春花
ばあちゃん元気?今年の夏休みに、ばあちゃん家に行くね!
ばあちゃん
春ちゃん久しぶりだね、待ってるよ~
私は毎年夏休みと冬休みには必ず家族とばあちゃん家に行っている。
いつもばあちゃんに会えるのが楽しみだった。
そして、夏休み。 私はばあちゃん家に着いた。
春花
ばあちゃ~ん!
ばあちゃん
おやまぁ、遠くからご苦労様
ばあちゃん
中へお入り
ばあちゃん
今日ねぇ、じいちゃんが皆が来るからって買い出しに行ってね、お蕎麦を買ってきたの
ばあちゃん
だから今日の夕御飯はお蕎麦だよ
春花
お蕎麦?!やったぁー!
ばあちゃん
春ちゃんは本当に昔からお蕎麦が好きだよねぇ
お母さん
たしかに春は蕎麦は好きだけど、家やお店では食べないのよ
お母さん
春はばあちゃんのお蕎麦が好きなんでしょう?
春花
うん!
ばあちゃん
ありがとねぇ
夕御飯
春花
美味しい!
春花
ばあちゃん!美味しいよ!
ばあちゃん
春花
ばあちゃん?
ばあちゃん
うん?
春花
どうしたの?
ばあちゃん
なんでもないよ
春花
なら良かった!
夜中
ばあちゃん
…うぅ
春花
春花
ん…?
私はばあちゃんの声で目が覚めた。
春花
ばあちゃん?
ばあちゃん
…うぅ…うぅ……
春花
大丈夫!?
お母さん
お母さん!大丈夫なの!?
お母さん
救急車呼ぶわね!
病院
ばあちゃんが救急車で病院へと運ばれて行ったっきり、ばあちゃんと会えていない。
するとそこへお母さんが帰ってきた。
お母さん
春…ばあちゃん、もう最期だって。
春花
え!?
お母さん
癌が転移しちゃったんだって
お母さん
もう助からないみたいよ
春花
そんな…
あまりに急だった。
私は、これが現実ではなく夢だということを自分に言い聞かせた。
だけど、夢ではなかった。
病院
春花
ばあちゃん!
春花
ばあちゃん!
ばあちゃん
は…る…ちゃん……
春花
ばあちゃん!大丈夫?
ばあちゃん
大丈夫…よ…
ばあちゃん
心配かけてごめんねぇ…
春花
ばあちゃん、死んじゃうの?
ばあちゃん
死なないよ…
ばあちゃん
ばあちゃん、春ちゃんともっと…お話しがしたいもの…
春花
ばあちゃん…
ばあちゃん
春ちゃん…
ばあちゃん
元気でいるんだよ…
春花
ばあちゃん!ばあちゃん!
その後、ばあちゃんは静かに息を引き取った。
私は、泣いた。
涙を流して、声を出して、声が枯れるまで。泣いた。
気が済むまで泣き終えた後、私はばあちゃんが最後に作ってくれたお蕎麦の味を思い出した。
あの味はばあちゃんが作ってくれた以外に食べたことのない、ばあちゃんの味だった。
私が最初に好きになったもの。
それは、ばあちゃんの心からの愛情、そのものだった。
もう一度あのお蕎麦が食べたいな。