バスの中で見るあの人の、
名前も、学校も、知らない。
だけど、私は恋をしてしまった。
それは、1年前のこと。
ー1年前ー
しおり
はぁ、はぁ、、
しおり
や、やばい
しおり
バス、乗れるかなーー
しおり
ギリギリ間に合うな!
これなら!
これなら!
プシュー
しおり
ふぅ~....セーフ!
しおり
....って、言っても、
しおり
満員過ぎるよなーこれ。
ガッタン
しおり
わ、わっ!
しおり
....っ、あ、あれ?
ゆうま
大丈夫ですか?
しおり
あ、はいっ!
しおり
すみませんっっ!
ゆうま
大丈夫なら、良かった。
これが、私と彼の出会いだった。
しおり
ふぅ~。今日は、余裕だな
しおり
席も座れたし!
しおり
....って、言っても、
満員だけど。
満員だけど。
ドンッ
しおり
わっ!
しおり
だ、大丈夫ですか?
ゆうま
は、はい。
ゆうま
こちらこそ、すみません。
しおり
って、ん?
しおり
き、昨日の!?
ゆうま
あ、あぁ、どうも。
しおり
い、いつも、このバス使ってるんですか?
ゆうま
あ、はい。このバスですね
しおり
私も、毎日このバスです!
ゆうま
じゃあ、明日もなんだね。
しおり
もちろんっ!
ゆうま
あたりまえか笑笑
しおり
笑笑
私は、毎朝この、 何気ない会話が楽しみだった。
しかし、ある日から、
彼を見なくなった。
しおり
あの人....見なくなったな....
しおり
はぁ....
しおり
....私、好きだったな。
しおり
あの人のこと。
ー1週間後ー
しおり
はぁー....
しおり
今日も来ないのかな....
ドンッ
しおり
わ!
ゆうま
すみませんっ
しおり
あ、大丈夫です。
ゆうま
そうですか。なら、良かった。
しおり
....え、?!
しおり
う、うそ。
しおり
ま、また、会えた。
ゆうま
久しぶりだね。
しおり
ど、どこ行ってたんですか?
ゆうま
あ、、ちょっとね....
しおり
....え、あ、はい....
ゆうま
....
しおり
....
ゆうま
あ~~もう、言うよ!
しおり
え?
ゆうま
お、俺、
ゆうま
引っ越すんだ。
しおり
....え、
ゆうま
その、準備をしてて....
しおり
....そっか、
しおり
あ、あのね、私、
しおり
あなたのこと、何にも知らないじゃん....
ゆうま
....う、うん。
しおり
名前も、学校も、どんな人かも。
しおり
だけどね、私、
しおり
好きになっちゃったの。
しおり
あなたのこと。
ゆうま
え、
しおり
ごめん。こうなることは、わかってた。
しおり
ただ、伝えたかっただけだから....
ゆうま
そっか、ありがとう。
しおり
え、?
ゆうま
俺も好き
ゆうま
だけど、つらい。
しおり
なんで?
ゆうま
このまま付き合っても、
ゆうま
君がつらいよ。
しおり
え、でも、夏休みとか、会いに行きます!
ゆうま
俺、外国に引っ越すんだ。
ゆうま
だから、そんな軽く、
会いに行くなんて、言えないから。
会いに行くなんて、言えないから。
しおり
....そうですね。
ゆうま
だから、俺たちは、これでいい。
ゆうま
名前も
しおり
学校も
ゆうま
何にも知らないままで
いい。
いい。
しおり
このまま、さよなら。
ゆうま
このバスで出会って、
このバスで別れる
このバスで別れる
しおり
楽しかったです!
ゆうま
ありがとう。
しおり
はいっ!
これは、私の「恋愛」の中に 入るのかは、分からないままだ。
彼は、本当にいたのか、
彼は、私が好きだったのか、
それも、分からないままだ。