颯介
くわぁ〜、この坂きっつ!なぁ、もう自転車押してかね?

凛斗
そーすけ下半身弱すぎ。それでまぁよくもあそこまで盗塁できてたね?

颯介
それはま〜、タイミングを計る能力がありまくってたってことだな、うん

颯介
にしても、なんでうちの市はこんな丘の上に体育館作っちゃうかね?

凛斗
さぁ、たしかに面倒だけどね〜

凛斗
あとそーすけ、ちゃっかり自転車降りてるから抜かすね

颯介
は、おいちょっ、待てって!

颯介
はえぇよ〜!

颯介
お前1人で体育館乗り込んだら、それこそ変な目で見られるぞぉ〜!

凛斗
……はやくしてそーすけ

颯介
へっ、やっぱり麗紗とそのお仲間さんたちの目は気になりますか!

凛斗
絶対見つかんないように、迷惑かけないように見るつもりだし…じゃなくて!口動かす暇あったら足をフル回転させて!

颯介
へいへ〜い、ただ今

凛斗
はい、行くよ

颯介
……

凛斗
……

颯介
…なぁ、ちょっと思ったんだけどさ

凛斗
ん?

颯介
りんちゃんは、嫌になんねーの?こんだけ本人からも、周りからもキツい目線浴びて

凛斗
……やだよ

凛斗
麗紗本人の圧はどうしても感じるし、

凛斗
ほかの奴らはそんなの御構い無しに好き勝手冷やかすし

凛斗
それならいっそ、妨害してくれた方が嬉しいのに

颯介
冷やかされるよりも?

凛斗
うん

颯介
なんでよ?好きなんじゃねーの?

凛斗
……なんかさっきから言ってることがコロコロ変わってるけど、そこは置いとく

凛斗
よくわかんないんだ、最近

凛斗
好きだよ、俺は麗紗のこと。それはずっと変わらない

凛斗
でも、俺がそう思い続けてるせいで、麗紗にまで被害が出ちゃってる

凛斗
いわれのない冷やかしを受けるのって、多分辛いと思うんだよね

颯介
ほぉ〜お、りんちゃんにしては珍しく女心がわかってんじゃん

凛斗
…それ語ってるそーすけは女心わかってんの?っていう質問も、今は置いとく

凛斗
とにかく、好きなのは好きだけど、そのせいで相手が嫌な思いしてるのってなんか違うと思う

凛斗
だったら、もう俺の意思が自由にならないように野次馬の奴らが麗紗を徹底隔離してくれないかなって、

凛斗
最近思ったりもする

颯介
ふ〜ん

颯介
じゃあ、俺が妨害してやろうか

凛斗
え?

颯介
だって、俺だって冷やかしの一員だろ?

颯介
今みたいに『麗紗たちのこと気にするんだ〜』とかさ

凛斗
んー

凛斗
たしかに、よくそーすけは麗紗のことで俺に言ってくるよね

凛斗
というか回数と頻度で言えば、そーすけがダントツかも

凛斗
でも、なんか違う

凛斗
そーすけは、めっちゃ冷やかしてくるけど、話を聞いてくれる

凛斗
俺に強引なアタック敢行させようとするけど、麗紗に迷惑かかることは1つも提案しないし、やらせない

颯介
…

凛斗
だからそーすけには、ここまで一緒にいてもらえてるんだよ

颯介
りん、ちゃん……

凛斗
でも、これってすごい不思議だな

颯介
ん?

凛斗
普通に考えたら、こんなうるさくてグイグイくるやつ、絶対信用しない

颯介
え、りんちゃん…?

凛斗
俺の最近の悩みよりも数段、わかんない問題だこれは…

颯介
なんだよもー、なんか感動しかけて損した!

凛斗
この程度で感動してたら映画観るたびに洪水になるじゃん

颯介
うっ…、なぜそれを……?

颯介
門外不出の情報としているはずだぞ………!

凛斗
あ、図星なんだー

凛斗
なんか笑える

颯介
んだとこのヤロー!…とか言ってるうちに、着いたな体育館

颯介
話してたらあっという間だったわ〜!

