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ある夏の日の昼下がり、事務所に入るなり一人呟いて、入口付近に置いてあるソファに身を預ける。
いつもならひんやりと冷たいそれも、今の火照った自分の体には冷たさなんて微塵も感じなかった。
未だに太陽が壁越しに自分の身体を照りつけているような気さえする。
今日は元々事務所に行く予定は無かったのだが、近くに用事があり、こんなに暑い中帰るのも気が引けてふらっと立ち寄った。
社員
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ただこの猛烈な暑さからか、社内に人はほとんどいなかった。 いるにしてももうそろそろ帰ろうと身支度をしている人か、急用で必死にパソコンをたたく社員の姿しか見られなかった。
まあ今日はニュースでも最高気温が35℃近く行くなんて言ってたし、わざわざ会社で仕事を済ませようなんて考える人は多分ほとんどいない。
暑さでぼんやりとしている頭でそんなことを考えながら、せっかく立ち寄ったことだし、前に放置したまま片付けていなかった書類を片付けに行こう、と思いついた。
ようやく室温と同じくらいの体温になってきた気がする身体に力を込め、立ち上がり、目的の部屋へと向かって行った。
この日は本当に暑くて、廊下を歩いている間も汗が止まらない。 タオルを首に当てながら長い廊下を進んでいく。 やはり明かりがついている部屋は少なく、物音もほとんどしなかった。
自分が今向かっている部屋も、明かりがついていないのが遠目で見えた。
時折すれ違う人と一言二言交わしながら、今のこの東京の気温を恨めしく思う。
書類のある部屋に着き、早く入って冷房でも付けようと考えドアノブに手をかけたところで、中から声がするのに気がついた。
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電気くらいつけろよー、と言おうとしたところで、その声が通常のものではないことにも気がついた。
C
R
C
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ドアのガラス張りの部分から中の様子が一瞬見え、驚いて思わずその場に座り込んだ。
見間違えかも、とも思ったがそこにいたのは確かに同じ事務所のメンバーで、いつも喧嘩をしているという印象の2人だった。
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ここ会社なんですけど、しかも電気ついてないから一瞬ためらわずに入って行きそうになったわ、と心の中でツッコミを入れた。
そんなことお構い無しにその行為を続ける2人。 立ち上がってこの場を去ろうと思ったが、足音でも出してしまったらどうしよう、と変に緊張して立ち上がれなかった。
でもその反面、見つかりでもしたらまずいな、絶対に気まずいじゃん、なんてヒヤヒヤしている自分もいる。
L
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頭の中がこんがらがっていて、すぐそばに人がいるのにも気がつかなかった。 横から、りうらが声をかけてきていた。 純粋なりうらにこんなところを見せる訳にはいかないし、俺もりうらとこの場に居合わせるのは気まずい。そう思って口パクで戻ろう、と伝えようとした。
りうらはそれを汲み取ってくれたのか、元来た道を戻って行ってくれた。 あの二人に気づかれないように、俺もそっとりうらの後を着いていった。
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暑さのせいか、それとも無駄にいろいろ考え事をしたせいか、急にどっと疲れてとある一室のソファに勢いよく座り込む。
L
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そんな俺を見かねてか、りうらが自販機で買った冷たいお茶を俺に1本渡してくれた。
渡されるなりすぐに蓋を開け、喉に流し入れる。 さっきまでの熱っぽいような、張り詰めたような感覚が一気に抜けていく。
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L
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水分を補給しつつ、りうらに耳を傾ける。
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その発言にぎく、とお茶をこぼしそうになった。
さっき、というのは言わずもがなあの双子のことだろう。 りうらの目にも入っちゃってたか、もっと早く立ち去るべきだったな、と少し後悔する。
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気まずさから、いつもりうらにしているような対応ではない、素っ気ない返事になってしまった。 でもそんな俺の様子は気にせず、りうらは続けた。
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りうらの指摘通り、すぐには立ち去らずに、あそこにはわりといたと思う。 ただ、それを言われると少し恥ずかしい。
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何言ってんだこの赤髪は、と素直に思った。 いやいや、中学生じゃないんだから。そんなこと聞いてどうするんだ、配信のネタにでもするつもりなんだろうか。 その質問には答えず、冷えてきたから冷房の温度を少し上げようとリモコンに手を伸ばした。
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俺が答えないことを肯定と受け取ったのか、話をそのまま進めるりうら。 否定しようかとも思ったが、わざわざ掘り下げるような話でもないかと思い無口を貫いた。
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りうらはそんな俺の後ろに回り、ジャケットを脱がしてきた
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L
一呼吸置いてから言葉を繋ぐ。
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前言撤回。さっきりうらに純粋とかぼやいたが、全然純粋なんかじゃない。 俺が逃げないのをいいことに、自身の欲を満たそうとしてくる。
買ったばかりの冷たいお茶を手にしていたせいか、気温にそぐわない冷えた指先で俺の肌に触れる
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それが心地よくて、もっと触れてほしい、なんて願う。
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さっきは会社で何てことしてるんだ、とか他人に言った癖して、自分も欲が止められずにいる
いや、むしろ会社でだからこそもっと続きを求めてしまうのかもしれない。
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こいつ...いつまで俺があそこから離れなかったことを煽るつもりなんだ。 そんな心の内を込めて小さく睨む。
