太陽が地平線に沈み、テンペストの街が夕焼け色に染まる頃。
自宅のソファで、ジェジェは廃人のようになっていた。その横では、彼を一日中拘束し続けたそらちゃんが、ふぅと息をついてお茶を飲んでいる。
ジェジェ
「……そら。私の……私の可愛いそらねとそら真が、今頃どこで何を……。監視のない世界で、あんなことやこんなことまで……っ」

そら
「いいの! 二人を信じるって決めたでしょ? ほら、足音が聞こえてきたよ」

玄関の扉が開く。
そこに入ってきたのは、疲れ果てた姿……ではなく、どこか凛として、瞳に強い光を宿した二組の男女だった。
そらま
「……ただいま、パパ。約束通り、日没までに帰ったよ」

そら真が彼女の手を繋いだまま前に出る。その表情には、もはや「父親の顔色を窺う子供」の弱さはなかった。
続いてそらねも、彼氏に寄り添いながら、最高に幸せそうな、そして少しだけ「女」の艶っぽさを纏った笑顔を見せる。
そらね
「パパ、見て。私、一滴も涙なんて流してないよ。……パパがいなくても、私、この人と一緒にいて、世界で一番幸せだったもん」

ジェジェはその笑顔を見た瞬間、言葉を失った。
その笑顔は、かつて自分がそらを救い出し、初めて彼女が自分に向けてくれた、あの「救済の笑顔」と重なったからだ。
ジェジェ
「……負け、ました。……私の執事としての眼力も、父親としての独占欲も……。……二人の『本物の愛』の前では、無力でした……」

ジェジェはゆっくりと顔を上げ、若者二人の目を真っ直ぐに見据えた。
ジェジェ
「……婿殿。そして、息子の伴侶となる方。……これより、あなたたちを不審者リストから削除し……『家族』として登録します。……

ジェジェ
ですが、もし二人を泣かせたら、その時は私の『第43巻以降』の講義を一生聞かせ続けますからね」

ひまり
「「……はい! お義父様(パパさん)!!」」

大翔
「「……はい! お義父様(パパさん)!!」」

ジェジェ
《 報告。……個体名:ジェジェが『お義父さん』へのクラスチェンジを完了。……

ジェジェ
屋敷全体が、そら、ジェジェ、そして若者たちの幸せな魔素で満たされ、テンペスト史上最も温かく、そして最も(夜が)騒がしい家庭が誕生しました。 》

そら
「よかったね、ジェジェ! これでみんな、本当の家族だね!」

そらちゃんが後ろからジェジェを抱きしめると、ジェジェは彼女の手を握り返し、少しだけ照れくさそうに笑った。
ジェジェ
「……ええ。……ですが、そら。子供たちが自立したということは、今夜から私たちは、何の遠慮もなく『夫婦の時間』を楽しめるということですね?」

そら
「えっ……結局そこなの!?」