凛斗
たしかに

颯介
うっし、中入るか!

凛斗
はぁ〜、ゆっくりね?

颯介
もー、ここまできて怖気づいたか!

凛斗
…怖くねーし

颯介
はは、行くぞ!

凛斗
うん

颯介
うっわ、めっちゃ混んでんじゃん!

凛斗
そりゃあ、俺らと違って今日この試合は市大会の決勝戦だからね

凛斗
この試合勝てば県のシードだ。あるとないとじゃ大違いだよ

颯介
そーなのかー、俺らには縁のない話だ……ん?

颯介
りんちゃん、ちょっと!

凛斗
うわっ、何すんだよ!

颯介
ちょっとトイレ行きたくなっちゃって!場所教えて!

凛斗
え〜、なんだよそんなこと〜?……あ、

凛斗
(女バスのみんなが集まってきた…)

凛斗
(このすぐ近くが、うちのミーティング席だったんだ!)

凛斗
(今はちょうど館内図と自販機の陰に入ってるからみんなから俺は見えないけど、)

凛斗
(そーすけが手を引いてくれなかったら、見つかってた…)

颯介
…ん、あーこれか、トイレの場所!この館内図わっかりにくいなぁー

颯介
あ、りんちゃん悪い、わざわざ引っ張っといて見つかったわ

颯介
んじゃ、ソッコー行ってくるから、絶対ここ動くなよ!この人混みだと、ちょっと動いただけで流されちゃうから!

凛斗
よくこの人混みをあの速さで抜けてくな…さすがのフットワークだ

凛斗
…さて、俺は

颯介
うぃ〜っす、おまたせ!

凛斗
ん

颯介
お、なになに自販機で買ってくれたの?今トイレ行ったばっかなのに?

凛斗
…ずいぶん短いトイレだったから、いいかなって

颯介
……いやいや〜、ちゃんと行ったって〜

凛斗
はいはい

颯介
あ〜やっべ、俺がトイレ行ってる間にコートに近い観覧席取られちゃった!

颯介
だいぶ離れたとこで立ち見するしかねーなー

颯介
選手との距離あるから、見えづらいかもね〜試合

凛斗
……まさか、そこまで考えて、

颯介
ん?なんか言った?

凛斗
…いや、なんでもない

凛斗
俺は経験者だし、バスケの試合なら遠目でも動きわかるよって言いたかったの

颯介
あーね!

颯介
あ〜、こっからじゃ気付かれないな〜、せっかくみんなに手ぇ振ろうと思ってたのに

凛斗
(やっぱ、見つかんないようにしてくれてるんだ…)

凛斗
……ジュース、一本で足りる?

颯介
お?どーしたりんちゃん、今日はやけに気前がいいね!

凛斗
なんとなくね

颯介
あっ、始まるよ、試合!!

颯介
やば、序盤からうち押されてね!?

凛斗
大丈夫、相手のパスコース潰して、逆に無理やりドリブルさせてるのはうちの方

颯介
すげーな、パスコースとか、そんな試合全体のこと見えんの?

凛斗
一応、バスケ部だからね…ほら、奪ったらすぐカウンターだ

颯介
おおっ、すげーすげー!

颯介
あ、点とった!先制だ!!

颯介
すげーな、りんちゃんの言った通りだよ!

凛斗
だろ?

凛斗
(あれ?)

凛斗
(なんだろこの気持ち)

凛斗
(見られたくないのに、見られたい)

凛斗
(いつもは冷やかしてくる奴らがいるから麗紗の近くに行けないけど、今はそいつらもいないんだ)

凛斗
(なら、それなのに近づかないのは、それでいて近づけないのはなんでだ…?)

凛斗
(なんなんだよ一体、これ……)

颯介のさりげない優しさにほぐされた心に、初めての感覚を覚えた凛斗。果たして、彼の心は一体……?
お読みくださりありがとうございます!いいねくださると幸いです!
きみとずっと1〜4までも確認&いいねよろしくお願いします!