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背中の体温を感じながら、廊下を歩いた。

軽い。軽すぎて、余計に胸がざわつく。

Hima

....おろせ。歩ける

耳元で小さな声がする

Illma

さっき立てなかったくせに何言ってんだよ

そう返すと、それ以上反論の言葉が思いつかなかったのか 喉を詰まらせてそっぽ向いてしまった

ぎゅっと制服の背を握る指先だけが、彼の本音を物語っている。

人気のない廊下を抜け、扉を開けると、消毒液の匂いが鼻をついた。

保健室の静けさが、ふたりを包み込む。

ベッドにそっと降ろすと、そいつは横を向いたまま、かすれた声で言った。

Hima

.......ありがと

俺はその横顔を見下ろしながら

心の奥のザワザワを感じた

Hima

....ねぇ、アホ毛

Illma

いるまだ

Illma

せめて先生って呼べ

Hima

........

Illma

....名前は?

Hima

........

しばらくの沈黙

Illma

....はぁ

それに耐えきれず思わずため息がでた

すると、仕方がないと言うように吐き出した

Hima

....なつ

Hima

暇 なつ....

Illma

「なつ」な

この後、保健室の先生に状態を見てもらったが

思っていた以上に酷いものだっため、

早退することにした

Illma

家、送ろうか?

Hima

家知らんだろ

Illma

案内すればいい

Hima

....

また喉を詰まらせてそっぽ向いた

どこか可愛いと思ってしまう自分がいる

Hima

....帰りたくない

Illma

....?なんで

Hima

帰りたくない、それだけ

今にも消えてしまいそうな儚く、微かな声でそう言った

目の奥を見ても何もなくて、

それがなつの本音なのかもしれないと

Illma

........

Illma

....じゃあ..

Illma

俺ん家来るか?

自然と口から出た言葉に、なつは小さく身じろぎした

Hima

....やだ、迷惑だろ

弱々しい声

Illma

迷惑とか関係ねぇよ。お前、帰りたくないんだろ?

口を止めずに言うとなつの指先がぎゅっとシーツを掴んだ。

答えの代わりみたいに

背中になつを背負ったまま、家へ向かう

制服越しに伝わる微かな震えが胸に刺さる。

なつはずっと黙ったままだったけど、 その沈黙には拒絶じゃなく、どこか安堵が混ざっていた

やがて見えてきた自宅の玄関前で、俺は小さく息を吐いた。

Illma

着いたぞ。

Illma

....ほら、入れ

その一言で、なつの固くなっていた肩が、ほんの少しだけ緩んだ。

玄関をくぐって靴を脱がせると、なつをソファに座らせた。

Illma

ちょっとまってろ

そう言って俺は肩を揉みながら台所へ向かう

思ったより軽かった

おんぶしてる時も感じてたけど、まるで骨と皮だけみたいで。

制服越しに伝わった感触を思い出して、胃の奥がきゅっと痛む。

Illma

ガシャ

冷蔵庫を開けると、あり合わせの卵と野菜しかなかった。

でも、それでいい。

Illma

まずは腹に入れなきゃな

呟きながらフライパンに火を入れる。

カチャカチャと調理する音が、静かな部屋に響く。

ソファに座ったなつが小さく声を漏らした。

Hima

....なんで

Illma

ん?

Hima

……俺なんかに、ここまでしてくれんの

手を止めずに答える

Illma

俺なんか、って言葉が一番嫌いだ。

Illma

……ほら、すぐできるから待ってろ

やがて皿に盛られたオムライスが目の前に置かれる。

なつはしばらく黙って見つめてから、 ぎこちなくスプーンを手に取った。

Hima

....パク

一口。

二口。

――そして、ぽつりと小さな声がこぼれる。

Hima

....うまい

その一言に、俺の胸の奥で何かがじんわりと溶けていった。

いるまは扉の向こうにいます

浴室のドアの前で、タオルをなつに渡した。

Illma

....ほら入ってこい。

Illma

汗も泥も落とさないと、風邪ひくぞ

なつは一瞬、目を逸らして小さく笑う。

Hima

……いるまの家の風呂って、なんか変な感じ

Illma

変じゃねぇよ。普通の風呂だ

そう言いつつも、俺自身も落ち着かない。

さっきまで背中に感じていた体の細さが、妙に頭から離れなかった。

しばらくして浴室の中からシャワーの音が響く。 湯気が廊下まで流れてきて、

ふいになつの声が混ざった。

Hima

....シャンプーどれ使えばいい?

慌てて扉越しに返す

Illma

一番手前のやつ!

Illma

....って聞くな、そんなこと !汗 ⸝⸝⸝

Hima

笑 ⸝⸝

返事の後、浴室の向こうでくすっと笑う気配がした。

その笑い声が、さっきまでの「光を失った瞳」を少しだけ遠ざけた気がして、

俺は胸の奥が熱くなるのを感じた。

浴室の扉が開き、なつがフラフラと出てくる。

髪は濡れて、頬には薄く赤みが差している。

ボロボロだった昨日までの姿はどこにもなく、ふと目を奪われた。

Illma

....っ....⸝⸝

思わず声を漏らす。 俺の目が、一瞬でなつの全身を捉えた。

濡れた髪の隙間から覗く首筋、

細くしなやかな肩、柔らかそうな輪郭。

こんなにも美しいなんて、昨日は気づかなかった――。

Hima

何じっとみてんの

Hima

....恥ずかしいだろ...

なつは照れたように目を逸らし、タオルで髪を拭きながら小さく呟く。

Illma

....っ、いや....

胸の奥がきゅっとなる。言葉にならなかった。

守りたい、抱きしめたい――

そんな気持ちだけが、一気に溢れた。

Illma

あ、ココア飲むか?

Hima

飲む

実は用意していたココアを差し出す

Illma

はい、あったまれ

なつはぎこちなく手を伸ばし、少しずつ温もりを口に含む。

Hima

....うまい

小さな声が漏れた。 その言葉に、俺の胸の奥がじんわり熱くなる。

飲み終えたなつは、そっと布団に身を沈めた。

Hima

....寝る、ここで

言葉は少し投げやりだったけど、 その背中は正直に甘えているようで、俺は思わず微笑む。

Illma

....わかった 笑

俺も布団に潜り込み、そっと背中から腕を回す。

なつの体はまだ少し緊張しているけれど、 徐々に力が抜けていくのがわかる。

布団の中で、ふたりの呼吸が少しずつ重なった。

無理に言葉を交わさなくても、静かな時間が互いを包み込む。

Hima

....いるま

Illma

ん?

Hima

....ありがとう

俺はぎゅっと背中を抱き寄せる。

ボロボロだったあの日の影はまだ残っているけれど、

今は、ここにいることだけが確かだった。

長くなってしまった

ごめん

お疲れ様です

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