楓
柚奈
柚奈
楓
そう、私たちは一緒に実行委員になった 部活もそれほど忙しい部じゃないし、楽しそうだったから …それ以外にも、理由はあるけど 楓の知らない私だけの理由が
真白
楓
柚奈
彼…木崎真白が「私だけの理由」 線の細い、繊細で優しい真白君も実行委員会に入ったから それで活動的で幼なじみの楓を誘って…楓が私を誘った つまり、真白君は楓とやりたかったわけで 私はオマケだった
楓
真白
楓
柚奈
こういう、些細な二人にしかわからないやりとりが 私の心を締め付けていく 嫉妬、僻み、羨望 嫌な感情にも、もう慣れた
真白
楓
真白
柚奈
楓
真白
目を輝かせる真白君が眩しすぎて 私に断る選択肢なんてなかった 楓がいなければ、もしかしたら二人で…なんて思ったけど 楓が居ないならまたの機会になるに決まってる
楓
柚奈
真白
楓
楓
柚奈
楓
柚奈
真白
部活の先輩に休むと伝えに言っていた真白君が戻ってきて 私の言葉は呑み込まれた
真白
楓
柚奈
満足そうに頷いて、真白君は先だって歩きだした 小走りに追いついて隣に並ぶ楓 その少し後ろを歩く私 離れて見るとわかる 本当にお似合いのふたり 洗練されていながら清楚な楓 華奢で颯爽とした真白君 地味で影の薄い私がこのまま消えても、ふたりは気づかないんじゃないのか…なんて お得意の僻みがまとわりついてくる
楓
柚奈
手を差しのべて微笑む楓 優しい楓 綺麗な楓 つまらない私と友達でいてくれる楓 胸がつまるくらい真白君が好きだと告白したら 楓はどうするだろう もしも楓が真白君が好きなら… きっと私を応援してくれる だったら言っちゃいなよ、とズル賢いもう一人のわたしが囁く 言って、わたしに協力させたらいい
真白
真白
真白
柚奈
真白
楓
真白
楓
真白
柚奈
真白
楓
その言葉に、体温が上がった 楓はいつも 「二人だけ」 の話をしているじゃない 私にもそれが与えられるなら 真白君が私に向けた笑顔を、私だけの…二人だけの絆にできたら それができるなら 私はなにもいらないのに
真白
楓
柚奈
真白
楓
真白
楓
真白
柚奈
古びた鳥居に小さな祠… 静謐(せいひつ)な迫力に満ちた空間 黄昏時を迎えた神社に、妖しい影が降りる こんな時、妖魔はいるのかもしれないと思う 寂れたなかにある美しさに、心が震える…
真白
楓
真白
柚奈
私たちはお社に向かって手を合わせた シャーン… 遠くで何かが鳴った 澄んだ音はいつまでも耳に残った…
…あれ 私…どうやって家に帰って来たんだっけ… わからない、覚えてない お社様に手を合わせてから…
柚奈
柚奈
柚奈
お前は願った
我は お前を知る
楓
柚奈
楓
柚奈
楓
柚奈
楓
柚奈
楓
こんな時でさえ、私は楓と真白君が二人きりになるのは嫌だった 我ながら浅ましいけど
柚奈
楓
真白
真白君と楓としばらく話していたら 今朝の違和感がようやく薄れていった 奇妙な夢も見たような気がするけど それも思い出せない言葉のように 遠くに行ってしまった…
楓
柚奈
放課後 文化祭が近いから、お化け屋敷の飾りの配置を考えていた 今日は真白君は部活でいない 残念なのか、仲のいい二人を見なくていいからホッとしてるのか わからない自分がいる
楓
柚奈
真白
…え? ここは… 私…教室で楓と… 楓の椅子がぐらついて… ここは? なんで私…
真白
柚奈
馬鹿! 動揺して名前呼んじゃって… それにしても暑い…まるで夏の盛り… 今は10月のはずなのに…
真白
柚奈
これは …私が真白君に惹かれたきっかけ… 去年の…夏の思い出 まだ楓とは友達じゃなくて、真白君とは同じクラスだった そして来年も真白君と同じクラスになりますようにって願った…
真白
柚奈
真白
柚奈
どうしよう どうしようどうしようどうしよう はっきり意識してからこんなに話すなんて…ああ 真白君がいる 私の横に! この真白君は私だけの記憶… …これが夢なら… これが夢なら私…
柚奈
真白
柚奈
真白
柚奈
真白
いるよ
柚奈
……かもしれない
嫌だ 聞きたくない 私は… …でも 「かもしれない」 なら
楓がいなければ いいんだよね?
…わかってたよ
楓
柚奈
ふらついた楓に差しのべた手を 私はそのまま凍らせた 物凄い音がして、椅子が倒れた
楓
柚奈
楓
柚奈
楓
柚奈
私は近くの椅子を持ち上げ 楓の後頭部に 振り下ろした
楓が倒れて 椅子に頭を強打して あっけなく死んで 真白君は悲しいくらい憔悴してた でもその背中の孤独に 沸き上がるような喜びを感じた 寂しいあなたの横には私 誰よりもあなたに寄り添える 楓の親友
真白
柚奈
真白
真白君の細い指に おずおずと手を重ねる 強く握り返されて 私は痛みと、喜びを感じた…
あれから5年
真白
柚奈
真白
柚奈
真白
夢なんかであるものか 強い願いで私は奇跡をものにした 楓が死んでから、遠い目をするようになった真白の 傍にずっと居てあげた 私さえいればいい貴方にした 私は貴方さえいたら良かったから 愛してる 何度も何度も繰り返して 貴方は本当に私を愛するようになった
真白
柚奈
真白
願いは成就せり
柚奈
我はお前を知った
柚奈
我はお前の願いを聞き届け そしてお前を審判する
柚奈
お前を善悪で判断する その願いを手に入れるに足る人間であるのかを
柚奈
お前にふさわしい未来をやろう 一度は叶えたのだ 悔いはあるまい
柚奈
楓
楓
楓
楓
泣き叫ぶ楓を 私は見つめていた 見つめているしかできなかったから 私の両手は血にまみれて 汚れていた 私の心は断罪されて 赤い手は私にとてもふさわしかった 右手はつかみ損ねた夢を掴むように鉤づめにこわばり 左手にはカッターが握られていて 刃先は私の頸動脈を的確に 切り裂いていた 泣きながら、よろめきながら教室を出ていく楓に 私は手を振る 私の姿が楓に、真白に 見えることはないだろう でも、と私は気づいた これから育んでいくであろう 楓と真白の未来を 私は見続けるのだ これが善悪を問うたときに 私に下されたお社様の罰 ふさわしい地獄 こんな未来しか選べなかった 私の地獄 でも真白は言ってなかったっけ 御狐様は元々悪だったと それなら 私にこんな選択をさせたのは お社様のせい だから、私は悪くないよね? 私は…
コメント
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なんかなー あんまり面白くないんかなあ…