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その瞬間、何かが俺をつついた
そのままじわじわと中を侵食してくる
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このまま刺激されたらどうにかなりそうで抵抗の声をあげる
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グチュッ、という音とともにさらに広がっていき、奥へと進んでいく
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頭に全身の血液が流れて飲み込まれてしまいそう こいつを止めないと、そればかりに気を取られる
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まだ夜じゃないのに電気が消されてるし、カーテンまで閉められているのであまりよく見えない
おまけに、さっきから視界がゆらゆらしている
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そのまま俺の視界をさえぎるように顔が覆い被せられ、唇が塞がれる
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絡み取られる舌から熱が流れ出てくる 最初に触れられたときはあんなに冷たかった指先も、口内と同じくらいの温度になってきている
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急にりうらの腕によって持ち上げられた身体に気がついて、声が出てしまう
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何?と聞き返す間もなく、さっき飲みかけていた冷たいお茶が俺の頬に当てられる 接しているところからだんだん冷気が伝わってくる
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会社の中に入ったときより体温が上がってるのは今やってることのせいだよ、多分。
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頬に当てていたお茶を引き剥がし、キャップを開けて口に含むりうら それを俺に口移しで飲ませてくる
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絶対に一回で飲む量じゃないそれを、必死に口を開けて飲み込んでいく ただ、やっぱり量が多すぎて口から数滴あふれ出る
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潤ったはずの喉から途切れ途切れの言葉が繋がれる
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俺が飲み込めなかった分を、りうらが舌で舐めとってくる
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とどまっていた衝撃が、再び押し寄せてくる 何度も何度も、内臓が抉られるみたいに
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コクッ、と熱で浮かされている頭を縦に振る
俺から流れ出る白い液体を口で受け止め、さっきやったようにそれを俺の口に伝え入れる
お茶と違って人間が飲むためにつくられた訳ではないその味を、ゆっくりと舌が感じとる
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そんなことを言いながら、りうらが俺の口へあたたかい空気を吹き込んでくる
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そんなもっともらしい、でも不条理なことを口出す
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これ以上温度上げなくていいから、心の中ではそんなことを思ってもりうらは照明のスイッチに手をかざす
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ぱっ、と薄暗いオレンジ色の明かりが灯る その光によってりうらの顔がはっきり見える 多分、りうらの目にも俺の顔が明瞭に映っている
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突起が絶妙なところばかり刺激してくる それに耐えようと全身に力を込めてもすぐに抜けてしまう
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脚を強く持ち上げられて、本当に頭に血が上ってしまいそう その間も動きが止まらない
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そんなこと言われても反射的に反応してしまう身体
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ここが会社であることなんてとっくに忘れて、本能の波に呑まれ続けた
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会社の帰り道、そろそろ夜だと言うのに全然下がろうとしない気温に文句を言う 隣でりうらはくすくすと笑っている
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そう、別にこの時間帯の気温なんて昼頃に比べればマシなはずなのだ しかし、あんなことした後じゃ当然体内から熱が逃げる訳がない。 場所も考えず流れに乗ってしまった自分のことを、今更ながら反省する
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そう。元を辿れば、会社であの双子が変なことをしているからだ ただ自分も同じ手に乗っかった手前、何も口出しできないことにはがゆさを感じる
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初めて告げられた事実にとても驚いてしまう それになんで皆知ってるんだ...というかなんで誰も何も言わないんだ、という複雑な心境だ
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結局まだ資料片付けられてないんだけど、いつ片付けよう、なんてつぶやいた
そんな俺とは対照的に、テンションが高く、鼻歌まで歌っているりうら。
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りうらが上機嫌な理由を聞いて、さらに悩みが増えた
これで俺たちまで噂にでもなったら、本当に困る 次から会社で同じことするとき、噂のこと気にしちゃいそうだから。
コメント
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おっふ… さいこうですわ…❕