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めっちゃ泣いてるよ😭天才ですか
マジで最高でした😭目から水が出てきてて辛いですほんと…😭
前編から読みました! 期待以上でした最高です!
『手放した君を、愛してると思った』
後編________
総合病院の病棟を
駆け抜ける
少し薄暗く感じる病棟には
誰もいなくて
自分の荒れた息遣いだけが
韻を踏むように残る
角を曲がると
すぐそこに、見慣れた人影を捉えた
Ro.
彼は
部屋の前の壁に
寄りかかるように立っていた
S.
息を整えながら
そう問いかけると
彼の表情は
くしゃりと歪んで
一瞬にして
大きな目から
涙がこぼれ落ちた
何も言わずに
透明な雫を流し続ける姿を
見ていられなくなって
早く
ころんの状態を
確認したくて
思い出したように
病室のドアに手をかける
開こうと
力を込めた瞬間
突然
手首を掴まれた
S.
Ro.
Ro.
彼は
掠れた声でそう言って
首を振る
その途端
中から大きな声がして
思わず
ドアから手を離した
J.
J.
Ri.
J.
ドア越しでも分かる
ピンピンに張り詰めた
空気の重さに
俺は動けなくなった
続いて聞こえる
何かが割れたような音
S.
耳を塞ぎたくなった
初めて聞く
ジェルの本気の怒鳴り声
そんなジェルを
必死になだめようとする
莉犬の高い涙声
俺の手首を掴んだ
るぅとの震える手
その何もかもに
焦燥感を覚える
しばらく佇んでいると
騒ぎを聞きつけたのか
看護師さんが走って来た
看護師さん
そう言いながら
俺の前に入り込んで
ドアを勢いよく開ける
S.
止めるまもなく
一気に視界が
中の光景を捉えた
開いたカーテン
割れた花瓶
それらが自然に目に入ったあと
あるものに
焦点が重なって
その姿に
言葉を失った
頭の包帯
繋がった呼吸器
右目の眼帯
彼の細い腕から伸びる
大量のパック
事故の残酷さなんて
言わずも知れていた
S.
他のものが真っ黒になったように
彼しか見えなくなって
吸い寄せられるように
足を踏み出した途端
バチンッ
つんざくような
破裂音とともに
右頬に
電流が走った
Ri.
一気に視界が開けて
びっくりして
顔を上げる
目の前の彼は
悔しそうに
俺を睨んでいた
J.
J.
Ri.
その気迫に
思わず
呆然と彼を見つめる
J.
J.
もうほとんど
悲鳴とも呼べるような声で
彼は狂ったように叫んだ
看護師さん
止めようとしている
看護師さんにも目を向けず
俺に近づいてくる
そのまま
胸ぐらを掴まれて
壁に叩きつけられた
S.
苦しい
信じられない力の強さに
息が詰まりそうになる
必死に抵抗しようと
彼の腕を掴む
だけど
俺に向けられた
我慢したような
泣きそうな
自分を抑制しようとしている表情に
俺はまたもや
呆然とした
J.
彼は
先程の叫んだ声とは比べ物にならないくらい
かすれた
消え入りそうな声でそう言って
言葉を止めた
悔しそうに顔を歪めて
言葉を選ぶように
ゆっくり言う
J.
彼は
そう言って手を離し
その場に崩れ落ちた
"あの時"の
俺のように
『相方』
その言葉を選んだ彼は
自分の言いたいことを
飲み込んで
俺を傷つかないように
しているようだった
時が止まったかのように
誰も何も言わなかった
唯一動いていたのは
それぞれの涙腺だけ
N.
静かな病院に響いた
澄んだ低い声に
俺たちはいっせいに
顔をあげる
看護師さんが呼んできてくれたらしい
なーくんは
状況を理解しようとしているのか
俺たちをぐるりと見回したあと
N.
崩れ落ちたままのジェルに
ゆっくりと駆け寄っていく
それから
何かを耳打ちしたあと
俺の方を向いた
N.
俺は
カラカラになった喉を
何とか動かして
うん、と
答えた
病室に
静寂が訪れる
ジェル達は
なーくんに言われて
帰って行った
病室には
俺と、なーくんの
2人だけ
目の前には
痛々しい姿をした
ころんが寝ていた
N.
