S
いつも遅刻するか、間に合ってもギリギリに来る俺が、今日はずいぶん早く登校してきて考え事をしていた あの日、まずはセリフを全部覚えてくるように指示された でも、正直俺はこういう暗記がめちゃくちゃ苦手だ
S
しかもセリフを全部覚えられたとしても、どうやって棒読み感を無くすかとか、そもそも容姿をどうするか、とか他にもたくさん考えなくちゃいけないことがある
S
考えごとをしながら歩いていると、反対側からすごい勢いで走ってくる人が見えた でも、気づいたときには遅かった
S
ぶつかった衝撃で俺はそのまま ー 階段から落っこちた
S
短めな階段だったので幸い重症ではなさそうだったが、右足首がひどく痛む
S
手すりを頼りになんとか保健室へ向かう
保健室の先生
S
ガラガラガラ…ピシャッ
S
右足首を押さえながら、ベッドに腰を下ろす 当然こんな朝早くから保健室を利用する生徒なんていなくて、しーんと静かだ
S
足首を押さえながら、思わずあっ、と声を出してしまった
なぜか右足だけ上履きを履いていなかった。
S
多分取りに行った方がいいんだろうが、足痛いしめんどくさいしで気がすすまない
S
今日は早く起きたせいか、いつもより眠かった そして、そのまま眠りに落ちようとした
N
扉に視線を移すとないこがいた
S
N
S
ないこが左手に上履きを持っていた
N
S
ラッキー…自分で取りに行く手間省けたわ、完璧すぎてちょっと腹立つけどこの瞬間はないこに感謝した
S
N
は?と口に出しそうになった。
いやいくら足が痛くても自分で履くくらいできるし、なんならまだないこには怪我したこと説明してないし。
N
上履きを持ったままないこが近づいてくる
そして俺の目の前で片膝をつく その姿勢に、思わずドキッと心臓が跳ねた。
…いや、近っか。
N
すっ、と言われた通りに足を出す
俺とないこの距離がほんの数十センチになる
いや、ほんとに何してんの俺ら。
男子高校生相手に足痛いくらいでわざわざ上履き履かせるないこもないこだし、それに抵抗しない俺も俺だ。
ないこの指先が俺の足に触れる
N
S
いや、本当に何言ってんの。 確かにこいつは本物の王子に見えなくもないけど、俺は ー どう見てもシンデレラには見えないだろう。
N
S
本気で何考えているのか分からない。流石に冗談だよな、などと思考を巡らせる
N
あぁ、そういうことか。 そういう提案だとまた何とも拒否しずらい。もし拒否したら、自分一人で完璧にできる、って宣言してるみたいで。
S
朝約束した通り、俺たちはないこの家で劇の練習をした。 朝のときみたいに変な冗談とか言ってこなくて、ごく真面目に練習をした。 ないこはいろいろコツとかを丁寧に教えてくれた。 そして、今日だけじゃなくて、あれから何回かないこの家に行き、練習をした。
今までほとんど関わりがなかったのに、急に接点が増えた俺と生徒会長。
もしかしたらすぐにでもあのとき言っていた"欠点"が見つかるかも、と思っていたが、彼はずっと王子で完璧なところしか見せなかった
そんなことを考えながら練習をこなしていたら、いつの間にか文化祭は明日に差し迫っていた。
S
そう願いながら眠りに落ちた
コメント
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めっちゃ尊い…!