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美しき2つのターリン

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美しき2つのターリン

1 - 美しき2つのターリン

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2020年10月30日

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昼間は人間

夜は狼

ある者はこの動物を人狼と呼んだ

とある村の近くにある大きな山

少年ターリンは そこに薪を拾いに来ていた

ターリン

ふんふふーんっ♪

ターリン

ふふんふーん♬

ターリン

あっ、こんな所にキノコがある!

ターリン

これ師匠に持っていったら喜ぶかなぁ

 

ターリン

ん?

ターリン

今何か通ったような……

 

ターリン

彼の前に現れたのは 白い立派な毛皮の狼だった。

狼は気づいていないのか 沢で水を飲んでいる

ターリン

(綺麗……)

ターリン

(こんなに綺麗な生き物が身近に居たなんて)

それからターリンは 毎日の様に薪を拾い

あの白い狼を眺めた

眺めていくうちに その狼がメスだということ

毎日日が沈みかける時に この沢に来ることが分かった

ターリン

(話してみたいなぁ)

いつしか彼の頭の中は 彼女の事で埋まっていった

ある日、科学者で師匠のラスターンが 国王に呼ばれたため

しばらく家を留守にする事になった

ターリンは幾らかの食べ物と 毛布を持って沢に来ていた

今までは師匠が心配するので 狼が水を飲んだ後何をするのか 知る事が出来なかった

なのでこの機会にと 前から計画していたのだ

ターリン

(ここに座っていよう)

ターリン

(あぁ なんだかワクワクしてきたな)

ターリン

(彼女の顔を今までより長く見られる!)

やがて日が傾き始め あの狼がやってきた

ターリン

(来た!)

ターリン

(やっぱりいつ見ても美しい……)

 

ターリン

もしそこに詩人が居たのなら 『彼女は宝石の様だ』 そう言っただろう

水面から出した顔は 夕日によってオレンジに染められ

濡れた体を振ると まるで周りにダイヤモンドを散りばめた様な

そんな光景を彼は息を呑んで見ていた

その時だった

彼女がコチラを見たのだ

ターリン

動けない

彼女と目が合っている

食べられるという危機感よりも その瞳で見てくれた事に喜びを感じた

 

グァッ!

彼女はこちらへ走ってきた

思わず目を瞑った

ターリン

恐る恐る目を開けると

彼女は血を垂らしながら コチラを見ていた

口には2、3mはあろう 大きな熊が咥えられていた

ターリン

助けて…くれたの?

直感的にそう思った

 

ウゥ……ウゥ……

ターリン

待って!

ターリン

今動いたら傷口が開いちゃう!

とっさに手に持っていた毛布を千切り 彼女の体に巻いた

ターリン

……ごめんね

ターリン

僕がここに居たから君は怪我をしてしまった

彼女は真っ直ぐコチラを見ると 膝の上に頭を乗せた

初めて彼女の温もりを感じた 初めて繋がれたと思った

嬉しかった

その喜びも一瞬で終わった

 

グワァァァア

ターリン

うわぁ!

熊だった

熊は彼の体を爪で割いた後 どこかに走っていった

ターリン

ウグゥ……イ…タィ

意識は途切れ途切れになり ターリンは死を悟った

彼は死の恐怖よりも 彼女を見れない悔しさが大きかった

ターリン

僕を食べて

せめて近くに居たいと そう思った

食べて

その一言を残して

彼の ターリンの意識は途切れた

 

 

ソナタの想い、叶えたぞ

 

私はこれからソナタの名を名乗り

 

一生ソナタを忘れない

 

だが、私はソナタの体で人を喰らう

 

それが人を喰らった狼の使命だからだ

 

どうか許しておくれ

そう言って朝日を浴びて人間になった その狼…

いや、ターリンの足元には 血の水溜りが他の液体によって 薄まりつつあった

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