コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
主
俺らは元貴の言う前回みたいなことが起こらないように定期的に元貴の家に行っていた
元貴が日々つらそうになっていくからこっちも辛くなってきた
でも本人が一番つらいから寄り添ってあげてるつもりだった
どう調べても病の治療法なんて見つかるわけなく無力さだけが心を蝕んでいった
今日も元貴の家に来た
ピンポーン
若井滉斗
ピンポーン
若井滉斗
何かあった?そんな不安が頭をよぎる
後一回、頼むでてくれ
ピンポーン
若井滉斗
念の為作っていた合鍵で中に入った
元貴がどうか無事でいてと願って
そこにはヘッドホンをつけて手にいっぱいの薬を持った元貴がいた
それが通常の量じゃないなんて明らかだった
後ろにいた涼ちゃんが僕より先に動き出していた
パシッ
大森元貴
危機一髪、涼ちゃんが元貴の持っていた薬を弾き飛ばした
薬がバラバラと床に散らばる
元貴はわけがわからないという顔で振り向いた
大森元貴
君は困惑した目で見つめる
藤澤涼架
藤澤涼架
涼ちゃんが膝から崩れ落ちた
その衝撃で我に返ることができた
元貴に駆け寄った
若井滉斗
若井滉斗
若井滉斗
若井滉斗
なぜか視界がぼやけていった
床には水たまりができていた
こんな時どう声をかけたら正解なんてわからなかった
ただ心で思ったことを言った
君はヘッドホンを付けているせいか何も言ってくれなかった
ただ黒い瞳で俺等を見つめていた
その瞳を見れば見るほど俺等の言葉が届いているのか不安になった
言いたいことを言い終わって沈黙の時間が流れる中
君はヘッドホンを外して謝罪の言葉を口にした
大森元貴
でも俺はその言葉が本音だとは感じなかった
藤澤涼架
藤澤涼架
藤澤涼架
藤澤涼架
涼ちゃんがそんなことを言う中、元貴はまだ言葉を受け止めているのかわからない表情だった
何か考え事をしているような、そんな顔だった
しばらくして、問題の答えが分かったかのような顔をして君は俺等に抱きついた
いつもと同じ、強く儚い元貴のハグ
君は俺等に顔を見せないように泣いていた
いつもの元貴に少し安心した、反省してくれて、また最後まで支え合って生きていけると思った
元貴が俺等の体から離れる頃には外は暗くなり始めていた
そろそろ帰らなければいけない時間だった
藤澤涼架
涼ちゃんがそういった時
君が下を向いて悲しいような、寂しいような表情をしていたのを俺は見逃さなかった
でも、すぐ笑顔に切り替えた
それにつられて涼ちゃんは笑顔になった
きっと涼ちゃんはその笑顔を信じ切っていたのだろう
でもその前の顔が頭から離れず、笑うことなんかできなかった
元貴がまだ俺等に打ち明けていないなにかがあるのが分かった
涼ちゃんの後ろについてドアへ向かう俺の頭の中はそのことでいっぱいだった
ドアを開けている涼ちゃんはおそらく気づいていなかっただろう
元貴は下を向いて下唇を噛んでいた
本人が気づいているかは分からなかった
大森元貴
藤澤涼架
今日この家に来てからの無数の違和感
俺の心の中に渦巻く不安
いつもとは違う君
すべての答えを示して安心させてほしかった俺は少しの沈黙の後、言葉を選んだ
若井滉斗
気楽に「またね」と返してくれるのを心の底から望んだ
でも君は驚いた表情をしてドアに隠されていった
君の口から答えは返ってこなかった
それは俺の違和感、不安を大きくするだけだった
元貴の家を出た涼ちゃんは元気そうだった
俺とは反対で足取りが軽そうだった
きっと元貴が本当に反省したと思ってるんだろう
でも俺の目に写った元貴は何かを隠しているようだった
あの時謝った元貴は少なくとも俺には本当の元貴に見えなかった
元貴の言葉を信じるなら元貴は2回目
少なくとも俺らよりは何かを抱えている
前回のことを踏まえて悩んでいるんだろうか
何が起こったのかを体験していない俺等は元貴とは世界が違う
でも元貴には相談してほしい
後残り少しの命なのだから
残り少し…元貴の言う話ではそろそろ元貴が襲われるのだろう
俺等が定期的に元貴の家を訪れているから大丈夫だとは思いたいけど
元貴が俺等に打ち明けた時点で運命がどう変わるかは分からない
気をつけないと
そんなことを考えながら自分の中で都合のいいように違和感を消していった
でも、元貴が「またね」と返してくれなかったその違和感がどうしても残る
その不安を取り消したくてあらゆる都合のいい可能性を探した
そんなことをしていたら一番最悪な可能性にたどり着いてしまった
若井滉斗
藤澤涼架
若井滉斗
そんなわけがない、元貴ともう会えなくなるなんて
そんなことを元貴が望むか?
そんなわけがない
そう思いたかった
でもそうだとしたら全ての辻褄が合う
偽の謝罪、号泣の理由、返事のない「またね」
…嘘だろ?
藤澤涼架
若井滉斗
藤澤涼架
君は立ち止まってそう言う
若井滉斗
藤澤涼架
どうしようか、言ってしまおうか
これを打ち明けて元貴を助けようと言ったら君はきっと同意する
でもきっと今の笑顔は壊れてしまうだろう
きっと考えきれないほどのショックを受けるだろう
そんなことをしてまで打ち明ける必要があるだろうか
藤澤涼架
若井滉斗
若井滉斗
若井滉斗
若井滉斗
藤澤涼架
藤澤涼架
若井滉斗
なんとかごまかせた
きっと涼ちゃんにはショックがでかすぎる
もし元貴がそのつもりなら俺一人で止めに行こう
「またね」が言えないところから考えると
明日とか明後日とかそこら辺だな
元貴のことだから明日行ってみよう
どうかこの考えが間違いだと願って家に行こう
きっとまた家でのんびりしてる、この不安を消してくれる、そう信じて