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家の中から物音が聞こえない。
それもそうか、家族全員出払っているのだから。
なぎさ
なな
ドアに鍵を差し込み、家の中へと入っていこうとした。
電気のスイッチを押しても反応がない。
なぎさ
台所の近くにクッキーが置いてあった。
母
という、母親の言葉が蘇ってきた。
疲れもあってか、ふっと息をなだめるように腰をその場に下ろそうとした時だった。
ピーンポーン♪
なぎさ
なな
なぎさ
学校にいるはずのA子さんなのか?
ピーンポーン♪ピーンポーン♪ピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪
なぎさ
インターホンの画面には見覚えのある少女が映り出す。
満面な笑みで、なぜか手に銀色の光を放つ何かを手にしながら。
なな
なぎさ
私の頭の中は何も考えられない。
足が勝手に玄関口に向かう。
鍵に手をかざした時だった。
なぎさ
なな
目の前にいる黒猫は誰が見ても分かるように首を勢いよく横に振っていた。
なぎさ
体が勝手に動いたとしても私は謝った。
いや、もう遅かったかもしれない。
私の手は黒猫と化したななに引っかかれた瞬間に鍵を回してしまったらしい。
なな
扉から覗いた顔がすんなりと隙間から現れる。
私は後ろに下がりながら、その場でコケてしまった。
そんな中で私の前に、ななが目の前にいるななに化けた何かと相対していた。
鏡に反射して映るのは黒猫の黄色い目だった。
なな
なぎさ
A子
ななの姿をした体が頭から真っ二つになって姿がぬるぬる出てくる。
まるで蛹から羽化した虫みたいに。
A子さん
なぎさ
なな
ななは威嚇している。それなら、なぜななは黒猫になったんだろう。
A子さん
なな
なぎさ
A子さん
A子さんは私の顔を見て、ナイフの先を舌先でペロリとする。
私の顔はひどく怯えてた。
なぎさ
A子さん
なな
一瞬の隙を見逃さなかったのか、ななは黒猫の爪でA子さんの顔に傷を付けた。
その隙に私はナイフを彼女の手から奪い取った。
なぎさ
A子さん
なぎさ
私はA子さんの持っていたナイフを彼女と同様に舐めながら言った。
A子さん
急に静かになった。
かと思いきや、電気が付いた。
母
なぎさ
そんなことよりも周りを見渡す。
黒猫の姿が見当たらない。
そんな時だった。
急に後ろから両目の視界が奪われる。
なな
なぎさ
なな
ななの両手で私の目は塞がれてたのだった。
母
なな
なぎさ
なな
なぎさ
なな
母
こうしてハロウィンは終わった。
なな
私とななで玄関先にあるハロウィンのカボチャをしまおうとした。
カボチャを見て私は呟く。
なぎさ
なな
そう、これはハロウィンのもうひとつの意味。
亡き物が帰ってくる物語である。
翌日。
A子さんの姿を見た者はいなかった。
あの看板はというものの、A子さんの名前に元通りになっていたのか見たかったが、さすがにかなり時は経っていたので回収されていた。
B子
なぎさ
B子
なぎさ
私の目にはそこで虚ろの目で何かを見ている先生が映っていた。
女先生
いつの間にか来てた女性の先生の掛け声で、みんなが席に着いていく。
なぎさ
あの先生はというと、隅にそっと置いてあるA子さんの机に行き、思いっきり頭を下げていた。その肩をそっと綺麗で美しい姿になったA子さんが叩いて、二人はお互いに手と手を握りしめて、なぜか私に手を振って「ありがとう」と口パクで伝えて、締め切った窓の外へ壁を通り抜けて消えていってしまった。
女先生
なぎさ
女先生
なぎさ
私は授業に集中した。
学校が終わり、私は目の前の元看板があった場所に両手を合わせている。
なぎさ
なな
母
なぎさ
母
なな
なぎさ
なな
ななの両手には私の手と母親の手が固く結ばれていた。
私はもう離さないと思い、その小さな手をちゃんと握り返すのだった。
~完~