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グラウンドの空気は、少しだけ違っていた。
ボールの音。スパイクの擦れる音。 その中で、ひときわ目立つ存在。
紫苑
呼ぶと、一瞬だけ視線がこっちに向く。 でもすぐに逸らされた。
カイザー
短い一言。
それだけ。
紫苑
軽く返して、その場を離れる。
───前なら、もう少しだけ構ってくれたのに。
チームの人
隣から声。 振り向くと、最近よく見るチームの人。
紫苑
チームの人
チームの人
紫苑
適当に相槌を打つ。
チームの人
紫苑
チームの人
興味深そうに距離が詰まる。
最近増えたなこういうの。
チームの人
カイザー
一瞬で空気が変わる。 振り返るとそこにいる。
紫苑
名前を呼ぶと、僅かに眉が動く。
カイザー
紫苑
カイザー
興味無さそうな声。
でも視線は、その男から離れない。
チームの人
気まずそうに去っていく背中。
残るのは重たい沈黙。
紫苑
紫苑
軽く言うと、カイザーは鼻で笑った。
カイザー
紫苑
カイザー
そう言いながらぐっと腕を引かれる。
紫苑
カイザー
紫苑
カイザー
強引に引かれる腕。
振りほどこうとしてもびくともしない。
紫苑
カイザー
ぶっきらぼうな声。
なのにほんの少しだけ、掴む力が弱まる。
人気の少ない場所。
壁側に押し込まれる。 ※ 壁あると思ってください
紫苑
先に口を開くと、
カイザー
低く、押さえた声。
紫苑
言い終わる前に壁に手をつかれる。 逃げ場がない。
紫苑
カイザー
顔がぐっと近づく。 視線が絡む。
視線が絡む。
カイザー
紫苑
カイザー
一瞬、言葉に詰まる。
紫苑
カイザー
迷いもなく即答。
カイザー
紫苑
カイザー
小さく頷く。
それでも距離は離れない。
カイザー
ぼそっと落ちる声。
紫苑
カイザー
子供みたいな言い方。
紫苑
思わず漏れると、少しだけ眉が寄る。
カイザー
紫苑
カイザー
紫苑
言い返すと、沈黙が落ちる。
───昔から変わらない、この空気。
カイザー
ぽつりと、小さな声。
紫苑
顔を上げたその瞬間。
ぐっと引き寄せられる。
紫苑
触れる。
一瞬。
でも確かに唇が重なった。
息が止まるくらいの距離。
ほんの数秒のないはずなのに、やけに長く感じる。
紫苑
離れたときにはもう遅い。
カイザーは何事もなかったみたいに視線を逸らす。
カイザー
紫苑
カイザー
紫苑
カイザー
強めの声。 でもほんの少しだけ呼吸が乱れてる。
紫苑
それ以上言わない。
言えない。
するとカイザーは小さく舌打ちした。
カイザー
紫苑
カイザー
紫苑
同じやり取り。
でもさっきとは明らかに違う空気。
カイザー
ため息。
それから不意に頭に触れる手。
軽く、優しく。
カイザー
今度こそ何事もなかったみたいに離れる。
───ずるい。
キスしたくせに。
何事もなかったような顔して。
でも、
紫苑
小さく呟くと、
カイザー
少しだけ苛立った声が帰ってきた。
振り返らないまま。
その背中を見ながら、少しだけ笑う。
グラウンドに戻る足音。
世界は変わり始めているのに、
この距離だけは、まだ壊れていない気がした───。