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よく晴れた天気の中、私はがむしゃらに走っていた
侍2
侍1
葛葉
腹からは生暖かい物がどくどくと流れ、止まることを知らない
葛葉
そう呟いた瞬間、喉奥から何か迫り上がってくるような感覚がした
葛葉
私はその場に座り込み、迫り上がってきた物を吐き出した
目眩がする、耳鳴りがうるさい
葛葉
再び立ち上がろうと壁に寄りかかるが、身体が言うことを聞かなかった
そのままなす術もなく、壁にもたれ掛かり、座り込んだ
幸い、追っ手も来ていないようだった
あぁ、眩しいな、
葛葉
私はそのまま、重い瞼をとじた
ガヤガヤとした薄暗い店内
客
とある客が私の肩をいやらしく触る
葛葉
客
客は私の肩を寄せ、そう囁く
怖い、でも、ちゃんとやらなきゃ、
葛葉
客
客は嬉しそうに笑い、私は苦笑いで客を見た
そう、ここはキャバクラと呼ばれる場所だ
客に酒を注ぎ、金が貰える代わりに客に一時の夢を見せる事が私達、キャバ嬢の仕事だ
客
葛葉
とは言っても、私はただの下っ端であり、オーナーに顔の良さを買われ、接客をしている
普通、下っ端は掃除や、客とのトラブル、レジ打ちなどを任されるのだが、
いきなり接客へと行った私が気に入らなかったのか、他のキャバ嬢からはあまり良い顔をされなかった
客
葛葉
去り行く客の背中を見届け、私は店へと入る
私が戻るや否や、他のキャバ嬢達が私を睨みつけた
葛葉
私はその場から逃げるように店の裏側へと歩いた
ロッカールームにて、着替えようとロッカーを開けると
葛葉
扉の内側には、大量に貼られた悪口の書かれた紙、着てきた服にはお酒が掛けられており、 ロッカーの中には泥やガラスが散りばめられていた
幸い、影に隠れていた財布は無事だったようだ
葛葉
ガラスを片付けようと、破片に触れれば、指から紅が流れ出た
いたい?かなしい?くやしい?ゆるせない?
葛葉
目から溢れでる雫に気づかないまま、私は財布を持ってそのままロッカールームを出た
ロッカールームから出ると、キャバ嬢達は楽しく談笑していた
葛葉
私がそう言い、出て行こうとすると、不意に呼び止められた
キャバ嬢1
葛葉
私が後ろを振り返った瞬間、
頭から冷たい何かが流れる
これは、お酒?
キャバ嬢1
葛葉
キャバ嬢1
キャバ嬢1
あっ!葛葉ちゃんのお家お金ないからそんな余裕もないか! とキャバ嬢はゲラゲラと笑いながら、席へと戻った
他のキャバ嬢達も、私を蔑み、汚物を見るような目で見つめながら、談笑を再開した
その後、この格好で電車に乗る訳にもいかず、私は歩いて何とか家へと辿り着いた
扉を開け、私の目の前には仁王立ちの父が立っていた
葛葉
父親
葛葉
ごめんなさい、と言おうとした瞬間、私の頬に拳が飛んできた
父親
父親
葛葉
幸枝、私の母の名前だ 私を産んだ後、そのまま命を落としてしまった
父は、産まれてきた私の事をひどく憎んでいた 当たり前だ、私が母を殺したようなものなのだから
父親
葛葉
父は狂ったように母の名を呼びながら、私の腹、胸、顔などを殴りつけた
父親
父親
葛葉
ガッ、ガッと鈍い音を子守唄に、 私は重い瞼を閉じた
葛葉
チュンチュンと、雀のさえずりに目を覚まし、重い瞼を開けた
父は、仕事へ向かったようだった
葛葉
そっと顔に触れれば、頬が膨れ上がっており、大きく腫れ上がっている事がわかる
葛葉
私は浴室へと向かった
葛葉
私は中学の時の制服に着替えた
中学のジャージは父に 「こんな派手なもの、幸枝は着ない」と捨てられてしまった
葛葉
「お前に出す金が勿体無い」という理由で、私は高校へ行かせてもらえなかった
私はベットの下から、とある少年漫画を取り出す
大分昔のものだが、大切に扱っている為、意外に綺麗なままだ
パラパラとページを捲ると、
葛葉
そう、私は「銀魂」という漫画にハマっていた
アニメもあるらしいが、見ようとした瞬間、父が 「幸枝はアニメなんか見なかった。」とリモコンを取り上げられてしまった
葛葉
私の最推しは「坂田銀時」、通称”銀さん” 初めてコンビニで漫画を立ち読みした時、 この銀魂に目が止まった
繰り返し読んでいくうちに、どんどん引き込まれて、 そのうち、銀さんを推す、というより、銀さんを憧れの対象として見ていた
葛葉
続きがどうしても気になる、
葛葉
幸い、財布にはお金が残っている それに、父もいない今がチャンスだろう
私は漫画を机の上に置き、財布を持ってそのまま家を出た
葛葉
私は漫画を抱えながら、上機嫌で帰路へと歩いた、が、
葛葉
家の方面から煙が出ていた
葛葉
でも、火なんて使った? いや、じゃあどうして、
葛葉
私は漫画を抱え、家へと駆け出した
家の前に着くと、煙は庭から出ているようだった
葛葉
私は家の前から見える人影に息を呑んだ
私は庭へと駆け出す
父親
葛葉
私は、焚き火に入れられている物に目を見開いた
それは、私の漫画だった
父親
パチパチと燃え上がる焚き火を、 私はただ見つめていた
父親
しょうがないなぁ、と私の手から漫画を奪い取ろうとする父の手に背を向けた
父親
葛葉
私はそう強く父に言ってみせた
これ以上、私の憧れの人を奪わないでっ、!
父親
さぁ、渡しなさいと私に手を差し出してくるが、 私は立ち上がり、父を精一杯睨みつけ
葛葉
漫画をぎゅっと抱え
葛葉
私に、明日をくれた物、 憧れの”人”を作ってくれた物だから
父親
葛葉
激昂した父は、私に向けて包丁を向かわしてきた
葛葉
私は逃げようと、家の前へと出ると
横から来る車に気づかず、急ブレーキ音が聞こえた方に目を向け
葛葉
誰か、愛してくれるかな
瞼を閉じた瞬間、私の意識は消えた
眩しい日の光に目を覚まし、
葛葉
私、死んだはずじゃ、
葛葉
漫画もない、
というか、ここどこ?
その時、
侍1
侍2
侍1
二人の侍のような人物達が私の所に来ると、一人の侍が私の口を手で塞いだ
葛葉
侍2
侍1
いや、いやだ、!
侍2
私は侍の手を噛むと、侍は刀を取り出し、私の腹を刺した
葛葉
侍1
侍2
はやく、逃げなきゃ、
侍2
侍1
私はその場から駆け出し、冒頭へと戻る
葛葉
私が意識を飛ばそうとした瞬間
坂田銀時
声が聞こえたのを合図に、ぷつりと意識が途絶えた