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エマ

ローズ?

メリーローズ

結構頑張ってるつもりだったんだけど、アンタにはオレってそんな風に映ってたんだ…

エマ

……?

何か、気に触るようなこと言っちゃったかな…。

メリーローズ

ねぇ

エマ

なに?

メリーローズ

アンタの言う好きって、友達の好き?
それとも、こーゆー好き?

瞬間、ぐっと彼との距離が縮まり、息が鼻にかかる。

エマ

っ……

全身の熱が顔に集まっていく感覚。 頬をなぞるメリーローズの手。 服越しに伝わってくる体温。 全てが彼女の正常な思考を邪魔する。

メリーローズ

…はは。顔真っ赤じゃん

エマ

か、からかわないでっ……

メリーローズ

からかってないよ。オレ、結構マジなんだけど

エマ

ぇ……

メリーローズ

信じてないでしょ、その顔

エマ

……

メリーローズ

言っとくけど、魅了の『効きづらい』アンタが好きなんじゃないから

メリーローズ

そこだけは覚えとけよ

メリーローズ

…勘違いされたままとか最悪だし。どんだけオレ性格悪いんだよ…

エマ

ぅ、

エマ

嘘だ…

メリーローズ

嘘じゃありませーん

メリーローズ

つーか、勝手にオレの気持ち全否定すんなっての

エマ

だって、

エマ

……いやいやいや、ありえない。絶対、あるわけがない…

エマ

ゆ、夢……??

ぶつぶつと1人、頭を抱えて考え込んでしまった。

メリーローズ

おーい

私のことが好き? 信じられない…

メリーローズ

もしもーし

夢…。そうだ、これは夢だ。きっと疲れてギルドでうたた寝しちゃってるんだ。

メリーローズ

ねぇ、聞いてる?

夢なら、ほっぺたつねったら……

メリーローズ

こら

エマ

うっ

メリーローズ

夢じゃねーし、嘘でもないって言ってんじゃん。ほら、痛いでしょ

ぐに、とメリーローズに頬をつねられた。

エマ

い、いひゃい……

メリーローズ

……ぷ、はは。その顔面白いね

エマ

……いひゃぃ

メリーローズ

うわ、何、ごめん、そんなに痛かった?

つねられた頬の痛みに不思議と涙が出てきて仕方がない。

あれほど恋愛感情は化学反応だと、自分に向けられる好意は全て、『魅了』によって作られた偽物の感情だと悲観していた彼から、ずっと待ち望んでいた言葉が聞けたのだ。泣かずにはいられない。

メリーローズ

あーぁ、泣くなって

エマ

だ、だってぇ…

メリーローズ

前にも言っただろ。アンタはオレにとって特別だって

エマ

…でもそれは、魅了が効きづらかったからでしょ?

メリーローズ

最初は確かにそうだった。けどさ、覚えてる?
俺たちが初めて触れ合ったときのこと

エマ

…うん、覚えてるよ

鮮明に覚えている。忘れられるはずがない。あの瞬間、世界でたった1人の彼の『特別』になれたのだから。

メリーローズ

あれからさぁ、誰かと…。いや、アンタと触れ合えるのが本当に嬉しくて

メリーローズ

誰かに触れる感覚、触れられる感覚なんて、とうの昔に忘れちゃっててさぁ…

メリーローズ

あー、こんなにあったかいんだなぁ、とか思ってたら毎日が楽しくてさ

メリーローズ

…ん、はは。何、なんでアンタがそんなに辛そうなの

彼の気持ちが完全に理解できるわけじゃないけれど、『魅了』という孤独がどれだけ辛いものなのか、キーパーという仕事をしている中で痛いほど目に見てきたのは確かだ。

だからこそ、彼の気持ちはきっと自分に傾くことはないとそう思っていた。

エマ

……ローズは偉いね

メリーローズ

……は?

