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蘭side
告白予行練習から2日後。 私は自室のカレンダーと 睨み合っていた。
桃瀬らん
自分でも矛盾してるのは分かってる。
曜日感覚があったから 明け方まで漫画を描いていたし 昼過ぎに起きても 慌てたりしなかった。
だが、こうして改めて 突き付けられると 意識せざるを得ない。
練習とはいえ告白してから 初めての週末なのだと。
遮光カーテンを捲れば 向かいの2階にある 威榴真の部屋が見える。
家が隣同士で母親達も仲が良い為 幼い頃から互いの家を 頻繁に行き来していた。
それは高校生になった 今でも変わらず週末のどちらかを 一緒に過ごすことが 半ば習慣になっている。
"蘭が勉強を教わりに行く" という名目付きで。
桃瀬らん
桃瀬らん
溜息をひとつこぼし 私は机の端に追いやった 英語の課題を摘み上げる。
桃瀬らん
気合いを入れて向かったのは 良いものの生憎 威榴真は外出中だった。
ほっとしたような 残念なような複雑な気持ちに 私は思わず苦笑いになる。
桃瀬らん
紫龍ほとけ
そう言って口を尖らせるのは 威榴真の妹の穂留彗。 通称いむちゃんだ。
私の弟と同じ高校一年生だが 「妹」という存在はとにかく可愛い。
仔猫のように戯れつかれてしまうと 凹んでいた気持ちが 急浮上させられる。
桃瀬らん
紫龍ほとけ
無邪気に笑ういむちゃんに 少しだけ緊張を覚える。
垂れ目がちないむちゃんの瞳が 嬉しそうに笑う度威榴真の顔が チラつくからだ。
桃瀬らん
見た目の特徴だけでなく 2人にはある共通点があった。
紫龍ほとけ
勝手知ったるなんとやらで 威榴真の部屋に入っていく いむちゃんが不意に私を振り返った。
先導されるままだった私は 不意打ちを正面から食らってしまう。
桃瀬らん
確信に満ちたいむちゃんの瞳が 真っ直ぐに注がれ 私は居心地の悪さに俯く。
紫龍ほとけ
桃瀬らん
しどろもどろになる私に いむちゃんは大人びた表情を見せる。
紫龍ほとけ
あっさりと追及は止み 再び小さな背中をこちらに向けた。
宣言通り、いむちゃんは 何も言ってこない。
無言でゲーム機を セットする姿に私はそわそわと 落ち着かない気持ちになってくる。
桃瀬らん
威榴真から何か 聞いている可能性もある。
いや、幼馴染の性格からすると 告白予行練習のことは 洩らさないだろう。
それでも、いむちゃんから 「お兄ちゃんと何かあったでしょ」 と言われるくらいには 威榴真の態度もおかしかった のかもしれない。
桃瀬らん
紫龍ほとけ
桃瀬らん
言葉が足りていないようで とっさに意味を掴み損ねた。
私の問いかけにリモコンを手にした いむちゃんが振り返る。
紫龍ほとけ
いむちゃんの瞳にはいつになく 真剣な光がたたえられていた。
冗談をいっているようには とても見えない。
釣られて私も背筋を伸ばし 慎重に聞き返した。
桃瀬らん
紫龍ほとけ
紫龍ほとけ
紫龍ほとけ
桃瀬らん
流石にいむちゃんの 言おうとしていたことが分かり 私は今度こそ顔色を失う。
桃瀬らん
思い返すまでもなく いむちゃんに威榴真への 想いを打ち明けたことはない。
それこそ本当の姉妹のように 仲良くしていたが、流石に 「いむちゃんのお兄ちゃん のことが好きなんだよね」 と言うのは躊躇われたからだ。