短編

桃赤

モブ目線

1組の赤くんには、彼氏がいるらしい

そんな噂を耳にした

まあ、男同士とかは、あんまり気にしない

って思ってたけど

気になるものは、気になるし

少しだけ、見てみたい

1組の教室に来ると

ドアの辺りで誰かとぶつかった

ふわふわで真っ赤な赤色の髪

少し低めの身長

多少着崩した制服

間違いない、この人が噂の赤くんだ

やば、つい黙り込んじゃった

思ってたよりも、なんていうか

桃くんとは、

顔も声もスタイルも良く

勉強も運動もできる、と噂の

美男美女カップルで有名だったはず、

頭がついていけず、

私は非常階段に駆け込んだ

あんまり人がいなくて、お気に入りの場所

だけど、今日は先客がいた

目が腫れていて

ついさっきまで泣いていたような

先程の明るい笑顔とは異なる

なんとも下手くそな笑顔を作る

赤くんは泣きながら話してくれた

桃くんが噂の3年の先輩と仲良く話していたこと

その先輩が桃くんに抱きついたこと

2人が頬を赤くして笑ってたこと

全部、話してくれた

明るい笑顔を作り、笑いかける

さっきの笑顔よりは、

少し元気になったような笑顔だった

それから、1週間に1度だけ

私達は話をすることにした

話すことは大体桃くんのことで

話している時の赤くんの顔は

幸せに満ち溢れた顔で

話している時に分かったことは

桃くんは、赤くんのことが大好きだということ

多分、赤くんが思っている以上に

赤くんと話をし始めた数日後

桃くんが私のクラスに訪ねてきた

怪しげな笑顔で手招きしている

正直、すごくすごく怖い

暫く歩き進んだ時、突然告げられた

そう告げると

きょとん、とした顔で

背後から聞こえた声は

普段隣で惚気まくっている赤くんの声だった

こいつが？とでも言いたげな顔で

私を見下ろしてくる

そう言うと、赤くんは顔を真っ赤にして

大声で照れているのを誤魔化すように叫んだ後

小さな声で、ぼそぼそと

なにを、見せられているんだろうか

恐怖さえ覚えるような笑顔で

どうなるか分かってるよね、と、

私にだけ聞こえる音量で

そんなことを言われては

こう言う他、選択肢はなかった