未央
よ、悠音。

今日、俺は、「話したいことがある」と、悠音に呼び出されていた。
悠音は、俺の数少ない友人であり、めっちゃ良い奴だ。
悠音
悪いな、急に呼び出しちゃって。

未央
いやいや、全然。

未央
…珍しいね、話したいなんて。

悠音
そうかもな。

悠音
悪いが、未央。

悠音
俺の話が終わるまで、黙って聞いていて欲しい。

未央
お、おう。

いつになく真剣な悠音に、こちらもなぜだか背筋が伸びる。
悠音
あと…

悠音
どうか、怒らないで欲しい。

悠音
最近、色々失敗しててさ。

悠音
仕事も上手くいかないし、何やっても劣ってるように感じるんだ。

悠音
生活しててもドジばっかで。

悠音
この前なんて、大事な資格取る試験、落ちちゃって。

悠音
はは…こんだけ不幸続きだと笑けてくるよな。

未央
…………

悠音
で、さ。

悠音
なんでこんなに俺が劣ってるのか考えたんだ。

悠音
………

悠音
……それは、お前が主人公だからだ。

未央
……

悠音
友達の俺は、お前より劣ってなきゃいけない。

悠音
お前は主人公だから才能があるけど。

悠音
…友達の俺は何も無い。

未央
…おまえ……っ!!

俺は思わず、悠音の胸ぐらを掴み、殴りかかろうとした。
悠音
…怒らないでって言ったじゃないか。

悠音
まだ、話の本題じゃない。

怒りの気持ちがふつふつと湧いているが、それを無理矢理押さえ込み、手を離した。
悠音
…俺が愛される世界はここにはないんだ。

悠音
神様はお前のこと見てる。

悠音
…だから、お前なんて居なければ、俺の事見てくれたのかなって、思ったんだ。

悠音
主人公はお前だから、お前がいなくなれば、俺が主人公に…なれたのに。

悠音
…主人公になれたなら…才能があったら良かったのに………。

悠音
…ごめん、こんなこと…思って。

悠音
ほんとに、ごめん……。

悠音
わかってるんだ、ダメだって。

悠音
でも、どうしても、才能があるお前が、羨ましくて。

悠音
同時に妬ましいんだ。

そう話しながら、ボタボタと涙を流す友人に、なんて声をかければ良いのか分からなかった。
辛そうになく親友を、ただ抱きしめることしか出来なかった。