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昼間は人間
夜は狼
ある者はこの動物を人狼と呼んだ
とある村の近くにある大きな山
少年ターリンは そこに薪を拾いに来ていた
ターリン
ターリン
ターリン
ターリン
ターリン
ターリン
ターリン
彼の前に現れたのは 白い立派な毛皮の狼だった。
狼は気づいていないのか 沢で水を飲んでいる
ターリン
ターリン
それからターリンは 毎日の様に薪を拾い
あの白い狼を眺めた
眺めていくうちに その狼がメスだということ
毎日日が沈みかける時に この沢に来ることが分かった
ターリン
いつしか彼の頭の中は 彼女の事で埋まっていった
ある日、科学者で師匠のラスターンが 国王に呼ばれたため
しばらく家を留守にする事になった
ターリンは幾らかの食べ物と 毛布を持って沢に来ていた
今までは師匠が心配するので 狼が水を飲んだ後何をするのか 知る事が出来なかった
なのでこの機会にと 前から計画していたのだ
ターリン
ターリン
ターリン
やがて日が傾き始め あの狼がやってきた
ターリン
ターリン
ターリン
もしそこに詩人が居たのなら 『彼女は宝石の様だ』 そう言っただろう
水面から出した顔は 夕日によってオレンジに染められ
濡れた体を振ると まるで周りにダイヤモンドを散りばめた様な
そんな光景を彼は息を呑んで見ていた
その時だった
彼女がコチラを見たのだ
ターリン
動けない
彼女と目が合っている
食べられるという危機感よりも その瞳で見てくれた事に喜びを感じた
彼女はこちらへ走ってきた
思わず目を瞑った
ターリン
恐る恐る目を開けると
彼女は血を垂らしながら コチラを見ていた
口には2、3mはあろう 大きな熊が咥えられていた
ターリン
直感的にそう思った
ターリン
ターリン
とっさに手に持っていた毛布を千切り 彼女の体に巻いた
ターリン
ターリン
彼女は真っ直ぐコチラを見ると 膝の上に頭を乗せた
初めて彼女の温もりを感じた 初めて繋がれたと思った
嬉しかった
その喜びも一瞬で終わった
ターリン
熊だった
熊は彼の体を爪で割いた後 どこかに走っていった
ターリン
意識は途切れ途切れになり ターリンは死を悟った
彼は死の恐怖よりも 彼女を見れない悔しさが大きかった
ターリン
せめて近くに居たいと そう思った
食べて
その一言を残して
彼の ターリンの意識は途切れた
そう言って朝日を浴びて人間になった その狼…
いや、ターリンの足元には 血の水溜りが他の液体によって 薄まりつつあった