聞こえない

聞こえてるはずない

ただでさえ、聞こえない人に

凄い小さい声で呟いただけだ

ニヤニヤと俺の顔を

覗き込んでくるレトさん

レトさんは

彼特有の少年のような

どこか安心感を与えてくれる

そんな笑顔で微笑んだ

なら、俺と会話出来る？

流石にムズい？

約3秒で打ったそれを見せる

単純に疑問だ

俺がどんなに分かりやすくても

会話となれば別問題だ

自分に呆れているような

諦めているような声で

俺に現実を教えてくる

大丈夫、もう分かってるよ

静かに目を瞑って

どこかに思いを馳せているよう

滅多に俺のことを褒めない

目の前にいる天邪鬼からの言葉

ところで、うっしー達には

俺の口から説明する？

「本当の一番になってほしい」

どんだけ優しいんだよ…

1番実況撮るのが好きで

努力してるのはレトさんなのに

俺がTOPになりたくない

そーいうわけじゃなくて

俺1人でTOPになりたくない

ね、レトさん

急に顔の前に画面をだされる

近すぎたのか少し遠ざけて

なに？と聞いてきた

俺、いつまでも待ってるから

だから引退はしないで？

いくらでも休んでいいから

引退だけはしないで

この文を打ってから

もうレトさんと一緒に

実況撮れないのかなと思うと

自然と涙が零れた

とてて、と近づいてきて

俺の頭を撫でながら

優しい言葉を紡いでくれる

しばらく撫でられたまま

ぼーってしていた

俺がレトさんを支えなきゃ

逆に支えられてどーする

そう言ってまだ撫でてくれる

ナチュラルに、大の大人が

大人の男に頭を撫でられてる図

普通に気持ち悪い以外ない

レトさん、撫でんのやめて？

理由にならな理由を言ってから

さっと手をどかしてくれる

ｶﾞﾁｬ

多少引き気味のうっしーを見て

まだ撫でられたままじゃなくて

よかったと心底思う

ちらり、とレトさんを見る

レトさんもこっちを向いてから

軽く頷いてくれる

ふざける空気じゃない

と感じたのか、2人も座る

や、そんな丁寧に座んなくても

いいんだけど…(正座)

口に出してみると

ふつふつと実感が湧いてくる

撫でてもらってたお陰で

そこまでのダメージはなかった

肩をﾎﾟﾝﾎﾟﾝと叩いて聞く

何かを察知しレトさんが

こくりと頷く

あとはレトさんが説明できる？

さっきまでしてたように

スマホに打って見せる

またも頷いたレトさんは

大きく息を吸ってから声を出す

さも聞こえてるように話す

レトさんにうっしーが驚く

なるべく短く簡潔に

でも、最後に俺の安心する

言葉を添えてくれていた

これだけ話せるから

聞こえないというのも嘘じゃ？

と疑うほどだ

レトルトが続けるってだけで

俺らは安心よ

俺らもできることは手伝うから

2人もスマホを取り出して

メモ欄に文字を打つ

急なモノマネにみんな吹き出す

訳の分からなことを言い

笑い転げてるふたりに

正規のやつを教えてあげる

うっしーが笑いながらツッコむ

なんだ、普通にできるじゃん

うっしーの返しに

とドヤ顔で返す

身を乗り出しガッチさんが聞く

子供か

わを

流石人狼ゲームただけは得意

とされているレトルトさん

声に出してないのに睨まれた

結果的にTOP4メンバーなら

ほぼ成り立った

ま、俺とが1番成り立つけどね

( ･´ｰ･｀)ﾄﾞﾔｧ

ﾌﾞｫﾝ

なんだと思ったら

3人がハンカチやらを投げてた

聞こえてないの嘘のように

すごく綺麗にハモった

仲良すぎかこいつら