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キーパーちゃんが甘やかされるだけ。

第2話 - メリーローズが甘い話。1

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2022年09月13日

#ゆめくろ

#夢職人と忘れじの黒い妖精

ノオネ

はぁぁ〜……。よりによってなんで今日なの…。

ぽてぽてとひとつの影がギルドから出てきた。

今日は久々にローズに会える日だったのに…。

最近まともに会えてないからローズ不足〜…。

って、彼女かって…。だって、ローズといるとなんも気にしなくていいから気が楽なんだよなぁ…。

エマ

はぁ…、次はいつかな…

がさごそとキーパーズボードを鞄から取り出した。次の瞬間、肩が誰かとぶつかる。

エマ

っ…？！

エマ

ぁっ、ご、ごめんなさい

同僚キーパー

あ、いえ、こちらこそ…って、あれ？

同僚キーパー

お疲れ様！こんな時間まで仕事ですか？

エマ

あ、お疲れ様です。
はい、ちょっとトラブってしまって…

同僚キーパー

そうだったんですね

同僚キーパー

あ、そうだ。でしたら、この後少しだけ時間ありますか？

エマ

え？
あ〜……

どうしよう、もう帰りたい気持ちが強い。それに…

同僚キーパー

ちょっと付き合ってもらいたいんですが

エマ

ぅ〜ん……っ

この人ちょっとしつこくて苦手なんだよな…。

エマ

…。ごめんなさい、今日は遠慮しておきます。

同僚キーパー

じゃあ、明日とかはどうですか？

エマ

えっ？

エマ

いや、えー…っ

エマ

あー…、明日はちょっと溜まってる仕事があって

同僚キーパー

…じゃあ、どっか空いてる日とかあります？

あー、どうしよう…。

エマ

えーっと、今日はもう遅いですし、予定もまだはっきりと分からないので、このお話はまた今度でいいですか？

どうにかこの場を切り抜けるために、変な誤解を生まないような言葉を手繰り寄せる。

同僚キーパー

……

エマ

…？

エマ

あ、あの、

同僚キーパー

あの、僕、前々から思っていたことがあって

エマ

はぁ…？

同僚キーパー

君って、すごく可愛いよね

エマ

……

エマ

？？

予想もしていなかった言葉に彼女のキャパを超え、思考を放棄した。

エマ

…私帰りますね

くるりと踵を返す。しかし、掴まれた腕がそれを阻止した。

同僚キーパー

お願いですっ！
1度でいいんです！1度だけ、あなたと2人だけで話したい…！！

エマ

あの、ほんとに困りますっ…！

現時刻、夜中真っ只中。周りに助けを呼ぼうにも、こんな時間に外を出歩いているものなどおらず、人っ子一人見当たらない。

困り果てていたそのとき、唐突に体が浮遊感に見舞われ、目が眩む。と同時に、よく聞き慣れた声がした。

メリーローズ

はい、ストーップ。そこまで〜

エマ

っ？！

エマ

ローズ…？！

同僚キーパー

あ、あなたはっ…

メリーローズ

おっと、それ以上近づくなよ
どうなっても知らないからな

メリーローズ

つーか、遅すぎ。
いつまで待たせんだよ

エマ

え…？
帰ってていいよって……

メリーローズ

はぁ…、こんな夜に1人で歩かせるわけにはいかないでしょ

同僚キーパー

えっと、お2人はもしかして─

メリーローズ

あ、まだ居たんだ。
何、まだこいつに用あるわけ？

同僚キーパー

えっ、いや…ぁ

同僚キーパー

お疲れ様、また明日…

エマ

あ、お疲れ様です

バタバタと慌てた様子でその場を去って行った。

メリーローズ

……

メリーローズ

ぷ。見た？今の顔

エマ

え？
いや、ローズに隠れてて見えなかった

メリーローズ

ははっ、あの絶望した顔、傑作だな

エマ

…ふふ。ありがとう、ローズ
助かったよ

メリーローズ

……ん

エマ

そういえば、依頼されてた夢香は完成した？

メリーローズ

当たり前じゃん

メリーローズ

…この日に合わせて急いで作ったし

エマ

え？

メリーローズ

それより、帰るんでしょ

メリーローズ

送るよ

メリーローズ

はい

スッと差し出された手に目を見開く。

