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口から吐いた煙草の煙が空気に溶け込むのを眺めてから、俺は周りをもう一度見渡した。
一面の雪景色が遠くまで広がっている。心做しか少し肌寒いような気もする。 雪のように見える無数の原稿用紙が地面の色を分からなくしてしまった。全ての原稿用紙に何も書かれていない。僅かに体を動かすと、紙がクシャッと音を立てた。
遠くの風景には文字が浮かんでいる。墨で書いたように「言葉」「家」「文字」「思考」「風」「木」「小説」「人」というような文字が見えたかと思えば揺らめいて消えた。 地面はところどころ墨で汚れている。
何の変哲もない万年筆が、風に乗って俺の足元へ転がってきて、靴に当たる寸前で動きが止まった。が、あいにく今日は無風だ。
紙の街。ここは紙の街と呼ばれている。 名の通り、ほとんど紙で形成されているから紙の街だ。元々どんな姿をしていたのか、どうしてこんな状態なのか、は一切不明だ。
人の気配が一切しない不気味な場所だ。そして、実際に誰一人としてこの街に存在しない。 人里離れているのもあってか、紙の街に訪れようとする奴はいない。当たり前だ。こんな場所で死にたい奴なんてそうそういないだろうから。
こと-koto
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紙の街に関するいい噂は存在しない。 やれ「神隠しにあう」だの、「街に魅了されて帰って来れなくなる」だの、「1度でも足を踏み入れたら出られなくなる」だの、そんな噂は腐るほどにある。
世間はそれまでして紙の街に触れてほしくないらしい。実際に訪れるものがいないようにしたいらしい。この街の存在を隠したいらしい。 とはいえ、危険ではないと決まったわけではない。噂が出回っている以上、ここで消息不明となったら死んだものとされるだろう。
何、俺はそこまで死に急いでいるわけじゃない。
手に収まるくらいの紙切れを見て、少し安心する。子供のおつかいと同じだ。 俺は情報を持って帰ればいい。それがあの人からの命令なのだから。
しばらく歩くと、神社に続く道があった。原稿用紙が比較的少ない。周りにはいくつかの石が積まれている。
津雲
オンボロな鳥居が俺を見下している。色は枯れてしまっているのに、威勢だけはまだ残っているみたいだ。
津雲
足音も出さずに突然背後から現れた子供は、そのまま喋り続ける。見た目こそ人間の子供だが、得体の知れない化け物のようにしか思えない。
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
相手は人間に見える。魔力からしてどう見ても人間だ。 だが、違和感しかない。そもそも、人間だとしても魔力を貯めれる器のようなものがあるはずだ。それが一切ない。 まるで、魔法というものが最初から存在しない世界から来たみたいだ。
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲
多分、これ以上問いただしたとしても有益な情報は手に入らないだろう。次の機会にまともな人間(そもそもいるのか?)でも探すとでもしよう。
津雲
津雲
津雲
津雲
津雲