長い長い静寂ののち
なーくんが、口を開く
俺は
事故の全てを聞いた
酔っ払いが運転していた車が
ころんにむかって
突っ込んだらしい
飛ばされたころんは
そのまま
電柱と車の間に挟まれて
肋を折ってしまった
折れた肋が
肺を傷つけて
もう
前みたいに
活動は出来ないかもしれない
そう聞いた時には
ジェルみたいに怒れたはずなのに
なぜか
冷静だった
なのに
頭の中は真っ白で
耳で聞いたことが
上手く頭に入ってこなくて
それからなーくんは
ジェルのことも
謝ってきた
看護師さんに
だいたい話は聞いたらしい
N.
N.
N.
N.
N.
泣きながらそんな風に言われてしまえば
許さないなんて
言えるはずがなかった
それに
そもそも
ジェルのことを怒ってなんかない
ジェルが
あんなに必死になっていたのも
あんなに取り乱していたのも
本当に言いたかったことを言えなかったのも
全部
悲しいことに
分かってしまっていたから
彼自身も
自分を抑えようとしていた
体が追いつかなかっただけ
だから
俺の事を叩く時も
利き手を使わなかった
ジェルが感情まかせに動く人じゃないことなんて
もうとっくに分かっていた
N.
僅かな沈黙を破って
俺からの言葉を求めるように
なーくんが口を開く
N.
次に放たれた言葉は
さっきジェルに言われたことのように
言いたいことを隠して
言葉を選んでいるように感じた
それが俺のためだと分かっているから
俺は自分から
泣きたい気持ちを抑えて
彼に尋ねた
S.
S.
S.
S.
言ってから
目の前のころんが
たまらなく愛しく感じて
泣きそうになる
N.
N.
愛しい人に触れたくて
伸ばそうとした手は
空を切る
N.
N.
N.
N.
N.
さっきよりも
言葉を選ばない
音は
俺の中に
静かに落ちていく
傷ついたりしない
俺は今、自分から
本音を聞き出そうとしているのだから
そう思うけど
無意識に
握った拳の力は
強くなっていく
S.
崩れてしまった
俺たちの関係
俺たちの歯車に
亀裂を入れたのが
自分だと思うと
申し訳なさじゃ足りないくらい
自分を憎いと思った
こういう時に
いつも隣にいてくれた
『彼』でさえも
もう戻らない
もう全てが
遅い
N.
N.
N.
N.
S.
N.
N.
N.
N.
N.
N.
S.
俺を見つめる
真っ直ぐな瞳
その一心さに
気持ちが
えぐられたように
溢れてくる
S.
N.
S.
N.
言ってしまった
俺から突き放したくせに
『好き』なんて
でも
1度開けてしまった扉は
簡単に閉めることなんて
出来なかった
S.
S.
S.
S.
今までは
心の中で思うだけだった
初めて口にする
後悔
S.
S.
S.
S.
S.
たくさんの涙が
雫となって
床に落ちる
N.
俺の弱い所見せても
なーくんは軽蔑したりしなかった
N.
N.
S.
N.
N.
N.
N.
N.
彼の瞳から
涙がこぼれ落ちた
そのまま
ゆっくりと
病室を出ていく
俺ところんだけになった
静かな病室
外はいつの間にか
夕暮れ時になっていた
呼吸器に気をつけながら
彼の頬に触れる
その頬は
想像以上に冷たくて
思わず
温めてあげたくなる
S.
S.
S.
柔らかく閉ざされた瞼は
閉じたまま
S.
S.
S.
S.
S.
笑って言ったのに
その声は
微かに震えて
行くあてもなく
彷徨う
次にかける言葉が見つからなくて
そのまま
ベットの端に突っ伏す
目を閉じると
頭の中で反芻する
なーくんの言葉
"『好きだから』って"
"それだけじゃダメなの?
S.
夕日に照らされる
儚い彼
S.
S.
受け取ってくれる人のいない
とめどない
愛の言葉
あの時と
彼と別れた時と
同じ
遅れた
俺の願望
涙が止まらなくなって
もう一度
目を閉じる
C.
くぐもった
だけど
体が記憶している
小さな声に
はっと
目を見開く
C.
S.
ピクリとも動かなかった
彼の体
なのに
眼帯をしていない
左目が
確かに俺を捉えていた
S.
S.
突然の出来事に
言葉は
途切れ途切れ
C.
呼吸器を通した彼の声は
ただでさえ消え入りそうなくらい
儚いのに
その声を
より一層
小さくする
思わず
ナースコールを押そうとする
俺の手を
彼が掴んだ
乾いた口から
え、と息を吐く
C.
C.
