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香月
香月が低く呟く
指先が麗央の頬からゆっくり滑り落ち、鎖骨をなぞる
涙と震えで熱を持った肌に、その冷たい指がいやらしく沈んだ
麗央
抵抗の声が喉から漏れた瞬間、柊夜が後ろから肩を抱き寄せる
柊夜
耳元で、甘くて酷い声が囁いた
香月は一歩前に出て、麗央の脚をじわりと開かせるようにしゃがみ込む
香月
麗央
――まさに、堕としきるその寸前
部屋の奥、壁越しに微かに聞こえた「軋み」に、香月の動きが止まった
香月
柊夜
柊夜が耳を澄ませる
数秒の沈黙――その中に、遠くから近づく足音
硬くて重いブーツの音が、コンクリの床を叩いていた
香月がすっと立ち上がる
その目が、冷たい光を湛えながらドアの方を睨みつける
香月
柊夜
香月
香月はゆっくりと麗央に振り返る
まだ目に涙を浮かべたままの麗央を見下ろし、その頬を指先でなぞる
香月
香月
柊夜が名残惜しそうに麗央の髪をかきあげる
柊夜
香月が短く笑い、腰のあたりに忍ばせたナイフの柄に手をかけた
香月
香月が舌打ちと共に振り返り、重たい鉄の扉へと歩いていった
柊夜はその場を離れず、麗央の髪を弄んだまま、にやりと笑っている
――ドン
硬い音が、扉の向こう側から響いた
次の瞬間、何かがぶつかるような衝撃音と、鋭く乾いた怒声が飛び込んでくる
零斗
その声を聞いた瞬間、麗央の呼吸が止まった
(……零斗……)
あの、少し荒れた低音。何度も怒鳴られた声
それでも今は、涙が出そうになるほど――安心してしまう
麗央
呟いた名が喉から震えて漏れたその瞬間――
鉄扉が、蹴り飛ばされるようにして開いた
中に踏み込んできたのは、目を見開いた零斗だった
その後ろには、龍牙の鋭い視線と、朔矢の冷たい目が続く
麗央の視界が、ぐらりと揺れた
(……ほんとに、来た……)
信じられなかった
助けを求めたわけでもない。誰にも気づかれていないと思ってた
それなのに――ちゃんと、見つけてくれた
零斗
怒りで目を赤くした零斗が、香月に向かって一歩踏み出す
零斗
香月の口元が歪む
香月
零斗
その一言を吐いた瞬間、零斗の拳が振り抜かれた
麗央は、誰かが自分を守るように前に立つ影を見ながら、ゆっくりと目を閉じた
張り詰めた心が、ほんの少しだけ緩んだ
(……怖かった……でも……)
(……ちゃんと、来てくれた……)
震える唇を噛みしめて、麗央は小さく泣いた
今度は、悔しさでも、恐怖でもなく――救われた気持ちで
香月が零斗の拳を寸前で受け止め、口元を緩めた
香月
柊夜は肩をすくめながら、名残惜しげに麗央に目を向けた
柊夜
朔矢が前に出る。口元には笑みを浮かべていたが、目はまったく笑っていない
朔矢
柊夜が舌打ちしながら香月と共に引き、静かに扉の奥へと消えていった
鉄の扉が閉まり、重く鍵がかかる音が響いた
部屋に残されたのは、ぐしゃぐしゃに泣き崩れた麗央と――
静かに歩み寄る、四人の男たち
零斗
零斗が名前を呼びながらしゃがみ込んだ
麗央は反応しない。いや、できない
肩を震わせて、小さくしゃくり上げながら、涙でぐしゃぐしゃになった顔を手で隠すことすらできないままだった
蓮
龍牙も膝をつき、そっと麗央の髪を撫でた
龍牙
それでも麗央は身体を丸めたまま、膝に顔を埋め、ただ小さく震えていた
麗央
誰かの名を呼んでいる
かすれた声で、泣き声の奥に重なった音が、耳に届いた
麗央
赤ん坊みたいに――弱くて、頼るような、か細い声だった
それが、自分の名前だと気づいた瞬間
零斗の喉がぎゅっと詰まる
零斗
震える身体を、そっと包むように抱き寄せる
拒まれない
麗央はもう、自分じゃ立てなかった
零斗
麗央
無意識に名前を呼びながら、麗央は零斗の胸に顔を押しつける
泣き声は止まらない。息がうまく吸えないほど、しゃくり上げて泣いている
零斗
その声に、ようやく、麗央の細い手が、零斗の服の裾をぎゅっと握った
見ていられないほど弱った姿を、4人で囲むようにして静かに守った
香月も柊夜も、もういない
でも――この傷がすぐに癒えるわけじゃない
そのことを、誰よりも分かっていたからこそ
朔矢
そう、朔矢が優しく言った
麗央は、それに小さくうなずいた
まるで赤ちゃんのように、零斗の胸にしがみついたまま
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コメント
27件
やっぱり大好きです✨
迎えに来てくれて(*´ω`*)ヨカッタネやっぱりこの5人じゃないとダメだね😢🙅
んー最高だす てかこれ1話かくのにどんくらい時間かかってんだか気になるぞよ... 続きも気になるゾ🙄 だいふく様様は頑張ってるんだな!!オレもだいふく食べて頑張るとするか、、