ゆっくりじっくり

着いて来てしまった…

本当にいいのか…？

あんな急にきた奴のことを信じられる訳がない

風呂…

あまり入ったことがない

家ではそんなのさせてもらえないから

少し不安だ…

そうでもしないと怖くて仕方ない

この優しい顔したやつが

何考えてるかなんてわからないだろ

俺はこいつらを守るんだ

あんな汚いやつから

絶対守ってやるんだ

取り敢えず全員寝かせてきた

上の2人はベッド

ほか3人は布団を敷いてその横で

飯食わせて、歯磨かせて…

子供の相手って疲れるなぁ、

俺は…

12:30

いつもは仕事をして帰ってくるからもう少し遅い

今日合わせて3日間

戸惑う課長からぶん取った有給のお陰で早く寝れそうだ

がたんっ

がちゃ…

体操座りで縮こまるいるまくんが居た

めっちゃ睨んでくるじゃん…泣

苦しそうな顔をする

彼の頭を優しく肩に抱き寄せる

泣きながらゆっくり、沢山話してくれた

今までの苦悩や我慢、楽しかったこと

毎日絶え間なく続く暴力から弟達を守っていたこと

守れなかった日の夜に

止めどなく溢れる涙と自己嫌悪のこと

その傷が今日染みたこと

人を信じられる心理状態じゃないこと

そのことへの謝罪

そして、

弟達を守りたいという一番の望み

いいお兄ちゃんだなぁなんてしみじみ思う

そう残してそっと寝かせた

あぁ、まただ

最近どうも夢見が悪い

早く寝ても、遅く寝ても

何処でどうやって寝てもずっとこの夢

顔の見えない黒い塊に虐められている俺

もう忘れられたと思ってた

でも、

そんな簡単に解放させてはくれないんだな

この見ることしか出来ない無力感

近くで聞こえる鈍い音

思い当たる全ての嫌な感情が湧き出てくる

そうやってただ時間が過ぎる

最後には

彼奴が此方を見て笑うんだ

2:30

まただ

時間が経たずとも起きてしまう

呼吸を落ち着かせる

俺はこの時間が一番嫌いだ

絶え間ない自分への嫌悪感

そして凄まじい頭痛に襲われる

嫌な考えが頭にこびりついて離れない

あの子達を拾ったのは本当に彼らを思ってなのか？

俺の唯の自己満じゃ？

先程のように

見てることしか出来ない無力な自分を

無理矢理引き剥がそうとしているだけじゃないのか？

本当にあれは夢なのか？

俺の本心を映し出してるだけなんじゃないのか

あぁ、駄目だ止まらない

嫌な思考も、汚い涙も

目を瞑ったらまたあの夢を見る

何も出来ない俺は眠ることも許されないらしい

必死に涙を押し込む

変われない自分への嫌悪感と一緒に

がたんっ…

こさめ君が階段から顔を覗かせていた

頭を抑えていた手を退ける

ゆっくり、優しく背中を叩く

流石子供、寝るのが早い

頭痛もマシになって来た

にしても…

あったかいなぁ…子供って

こうなってしまってはもう何も出来ない

寝てみるか…