C.
S.
C.
手を握る力が
少し
強くなる
その小さな手に
感情が掻き出される
S.
C.
S.
C.
S.
S.
C.
C.
C.
C.
C.
うっすら開いた
彼の左目から
雫がこぼれ落ちる
C.
C.
彼は
力なさそうに
小さく笑った
C.
C.
柔らかい声音で言う彼は
どこか、寂しそうで
C.
C.
"そんなこと"
そんなこと、なんかじゃない
少なくとも
俺にとっては
だから
S.
彼の目が
大きく
見開かれる
俺の手を掴んだ
小さな手を
今度は
俺が握って
俺を愛してくれた彼に
本当の気持ちを
伝える
S.
S.
S.
S.
1度言ってしまえば
もうそれが止まることはなかった
今日の今の時間は
歯止めが聞かなかった
S.
S.
涙で視界がぼやけて
彼の顔も
見えなくなる
S.
S.
S.
S.
S.
今だったら
自信を持って言える
彼の事を
愛してるって
S.
その声が
病室に響く
C.
C.
C.
S.
C.
C.
C.
S.
S.
C.
C.
C.
S.
S.
S.
S.
C.
C.
S.
S.
S.
S.
C.
C.
C.
S.
S.
S.
C.
ころんは最後にそう言ってから
少し微笑んで
時間が切れたかのように
もう一度
眠りについた
俺は
涙を拭ってから
小さく彼の頭を撫でて
ナースコールを押した
N.
Ri.
Ro.
J.
あれから1ヶ月
ころんは無事退院した
肺も思ったより悪くなくて
活動も今まで通り続けられるらしい
本当に心から
良かった、と思う
J.
J.
J.
S.
今は
ころんの
退院祝いで
サプライズの準備中
ジェルのを真似るように
皿を並べていく
ジェルからは
あの後
泣きながら謝られた
でも
俺が笑って
"ジェルのおかげだよ、ありがとう"
と言ったら
泣きながらも
へへ、と笑ってくれて
やっぱ俺なんだよなぁ、と
いつもの調子に戻った
そんなジェルを
軽く小突く莉犬も
目は赤く腫れていたけど
いつもの毒舌さは変わらないるぅとも
その様子を
優しく眺めるなーくんも
少しぎごちなかったけど
やっぱり俺たちは
こうでなくちゃ、と
改めて実感させられた
今ではすっかり元通りになって
こうしてサプライズの計画をしていた
Ro.
るぅとの声に
全員でクラッカー片手に
玄関に待機する
俺も
みんなと同じように
位置につこうとして
少し鼓動が早くなっている
胸に
手をやる
しばらく固まっていると
N.
みんなが心配そうに
こちらを向いた
N.
N.
そう言ってなーくんが笑うから
みんなもニヤニヤしだしてしまった
Ri.
Ri.
S.
Ri.
Ro.
J.
三人は
次々にそう言いながら
前に向き直る
N.
と
なーくんは
俺にこそっと耳打ちしてきた
N.
その笑顔に
やっぱりリーダーは
なんでもお見通しだな、と
感じて
俺も
笑った
S.
その瞬間
ガチャりと
玄関が開いた
パンッパパンッ
C.
C.
ドアを開けたその人は
驚いたように
声をあげる
Ro.
Ri.
N.
J.
突然の
壮大なお出迎えに
彼はしばらく
圧倒していたけれど
ふわりと笑顔になって
へへ、と笑う
C.
懐かしい
無邪気な声で
そう言った
そして
全員をゆっくり見回したあと
俺と目が合う
S.
そう言ってやると
彼は
嬉しそうに笑って
飛びついてきた
S.
C.
S.
C.
何度も言われてきたのに
俺が逃げ続けてきた
もう二度と聞けないと思っていた言葉に
思わず泣きそうになったけれど
その涙は
悲しみの涙じゃなかったから
我慢せずに
言葉と共に
外に出す
S.
そう言って
彼の体を
強く抱きしめると
周りから
歓声と冷やかしの声が上がって
頬に熱を帯びるのを感じる
体を離した彼に
C.
と言われたから
ちょっと悔しくなって
キスしてやった
すると今度は
彼の方が真っ赤になって
隠すように
顔を埋めてくる
あぁ、可愛い
俺の大好きな人
もう彼を
一生離さないと
心に決めて
もう一度彼に
キスをした
______end.
〜あとがき〜
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
なごみ
『手放した君を、愛してると思った』
__完__