メリーローズ

暗いだろ。アンタ、躓きそうだし

エマ

そ、そんなにまだ疲れてないよ…

メリーローズ

いいから、はい

エマ

…

渋々、彼の手を握った。

手汗、やばい…。

メリーローズ

はは、何、緊張してんの？

メリーローズ

面白い顔してんね

エマ

〜……っ

返す言葉もございませんっ…

俯いたまま頬を膨らませる。

ふと、メリーローズの手が冷たいことに気がついた。

エマ

……

エマ

ごめん、寒かったでしょ？

メリーローズ

んー、そうだな、だいぶ待ったかも

エマ

ごめん……

エマ

中々終わらなくて…

メリーローズ

…ぷ。嘘だって

メリーローズ

アンタってほんと馬鹿正直

エマ

……

メリーローズ

…何、なんかあった？

メリーローズ

元気ないじゃん

エマ

え、そうかな…？

エマ

そんなに元気ないように見えたかな…

メリーローズ

この世の終わりみたいな顔してたよ

エマ

……あ

エマ

ひとつあるとしたら、今日の予定が潰れちゃったことかな

メリーローズ

…オレとの約束？

エマ

うん。だいぶショック受けてた、かな…？

エマ

でも、会えたから結果オーライだね

メリーローズ

……そんなに楽しみにしてたの？

エマ

ローズと出かけるの好きだから

エマ

こう、自然体で居られる？

エマ

って言うのかな、そんな感じ

メリーローズ

ふーん…

メリーローズ

それ、オレ期待しちゃうけど、イイ？

エマ

え？

エマ

ぅわっ…！

グイッと腕を引っ張られメリーローズに体を包まれた。

エマ

ろ、ローズ…？

顔を見上げると、バチリと目が合う。不思議と、その瞳から目線を外せずにいた。

メリーローズ

触れられる距離にアンタが居て、拒否されない。期待しちゃっていいの？

ごくりと生唾を飲む。

エマ

─…っ

メリーローズ

なーんてな、びっくりした？

エマ

……はっぁ…。はは、そ、だよね

溜まっていた息を全て吐き出した。

危なかった…。危うく言っちゃいそうだった…。

メリーローズ

はは、アンタってほんとに騙されないか心配だな

エマ

や、やめてよ…、ただでさえ心臓に悪いんだから……っ

あ、やばい、今の顔見られたらまずい。

メリーローズ

今、アンタ顔真っ赤だろ

エマ

ちょっ、見ないでよ

メリーローズ

いいから見せろっ─…って、……ぇ

エマ

っ……

エマ

ごめん、違うの。これは、目にごみが

言い終わらないうちにボロボロと涙が流れて来てしまって仕方ない。

エマ

ぁっ、ごめん、ほんとに違くて…

一歩一歩後退り、メリーローズとの距離を取る。

メリーローズ

おい

エマ

ほんとに、

メリーローズ

おーい

エマ

違う…っ

メリーローズ

落ち着けって！

メリーローズ

あー、もう、オレが悪かったって…

ぎゅっと再度抱きしめられ、頭をぽんぽん撫でられる。幾分、気持ちが楽になった。

メリーローズ

落ち着いた？

エマ

うん、ごめん…

メリーローズ

じゃ、帰るか

メリーローズ

フォルクスも、そろそろ怒ってそうだし

エマ

…ん

少し歩いてからメリーローズが口を開いた。

メリーローズ

…ねぇ、ちゃんとしておきたいから聞いていい？

エマ

……うん

メリーローズ

アンタって、オレの事好き？

エマ

……

エマ

ぅん……

泣きそうな声で肯定の意を示した。

メリーローズ

あーぁ、泣くなって

メリーローズ

ただ聞いてるだけじゃん

エマ

だって…

メリーローズ

何、嫌われるとでも思った？

エマ

…だって、ローズは『魅了の効きづらい』私が好きなだけであって、『私』は……っ

メリーローズ

……

メリーローズ

は？

メリーローズ

…はは、何それ

メリーローズ

オレそんなに酷いやつに見えた？

メリーローズ

…全然伝わってねーじゃん

はぁ、と深くため息をついた。

エマ

…？

エマ

ローズ……？

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ノオネ

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