次の日から、私の"日常"は崩れ始めた。
スマホを開くと、知らないアカウントからの通知が何件も続いている。
「今日、○○駅にいたね」「今朝の服、白似合ってた」
どれも赤くんの口調と似ていた。
だけど名前は違う。アイコンもばらばら。
まるで彼が、何人にもなって私を囲っているみたいだった。
怖くて、担任に相談しようとした。
けれど_
担任 。
橙さん、最近赤くんと仲良いんだって?
担任 。
あの子、信頼できるよねぇ
担任の先生は、にこやかにそう言った。
もう彼は、周囲に「優しい彼氏」みたいな顔をして、私の味方のふりをしていた。
逃げ道が、どんどん塞がれていく_
放課後。
私はスマホを開き、通知アプリで彼をブロックしようとした。
でも_出来なかった。
なぜか、設定がすでに変更されていて、通知をオフにすることすら出来ない。
赤 。
俺がね、ちょっとだけ直しておいたんだよ
後ろから、いつの間にか現れた彼が、そう囁いた。
赤 。
君のスマホ、ロック甘いんだもん。
赤 。
ちょっと弄っただけで、何でもできる。
橙 。
……なんで、そんなことするの?
赤 。
だって、君の全部が欲しいから
彼は、さらりと、当たり前のようにそう言った。
赤 。
君が何を考えて、誰と話して、どんな夢を見てるか。
赤 。
全部、全部、俺だけのものにしたい
そう言って、ポケットから私の写真を数枚取り出した。
通学中のもの、寝ているような角度のもの。
_いつ、どこで撮られたのか、私にはわからない。
赤 。
愛してるって、そういうことでしょ?
その笑顔は、完璧な仮面のように美しかった。