解呪後、久留間と渋谷は速やかにカタヅケ屋本舗へ帰還していた

除霊案件の顛末と、ごまかしと嘘を盛り込んだ解呪の顛末を説明すると

好々爺は疑問の表情を浮かべることもなくにこやかにそれを受け止める

それにわずかな後ろめたさを覚えながら、渋谷は深々と頭を下げた

労りの言葉に、思わず目元に熱が集まる。

このまま鼻をすすり上げそうな渋谷の薬指に、

見えない位置で久留間はそっと自分の指を絡ませた

間髪入れない即答に、思わず二人の声がシンクロする

それにほっほっと声を上げて笑い

本田は皺だらけの目をさらに細めた

その言葉に、一瞬沈黙が落ちる

理解しがたい様子で首を傾いだ二人に、しわがれた声はさらに笑った

思わずなにも言えないまま、久留間は素直に頷いた

渋谷と恋愛関係にあることが露見したかと冷や汗をかいたものの

本田の様子からどうやらそうではないらしいと判断したようだ

そのまま二人で揃って退室していく背中を見送り

隠れていたポストがひょっこりと姿を見せる

枯れた指先が、まるで犬か猫にでもするかのように

ポストの背表紙を撫でる

ふぅんと呟き、再度、二人が消えていった事務所の玄関に向き直る

呆れたような、哀れむような声音で軽く身を屈める

まだ言い足りないとばかりにバサバサと音を立てるポストに

本田は困ったように眉を垂れさせた

依頼完遂の記録をとるため机に書類を広げる本田を見て

ポストは先ほど久留間が口述した除霊の顛末を復唱すべく

卓上に身を落ち着ける

あの勢いだと今頃は手近なホテルかなとどこかで考えながら

今は本田のサポートに集中しなければと背表紙を伸ばした