運命なんて

やってしまった…

俺はなんてことをしたんだろう

こうなることは分かっていただろッ？

愛していただけ、なんて言葉では済まされない

でも、きっと最初からこうなる運命だと決まっていたのだろう

…運命なんて

桃side

事の発端は中2の夏ー

その日もいつもと同じような日だった

いつも通り青と学校に来て いつも通りみんなに挨拶して いつも通り席に着いた

ただ一つ違うとすれば、第二の性の検査があったことくらい…

まぁ、みなさん察しの通り俺たちは付き合っている。

自分で言うのもなんだが、昔からたくさんの人から完璧だともてはやされて きた俺が、この検査でαになるのは確定といっても過言ではなかった。

だから、青がΩかβなら番になれる。

そう思っていた

結果はαだった。

俺ほどではなくても勉強も運動もできていた青のことだからもしかしたら、と思っていたから驚きはしなかった

青の笑顔は絶対に死ぬまで守ってやるからな！！ なんてのんきに笑っていた当時の俺は何も知らなかった

ー4年後ー

正直、残念…って思ってしまった俺がいた

αがろうがΩだろうが青は青なのに。

そのときに初めて思った

俺と青は運命じゃないんじゃないかって

青元気ない？

やっぱり番になれないからか…？

それなら俺だってつら……

あれ？

番になれない…？？

なってしまえばいいんじゃないか…

頸噛めばいいんだろ、？

αとかΩとか関係ない…運命なんてクソくらえだ…！

ガリッ

そうだ……

αは支配欲を受け入れられない体だから吐いてしまうことぐらい、 わかっていたはずなのに。

すぐにモノを抜いて背中をさすった

でも治まる気配はなく、苦しそうに吐き続けている

そんなときなのに、整っていて美形である青の顔が歪むのをみて 自分のモノが膨れたのを感じた

大切な人を苦しめたうえにその姿に欲情するなんて、 クズにも程がある

その後も、青が意識を無くすまでずっと背中をさすりながら謝り続けた。

そして、部屋を片付けて青を風呂に入れて服を着せてから、 しっかりとベッドに戻した

こんな俺に、青と一緒にいる権利なんてない

やっぱり運命には逆らえないんだな、…

そう呟いて枕元に手紙を置いて外に出た

青…ごめんな。

もう嫌いになったよなｯ？

初めて出会ったあの頃からずっと青が好きだった

今までありがとう

愛してるよ、青。

連絡先を削除しますか？

はい

ー6年後ー

桃。 24歳、会社員。

恋人は……いない

何年経ったってずっと青しか頭にない

告白したときの驚いた顔。

ゲームで負けたときの悔しそうな顔。

初めてお泊りしたときの照れくさそうな顔。

一緒にカフェに行ってケーキを食べた時の幸せそうな顔。

初めてキスをした時の嬉しそうな顔。

最後の日にえっちしたときのエロい顔。

そして、なんでも許したくなってしまうようなあの笑顔。

その全てが、鮮明に思い出される

あの日、あんなことをしなければ今も一緒にいられたのかと言われると そんなことはないと思う。

青には、幸せになってほしいから…

平然と青のことを裏切るような俺では幸せにできない。

だから、きっと良い節目だったんだ

……そう言い聞かせている

フワッ

匂いをもとに歩いていた俺は、目の前の光景に目を疑った

そこには、壁にもたれかかって苦しそうにしている青がいた

一瞬迷ったがあまりにも苦しそうだったから 知らない人のふりをして声をかけることにした。

匂い…？

どう考えてもこれはαのフェロモンの匂いじゃない。

Ωの匂いだ…

そう言って思い切り顔をあげた青と目が合い、慌ててそらした

そう言って俺に笑いかけた

あれ、でもあの時の笑顔とは違う…

って…当たり前か。

だって今はもう幸せではないのだから。

ガチャッ…ドンッ

これどういう状況？

今俺は、青に涙目で睨まれながら壁ドンされている

事実だからなにも言い返せない。

ぎゅうっ

ぎゅっ

愛してる

このあと、俺たちはハグとキスをした

まるで空いた時を埋めるように、何度も。 何度も。

もう、なにがあろうが絶対に青を離さない

運命…？

そんなもの、俺らには関係ない。

これから先、どんな運命が待っていようが俺が変えてやる。

運命なんて