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三郎くん

三郎

なんだい、主(あるじ)

ピエールさんのチョコレートケーキは、これがラスト

三郎

だね

ということは、これが僕が…

三郎

いやいや、ここはこれを買ってきた俺のでしょ?

そう言って手元にチョコレートケーキの乗った皿を引き寄せる。

え?これは僕へのバレンタインチョコでしょ?

主は”スルスル”とチョコレートを手元に引き戻す。

三郎

バレンタインチョコは女性から男性に、でしょ?

それは古い考えだと思うけどなぁ

三郎が引き寄せようとした皿を、指先で押さえる。

ほほぉ…つまり、この主様を差し置いて

自分が食べようっていうんだ?

三郎

だいたい、主は今、チョコレートケーキを二個も食べたじゃないか

三郎くんだって二個食べたでしょ?

”ギリギリ”と皿を引っ張る指に力を入れる。

それに、体は若くないんだから

そんなに食べたら明日胃もたれしちゃうよ

三郎

不死身なんで関係ないでしょ

ぐぬぬっ…

引き下がらないんだね

三郎

そりゃあね

三郎

このケーキは年に一回

三郎

この時季しか食べられないモノだからね

…わかった

ならば、戦争だ

主が低い声で言うと、

三郎はケーキの乗った皿から手を離して後退する。

その行動がコンマ一秒でも遅ければ、

脳天から巨大な串が三郎を貫いていたことだろう。

顕現(けんげん)せよ、羅那(らな)、呂那(ろな)

主が針を飛ばして言うと、

針は二匹の狼となって三郎に襲い掛かる。

三郎

形、崩せ

三郎が札を飛ばすが、

それを”ヒラリ”と二匹は避ける。

札が貼りついたクッションが破裂音を上げて、

辺りに綿を飛び散らせた。

足元に噛みつこうと滑り込む狼を、

三郎は飛び上がって避けようとしたが、

その肩に針が刺さる。

三郎

しまっ

捻じれろ

三郎

うわっと

三郎の体が空中で己の意思に反して

捻じれる。

三郎

(解呪っ)

しかし、

間に合わず

そのまま床に叩き付けられる。

いや、それだけでは済まない。

体の捻じれは止まらない。

関節や筋肉が”ギチギチ”と嫌な音を立てる。

三郎

解……呪っ

”パチンッ”と刺さっていた針が弾けて消える。

が、

三郎

嘘っ

二匹の狼が三郎の首と腹に噛み付く。

三郎

炎上!…這いずれ!

真っ赤な炎に包まれる狼。

ニヤニヤと笑みを浮かべていた主の後ろから伸びる、

黒い影。

!?

その細い両肩を掴んで、

影は主を床に叩き付ける。

うわっ

黒い影が開けた口から

大きな杭が吐き出されるが、

”バチンッ”と音を立ててそれが主の目の前で止まる。

んなっ

しかし、

黒い影に足を掴まれ、

あっさり逆さに吊られる。

もぉ!散

三郎

させるか!千切れ!

え~!ひどい!!

三郎

はぁ…ケーキ一個で何やってんだか…

三郎は首と腹から血を垂らしながら、

呆れたように呟き椅子に座ると

フォークを手に取る。

視線を床に落とすと、

そこには手足を千切られた主が

頬を膨らませてこちらを睨んでいた。

三郎

今度また買ってくるからさ

そして、

ケーキを口に入れた瞬間、

主は”ニヤリ”と笑う。

三郎

え…あ…うぐっ

手が震え、

フォークが滑り落ちると、

三郎

ぐふっ

三郎は口から血を吐き出した。

まったく、油断も隙もないよねぇ

いつの間にか元の姿に戻った主は、

床に転がって

喉元を押さえ

血を吐き出し続ける三郎を

冷ややかな目で見つめる。

ではでは、僕はこれが美味しく頂くよ

主は嬉しそうに笑い、

ケーキを口に運んで

実に美味しそうな顔をする。

三郎

ある…あるじ…

床を這いずりながら近づいてくる三郎に、

主は”し~らないっ”と言い放ってケーキを頬張る。

二人しかいないのに

ケーキを五個しか買って来ない三郎くんが悪いんでしょ

三郎

ある……冷蔵…庫…

なに?

三郎

冷蔵庫…ごふっ

冷蔵庫?

主はケーキを平らげると、

椅子から”ひょい”と飛び降りて冷蔵庫を開ける。

そこには、

高級そうな黒い箱が一つあった。

これは?

三郎

ピエールの……バレンタ…イン…限定

……もしかして、僕に?

血を吐きながらも、

三郎は頷く。

え~~ありがとう!嬉しい!!

主はスキップしながら三郎の元に戻ると、

三郎の頭を軽く二回叩いた。

すると、

ピタリと吐血が止む。

もぉ、それならそう言ってよぉ

三郎

ごほっ…ごほっ

三郎

ごめんごめん

三郎

いやはや、サプライズも命がけだ

不死身なんだから関係ないでしょ?

三郎

それもそうなんだけどね

そして、

二人は楽しそうに笑いながら

チョコレートを仲良く食べたのだった。

引きこもりの呪術師【三郎編】

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