エマ

今までずっと孤独に耐えて、自分から人と距離を置くようにしたりもしてさ。ずっと独りぼっちで

メリーローズ

……言っとくけど、同情とかはいらないから。それと、オレはもう1人じゃない。夢紡ぎのみんなが居て、アンタがいる

エマ

……

エマ

うん、そうだね

……。

けれど、それでもひとつ取っ掛かりが消えないのは彼の『魅了』のせいでもあった。

エマ

……ねぇ

メリーローズ

何?

エマ

どうしたら、この感情が魅了によるものじゃ無いって証明できる?

メリーローズ

…はぁ?

メリーローズ

それは前に証明されただろ

メリーローズ

アンタはオレが直接触っても魅了の影響を受けないんだから

エマ

それは、そうなんだけど…

メリーローズ

……。はぁ…

メリーローズ

じゃあ、はい

手を差し出され、目をぱちくりと瞬かせた。

メリーローズ

手、繋いで帰ろ

エマ

…!

エマ

うん!

メリーローズ

あー、大分遅くなっちゃったなぁ
フォルクス怒ると面倒臭いんだよな…

エマ

黙って出てきたの?

メリーローズ

いや、そういうわけじゃないけど

エマ

じゃあ、門限…とか?

メリーローズ

いや、だから…。アンタから仕事が終わらないって連絡来たときから、ずっと待ってたわけ

エマ

あ、そうなんだ

エマ

……え?!!

エマ

帰ってなかったの?!

エマ

ごめん、寒かったでしょ…?!

エマ

変な人に絡まれなかった?!

矢継ぎ早に言葉を続けると、メリーローズが小さく吹き出した。

メリーローズ

心配しすぎ

メリーローズ

前にも言っただろ。逃げ足と腕っぷしには自信があるって

エマ

それでも心配だよ…

メリーローズ

大丈夫だって、気をつけるから

エマ

……

メリーローズ

それに良い暇つぶし相手もいたしね

エマ

それって…

メリーローズ

そ、オレの魅了に引き寄せられたやつら

メリーローズ

ご飯奢ってもらったりしたかなぁ

エマ

……そっか

もやもやした感情が彼女を包んだ。

メリーローズ

夜はいいね、静かでさ

エマ

…え?あ、うん、そう、だね…

メリーローズ

何かを察したであろうメリーローズの口角が、意地悪そうに上がった。

メリーローズ

……アンタもしかして妬いてんの?

エマ

え?!

メリーローズ

やっぱそうなんだ

メリーローズ

はは、可愛いね

エマ

?!

エマ

っ…!!

エマ

〜…!!!

唐突のことに言葉が出てこない。 体の熱が一気に顔に集まる感覚。

顔が熱い…。

メリーローズ

茹で蛸じゃん

エマ

見ないで!

うぅ…、変に意識しちゃっていつも通りに出来ない…。

メリーローズ

アンタ、手汗やばいじゃん

エマ

あ、ご、ごめん…

メリーローズ

いいよ、別に気にならないし

エマ

っ……

メリーローズ

…何、どうした

エマ

ぃ、いや、ちょっとまだ、頭が追いつかなくて…

エマ

ごめん…。ローズの前だと自然体で居られるとか言ってたのに…

メリーローズ

何、そんなこと気にしてたの?

エマ

そんなことって、大事なことだよ

メリーローズ

…ふーん

メリーローズ

でも、それってオレのこと意識してくれてるってことだろ?

エマ

うっ…、そんなに直球で言われると…

メリーローズ

違うの?

エマ

いや、そうだけど…

明らかにしょんぼりとして見せた。わざとだと分かっていても何処か良心が痛む。専らメリーローズに弱い彼女である。

エマ

うぅ…、ローズ絶対面白がってるでしょ!

メリーローズ

アンタの反応が面白いからね

にこりとはにかんだメリーローズの顔が飛び込んでくる、

その顔はずるい…!

メリーローズ

ほら、早く帰んぞ

エマ

…ぅん

体の火照りが突き抜けていく夜風によって攫われていく中、彼と繋いだ手はいまだに熱が冷めずにいた。

キーパーちゃんが甘やかされるだけ。

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続きありがとうございます! 最高です!

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