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探偵は黄昏時に

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探偵は黄昏時に

7 - 無理心中未遂と過去 ㊦

♥

29

2024年02月22日

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今から約7年前。

僕がまだ27歳だった頃。

あの日もいつものように、事件解決のために駆り立てられていた。

おそらくその日は快晴で、また殊更難しくもない事件だったのだろう。

もちろん現場に出向いたのは午後4時頃だが、まだ日が沈み切る前に事件は解決された。

出雲治と出会ったのは、その日の帰り道であった。

事件も無事解決され、さあ事務所に戻ろうとしたところ。

何故だか分からないが一人の男が目に入った。

おそらく20歳程度の就活生らしきその男はベンチに腰かけてぼんやりと、慌ただしく動く警察のことを眺めていた。

それで、どういう気持ちでだったか、僕は男に話しかけた。

その時の男の反応は、多分いやでも忘れない。

月見 晴翔

どうしたんですか

僕にしては珍しく敬語を使って話しかけた。

声を掛けると彼はゆっくりと顔を上げて、僕の顔を認識すると少し顔を顰めて、

出雲 治

大丈夫、子供に心配されるようなものでもないから

月見 晴翔

__子供か?僕が?

出雲 治

違うのかい、高校生くらいだと

いくら僕が幼く見られがちだからって、流石に高校生ではないだろう__と、声には出さなかったもののひとり思う。

だから少し揶揄ってやろうと、僕の目に映る彼の印象をそのまま言ってやろうと思った。

月見 晴翔

__そういう君は、22歳で就活に失敗し続けているのかい

月見 晴翔

それに、君は人よりずば抜けて賢い

月見 晴翔

大方、周囲の人間と合っていないんだろう

出雲 治

__!

反応からして、殆ど合っていたのだろうか。

きまりが悪そうに俯いてしまった。

しかし暫くすると彼はぽつりぽつりと喋り始めた。

出雲 治

どうも人と関わるのは苦手な質でして

出雲 治

要らないことまで、言ってしまう

出雲 治

__言うなれば、社会不適合者、ですかね

思っていたよりも思い悩んでいる様子の彼に、過去の僕を重ねてしまった。

その頃は大学だとか、就職だとか、全てが面倒で、どうすればいいのかが分からなかった。

尤も、両親は既に僕が14歳程度の時に亡くなっていて、僕が18になると無情な祖父母たちは僕を追い出した。

それでも幸運なことに僕は18歳の時、今は僕が継いでしまった探偵事務所の元責任者に拾われた。

それからなんやかんやあって大学も行ったし、今は無事に事務所で働いている訳だが。

僕は過去の僕と同じような男を見つけてしまった。

どうしても放っておけなくて、後先を考えないことを口走ってしまったことは、少し申し訳なかった。

月見 晴翔

それじゃあ、うちで働くかい

月見 晴翔

僕は探偵事務所で働いている…と言っても、探偵は僕だけだが

出雲 治

…え?

出雲 治

本気で言ってます?

月見 晴翔

うーん、そうだね

月見 晴翔

これは、ある人の受け売りだけどね

月見 晴翔

探偵とは、人を救うためにあるんだ

月見 晴翔

困っているようなら、力を貸してあげよう

月見 晴翔

尤も、君は賢いし、探偵に向いている性格だ

月見 晴翔

どうだい?面白いとは思わないかな

まくし立てるように喋りたいことを喋った僕に、彼は目を白黒させていた。

まあ、それもそうだ。

失敗続きで、上手くいかない原因も分かっていて、これからどうしようかと悩んでいて、それでいて探偵事務所からスカウトなるものを受けた。

普通はありえない話なのである。

それでも僕は彼を手放すつもりはなかった。

ここでいい人材を見つけられたのはなんとも都合がいい。

つい最近までは元責任者と二人で回してきた仕事も、一人ではなかなか回らない。

それに、彼の目は揺らいでいる。

この突然降ってきた職に就くチャンス。

取るべきか、取らぬべきかで迷っている。

__もうあと一押しなのだ。

月見 晴翔

ね、頼むよ

月見 晴翔

僕は君が思っているほど子供では無い、ちゃんと働いてきた大人だ

月見 晴翔

それに、しっかり仕事も賃金も保証する

月見 晴翔

今人手が足りないんだ、ここは僕を助けると思って、さ?

もちろん嘘は言っていない、とは言っても僕はバイトもしたことがなければサラリーマンとして働いたこともないが。

さて、この言葉なら僕の下についてくれるだろうか、と彼の様子を伺うと、決断した瞳をしていた。

出雲 治

__雇ってもらえませんか

その言葉にほっと息をついた。

月見 晴翔

嗚呼、もちろん

月見 晴翔

君、名前は?

