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この世界から雨が消えた。
空から水が降ってくる事を信じる人も少なくなった
そんな世界で私のパパは傘屋さんを営んでいる
晴美
パパ
晴美
パパ
私の一番古い記憶はお父さんとのこの会話だった
そんなお父さんが作る傘が大好きで、私は雨の無い世界で毎日、傘を差して学校に通っていた
5才の誕生日に両親は傘をプレゼントしてくれた。
晴美
その傘は、いままで見たこともないカラフルな色をしていた
晴美
ママ
晴美
晴美
そう言うと、お母さんは笑いながら
ママ
晴美
ママ
晴美
ママ
晴美
パパ
仕事場からお父さんの笑い声が聞こえてきた
晴美
仕事場にいるお父さんからは返事はなく、金具を叩く音が家に響いていた。
その音は、すごく楽しそうな音だった
同級生A
バシャーーン
同級生B
同級生A
同級生B
同級生A
雨の無い世界で傘を差して、雨を信じていた私は学校でいじめられるようになった
晴美
教室に戻ると、誕生日に貰った傘がバキバキ折られていた
私は必死になって折られた傘をセロハンテープで直して持って帰った
そんな日々が数ヶ月も続いた
そのストレスの矛先を私は両親に向けてしまった
晴美
ママ
パパ
晴美
晴美
晴美
晴美
そして、私は両親のまえで大切な傘をバキバキに折っていた
晴美
ママ
パパ
ママ
そして私は高校卒業と同時に上京した
上司
晴美
上司
上司
晴美
上司
晴美
泣いたら負けだ。 あの頃となにも変わらない 私は変わりたくて家を飛び出たんだ。
晴美
何かから逃げるためだけに、飛び出た そんな私が順調にいくわけがなかった
晴美
誰もいない部屋に響く
不在票がポストに入っていた
晴美
実家を出てから毎日 お母さんは連絡をくれている
ママ
晴美
ママ
ママ
晴美
ママ
晴美
ママ
再配達の電話をして料理をして待っていた
ピンポーン
晴美
思ってたより小さい段ボールが届いた
晴美
開けるとそこには手紙と、さらに小さい箱が入っていた
パパ
一緒に入っていた箱を開けるとそこにはキーホルダーくらいの傘が入っていた。
晴美
お父さんの不器用な優しさに、笑ってしまった
晴美
部下
晴美
部下
上司
晴美
上司
上京して3年がたった かわいい後輩もできて、仕事も慣れてきた
晴美
鞄につけている涙傘を握りしめた
同僚
部下
その日は数十年ぶりに雨が降ったのだ
上司
雨に慣れていない交通機関がマヒするかもという報道もあり、今日は早めの退勤になった。
仕事、仕事だった私は雨のことなんて気にせず、会社を出ていた
晴美
会社を出た私は目の前に現れた光景に自然と涙を流していた
街中がカラフルな水玉の傘で溢れていた。 私の大好きだった水玉の傘。
部下
そういうと部下も水玉の可愛い傘を差し出してきた。 見覚えのあるロゴ。
晴美
晴美
晴美
あの時、言ってた通り
晴美
私は傘を受けとると、あの頃のようにスキップしながらその水玉模様の街の中に飛び込んだ。
懐かしい景色
何年ぶりだろう、私は両親の住む町に帰ってきた
あの日以来、雨は降らなかった
晴美
ママ
晴美
そう叫ぶと、仕事場の方から楽しそうに金具を叩く音が聞こえてきた
雨の降った11月1日は「傘の日」になった
クリスマスやハロウィンのように、世界中で行われるイベントでみんなで傘を差して街をカラフルに染める
その傘はすべて私のお父さんの傘
自慢のお父さん
晴美