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part4 また、普通の話をしよう
図書室からの帰り道、エレベーター前で彼女が立ち止まった。
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不意に言われて、少し戸惑った。 でも、すぐに「いいの?」と聞くと、えとさんは小さく頷いた。
病室のドアを開けると、そこにはえとさんの世界があった。 窓際には小さな観葉植物。ベッドの脇にはお気に入りらしいぬいぐるみがちょこんと置かれている。
彼女はベッドに腰かけて、こちらを見上げた。
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僕は言われるままに椅子に腰かけた。
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彼女はにこっと笑った。
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少し考えてから、僕は話し始めた。 昼休みに友だちと食べるお菓子の話。 授業中にノートがぐちゃぐちゃになること。 美術の時間、鉛筆の木炭が手について真っ黒になったこと。
どれも、なんてことのない、普通の話。
でも彼女は目を輝かせながら「へぇ~」「それで?」と笑ってくれる。 それが、なんだか嬉しかった
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その日、彼女の病室からの帰り道、僕の中で何かが少しずつ変わっていくのを感じた。 “あと一年”じゃなくて、“この1日”が大切だと思えた。
『消灯後の冒険』
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その夜、23時すぎ。 静まり返った廊下に、足音がゆっくり響いた。
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ふたりはエレベーターを避けて非常階段を下る。 点灯していない廊下は、窓からの月明かりが頼りだった。
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なおきりが案内したのは、少児科フロアの前。
壁に描かれたカラフルな動物たち、貼りだされた子供たちの絵。
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えとが壁のキリンをじっと見つめる。
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ふたりは、夜の病院の奥へとゆっくり歩いていく。 大人たちも看護師もしらない、ふたりだけの冒険。
照明の落ちた廊下の先に、いつもとは違う世界が広がっていた。
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