出雲 治

出雲治です、貴方の言ったように22歳の大学生

出雲 治

そういう貴方は?

月見 晴翔

僕は月見晴翔、君より5つ年上、つまり27だよ

出雲 治

……すいません

月見 晴翔

別にいいさ、幼く見られがちだからね

月見 晴翔

これからよろしく頼むよ

申し訳なく思っている様子に、根は大変いいやつなんだと理解した。

かく言う僕もあまり人と関わるのが上手い方ではないが、何となく同類意識で上手くやっていけそうな気がした。

一通り話し終えてみると、少し余計なことまで喋ったかもしれないと思った。

だが、なかなか眞琴も真剣に聞いていたようだった。

宮田 眞琴

へぇ、なんや似た者同士なんやね

宮田 眞琴

だからこんなに晴翔も変わったんか

月見 晴翔

変わったか?

宮田 眞琴

いや晴翔アンタ、ちっちゃい時覚えてへんタイプか?

出雲 治

どんなでした?晴翔さんって

宮田 眞琴

もーそりゃ、あらゆる方面からの敵を作る天才や思てたわ

月見 晴翔

は?お前そんな風に…

出雲 治

あ、そういえば宮田さんて晴翔さんの幼馴染なんですよね?

あからさまに話を逸らした出雲に、ひとつため息をついた。

それを分かって、眞琴も安堵の表情を浮かべている。

宮田 眞琴

せやでぇ、なんや聞きたいことでもあるんか?

出雲 治

いえ、いつから知り合いだったのかなと

月見 晴翔

あー…小学校……?

宮田 眞琴

それくらいやな!中学3年の最初の方に晴翔は祖父母の方に行ったんやったか

月見 晴翔

多分そうな気がするな

月見 晴翔

関西圏から関東圏に来たのはそれだね

出雲 治

へえ……じゃ、関西弁だったんですか?

月見 晴翔

関西人が皆関西弁だと思うべきじゃないかな

宮田 眞琴

嘘つけぇ!晴翔意外と関西弁つこうてたやろが

出雲 治

ほんとですか?!想像出来ませんね

自分の話で盛り上がられても、とやれやれと首を振った。

先からこの二人に呆れてばかりだ。

本当に、こいつらとてつもなく仲がいい__というか、気が合うんじゃないか?

そんなことを考えると、なんだか面白くなってくすりと笑みがこぼれた。

出雲 治

…今笑う要素ありました?

月見 晴翔

いや、ふ……んふふ

月見 晴翔

なんでもないよ

宮田 眞琴

そういう時の晴翔は絶対何かあるんよ…ま、ええか

宮田 眞琴

……ん?

突然、眞琴の鞄の中でスマホが震えた。

彼はその画面に映る名前を見て、納得したような顔をした後電話に出た。

出雲 治

……誰でしょうね?

月見 晴翔

さあ?まあ大方、後輩か先輩かだろう……

宮田 眞琴

えー?言うたやんか、ただの幼馴染やって

宮田 眞琴

大丈夫、分かった、分かってるて

宮田 眞琴

すぐ帰るから、な?

出雲 治

……彼女じゃないですかアレ

月見 晴翔

あー……違う、だろ…

ちょこちょこ聞こえてくる彼の電話内容に根拠もない妄想を広げる。

暫くすると電話が終わり、こちらへ戻ってきた。

宮田 眞琴

もうお暇させてもらうわ、聞きたいことも聞けたしな

月見 晴翔

あ、嗚呼……ところで、さっきの電話相手って

分からないものを分からないままにしておくのもモヤモヤしてスッキリしないので、思い切って聞いてみる。

すると彼はなんともないような声で

宮田 眞琴

ああ、俺の後輩やで

と言った。

はて後輩とあんなに重い会話をするものかと不思議に思ったが、もう突っ込まないでおく。

宮田 眞琴

そんじゃあな、今日はありがとさん

月見 晴翔

ああ、またよろしく

出雲 治

宮田さん、また

宮田 眞琴

おん、またな!

そう言って事務所の扉を開き、出ていった。

出雲 治

後輩…後輩……?

月見 晴翔

おい待てもう考えるのはよせ

月見 晴翔

まあ、確かに眞琴はああいうのに好かれやすいから…

出雲 治

そうですか、じゃあもう気にしません

既に遠い目をしていた出雲だったが、僕からももう何も言えなかった。

眞琴の居なくなった事務所はどうも広く感じられた。

そもそも、3人いてもだだっ広い事務所なのだが。

それでも、この広い事務所に1人だった頃よりも寂しさは無い。

今は出雲がいるから、その寂しさは緩和されているのだと、そう考える。

__to be continued

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