に喰われるか

おばあさん

転生前に妖怪になっちまうかもしれない

亡霊

え……っ

列車運転手

ドアが閉まります。お手を挟まぬようご注意ください

亡霊

何もわからない…。

おばあさん

じゃあ「お父さん」

「大丈夫だよ、練習すればできるようになる」

亡霊

ビクッ……

亡霊

なんかモヤモヤする……

列車運転手

まもなく「桜木休憩所」

おばあさん

あら、私はここで降りなくちゃ

亡霊

……過去は思い出せたのですか?

おばあさん

私はねぇ、

おばあさん

晶子っていって

おばあさん

愛する夫は松夫っていうのよ

おばあさん

とても幸せだったわ

亡霊

……では

ガタンッ

男性

……!

するとおばあさんと入れ替わるように

スーツを着て杖を持った男性が入ってきた。

男性

こんにちは。まだ乗っているのかい?

亡霊

え、駅から列車に乗る時もあるんですか?

男性

あぁ、私は亡霊じゃなくて

男性

成仏をお手伝いくる助っ人だよ

亡霊

助っ人……?

列車運転手

まもなく列車が発車します。

列車運転手

この先揺れますのでご注意ください。

男性

ああ、ここから先の駅は平和だから安心してね

男性

ただ、岩がゴツゴツしてるからよく揺れるんだ

ガタンゴトン……ガタンゴトン…

亡霊

でも俺何も覚えてないです

亡霊

思い出しようもない

男性

……家族

男性

家族の声が聞こえなかったかい?

亡霊

声………

「まだ寝る〜?ママに頼らないの!学校遅刻するでしょ!?」

「逆上がりはコツを掴めばできる。父さんと特訓するぞ!」

亡霊

母さん……

亡霊

父さん…………。

男性

そうそういい調子

男性

この列車で、最終的に自分の名前を思い出せば成仏できるんだ

亡霊

でも名前なんて特に覚えてないですよ!

男性

じゃあ次、どうやって亡くなったか思い出そう?

亡霊

どうやって……俺が死んだのか…?

男性

はい鏡。

男性

自分の顔を見れたかい?

亡霊

いえ…写っていません

男性

うん。亡霊は自分の顔を見ることができない。

男性

だから自分を見返すのが難しい。

男性

だけど大丈夫

亡霊

え?何が大丈夫なんです

男性

大丈夫大丈夫

男性

安心していいよ

男性

落ち着いて考えないと、これこそ本当の命取りだ

亡霊

落ち着いて……

「あなたの名前の由来はね」

「太陽に向かって遥か未来ずっと幸せに生きられるようにって意味なのよ」

亡霊

太陽に向かって遥か未来ずっと幸せに……

男性

いい名前みたいだね

男性

きっと由来から考えれば名前も思いつくよ

亡霊

あとは……

「わんっ!わんっ!」

亡霊

亡霊

カナ!!!

男性

……カナ?

亡霊

え…無意識に口に出てました……。

男性

無意識…?そうか……

列車運転手

まもなく「ひまわり草原公園」

列車運転手

お降りの方は左側のドア前でお待ちください。

亡霊

ひまわり……

男性

うん

男性

君にはひまわりに思い出があるみたいだね

亡霊

ひま……わり…

ポロっ

亡霊

あれ……?なんで涙が…

男性

君はきっと

男性

ひまわりと何か関係がある人を亡くしたんじゃないかな

亡霊

亡くした…人

「見てみて!私ね、ひまわりが大好きなの!」

「大きいお花が綺麗でしょ?」

亡霊

あぁ、聞き覚えのある可愛い声だ

男性

女の子だね。友達か何かかな?

亡霊

いや…幼馴染

亡霊

同じ病院で生まれて、ずっと一緒の幼馴染の…………

亡霊

名前は……

男性

大丈夫。名前は思い出すのは難しいからね。

男性

でもそこまで思い出せるのもすごいさ

亡霊

あ、ドア開いた

男性

凄くいい匂いだね

亡霊

嗅いだことがある凄く意味のある匂い

「ごめんね。私は先に死ぬけど」

亡霊

精一杯幸せに生きてほしいって……

女の子の亡霊

助っ人のおじさん、あたし何もわからないの

男性

どうしたんだい?

女の子の亡霊

あたしママのことしか覚えてなくて

女の子の亡霊

自分の名前わかんないから成仏できないの

男性

そうかそうか。じゃあゆっくり思い出してみよう

そうか。俺以外にももっと幼い子も

亡くなってこの列車でさまよっているんだ。

亡霊

俺だけじゃない……

「遥陽」

亡霊

ハル…ヒ

列車運転手

まもなく終点「真実町前」でございます

列車運転手

お降りの方は右手の扉の前でお待ちください。

亡霊

真実町前

亡霊

真実………

亡霊

俺は、

亡霊

俺は

列車運転手

ドアが開きます

列車を降りてふと上を見上げると

1つの一軒家があった。

母親

おかえり遥陽。今日の夜はオムライスよ?

カナ

わんっ!わん

亡霊

カナ……?

父親

おお遥陽。おかえり

父親

明日は土曜だからみんなで出かけるか?

亡霊

……………

いつもの部屋

いつもの時間

いつもの声

いつもの匂い

ここが

亡霊

ここが俺の家

亡霊

俺は西川遥陽

亡霊

西川遥陽だ––––––

そう口にすると、ふと目の前が真っ白になって

気がつく頃には、いつのまにか笑顔になって居た。

これからきっと俺は

新しい人生を歩んで行く

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