主
ぺいんと視線
自分の手持ちだけじゃ 足りない気がして、 美術準備室から絵の具を 引っ張り出してきた 机の上にざっと並べる
それから、砂から金を 探し出すみたいに注意深く 色たちを見る
緑色さんは少し薄い緑色 トラゾーさんは洋緑色 コンタミさんは…紺色
ここまで選ぶのに ほんの少しから時間が かからなかったことに 気づく
どうして、こんなに すんなりと色を 選べるんだろう?
レウさんは茜色 クロノアさんは 言わずもがな、青
きょーさんは金色 なんでだろう? きょーさんは どっかと言うと黄色だ だけど、彼の色は絶対 この色だ、という確信が 俺でもわからないような 奥底から湧いてくる
しにがみくんは紫 これも、たくさんの 絵の具の中から 迷わず掴む
俺は、なんとなく 吸い寄せられる黄支子を 綺麗な黄色だ
そして最後に、瑠璃色
らっだぁの色
それ以外の色を横によける パレットの上に 無浩作に選んだ色を出した
まるで虹みたいだと 1人で笑った
自分の大切なものを描く クロノアさんから貰った アドバイス
俺は期待に胸を 踊られながら 筆を持った
らっだぁさんが ぺいんとさんに認識 されなくなってから 1週間以上経過した
廊下で話して以来 俺はらっだぁさんに会ってない おそらく彼は学校にすら 来てないんだろう
ぺいんとさんは、狂ったように 制作に没頭していた まるで何かを振り払って いるようにも見えたが これは俺の先入観か偏見 かもしれない
ぺいんとさんはいつも 下校時刻のギリギリまで 作業をしていた
空き教室の一角を 占めて、色取り取りの 絵の具を並べていた 他の部員たちが 覗こうとすると 彼は決まって作品を隠した
ぺいんと
悪戯な笑顔で そういうのだった
ケチ〜、とかいいじゃん! とかそうやって ぺいんとさんを冷やかす 部員たちの後ろで クロノアさんだけが 微笑みながらその様子を 見ていた
今日の部活は午後からだった 張り切る太陽の下を 逃げるようにくぐり抜け なんとか学校に到着した
タオルで滲み出る汗を拭き 何事もなく美術室に 向かうはずだった
3階の廊下 彼がいた 俺は思わず声をあげた
緑色
俺に名前を呼ばれた彼は 目を丸くした しばらく動きを止めた後 弾かれたように奥の廊下 へと逃げていった
俺は走って追う 彼も走って逃げる
逃げようと思えば きっと彼には簡単に逃げられる この前みたいに、風のように 姿を消してしまえばいいのだ
でも、らっだぁさんは それをしない 俺はそこに賭けた
らっだぁさん…いや
らだおくんは俺に 助けを求めてると
…なんで今らだおくんって いや、今はそれよりも 目の前のことに 集中しなくちゃ
らっだぁ
ようやく立ち止まった彼は はっ、と短く笑った
らっだぁ
らっだぁ
それだけ言うと彼は 俺に再び背を向けた
らっだぁ
頭をフル回転させた
…出来ること
俺に、この力が 与えられた意味
今彼を救えるのは 俺だけだ
俺はらだおくんの 腕を掴んだ らだおくんは驚いた顔で こちらを見つめていた
緑色
緑色
緑色
俺がそう言うと らだおくんはくしゃりと 顔を歪めた
その顔は、切なくて 胸が張り裂けそうだったが 少しの安堵、それから 強い決心を混ざっていた もはや、一言では表せない
緑色
上手くいくかわかんない
でも、やるしかない
俺はらだおくんを 掴んだままの手を ぐいっと思い切り こちらに引っ張った
心の中で、嫌な音がした それを認識したのも つかぬ間、ぺいんとが 俺の上に”降ってきた” それからの記憶は無くて せめてもの償いとして俺は ぺいんとが死んだ次の日 自殺を決行した
僕が、ゾンビを 逃がしたせいでぺいんとさんが 死んだ、僕が、僕が ぺいんとさんを殺したんだ あの日が僕の 誕生日じゃなければ、 僕が生まれてこなかったら 彼は……
怪我をシタ 俺が怪我さえしてなかったら 彼を、ぺいんとさんヲ 助けれたのかもしれないノニ …1番戦える俺がナンデ ナンデ、ナンデ、ナンデ …助けなかったんダヨ、 俺さえ、俺さえもっと 動いてれバ……
俺が、もっと敵を倒していれば ちゃんと皆を見ていれば あいつは、ぺいんとは 死ななかっただろうに らっだぁさんも自分を 殺さなかっただろうに
怪我をしたみどりくんを 治療してた …黄色の彼は怪我をした 首に深い傷を負った 怪我をしてたなら俺が 治療すれば良かったのに 俺は動くことが出来なかった そのせいで彼は死んだ
俺はあの日、動けなかった 皆がなにかをする中 俺はずっと呆然と立っていた 俺が、リーダーなのに …俺さえリーダーじゃなければ らっだぁさんもぺいんとも 死ななくてすんだ …俺も、皆も
俺は1人守るのが 精一杯だった、だから 金色の彼しか 守ることは出来なくて 結局黄色の彼が 死んだあと、みんな ゾンビに大して恨みを 買ったのか 急にゾンビを次々と 倒した 結局みんな怪我した 黄色の彼が死んで 瑠璃色の彼も死んで みんな狂った 正常だったのは 俺と金色の彼だけだった
茜色の彼を守りながら 戦ってた そしたら、急に後ろから 変な音がした 振り返ると黄色の彼の 首から血がすごく出てた それからはあんまり 覚えてない 茜色の彼によると あの後、みんな怒りで 次々とゾンビを倒したそうだ 茜色の彼は失神した俺を 引きずってくれた おかげで拠点まで 戻ることに成功した だがあの日から皆が 壊れた、いや狂ってた 黄色の彼が死んで 瑠璃色の彼が自殺して 皆各自の部屋に 引きこもって
10年もそんな日が続いた 茜色の彼と俺は 出てこない皆を心配して 皆の部屋をまわった そこにはやせ細った 皆の死体があった 餓死だった 10年間も何も 食べてなかったんだ
…俺と茜色の彼は 来世でまた会おうと 約束を交わし 互いを殺しあった
主
主
主
主
主
コメント
9件
あ、ちょ好きです