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今から約7年前。
僕がまだ27歳だった頃。
あの日もいつものように、事件解決のために駆り立てられていた。
おそらくその日は快晴で、また殊更難しくもない事件だったのだろう。
もちろん現場に出向いたのは午後4時頃だが、まだ日が沈み切る前に事件は解決された。
出雲治と出会ったのは、その日の帰り道であった。
事件も無事解決され、さあ事務所に戻ろうとしたところ。
何故だか分からないが一人の男が目に入った。
おそらく20歳程度の就活生らしきその男はベンチに腰かけてぼんやりと、慌ただしく動く警察のことを眺めていた。
それで、どういう気持ちでだったか、僕は男に話しかけた。
その時の男の反応は、多分いやでも忘れない。
月見 晴翔
僕にしては珍しく敬語を使って話しかけた。
声を掛けると彼はゆっくりと顔を上げて、僕の顔を認識すると少し顔を顰めて、
出雲 治
月見 晴翔
出雲 治
いくら僕が幼く見られがちだからって、流石に高校生ではないだろう__と、声には出さなかったもののひとり思う。
だから少し揶揄ってやろうと、僕の目に映る彼の印象をそのまま言ってやろうと思った。
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
出雲 治
反応からして、殆ど合っていたのだろうか。
きまりが悪そうに俯いてしまった。
しかし暫くすると彼はぽつりぽつりと喋り始めた。
出雲 治
出雲 治
出雲 治
思っていたよりも思い悩んでいる様子の彼に、過去の僕を重ねてしまった。
その頃は大学だとか、就職だとか、全てが面倒で、どうすればいいのかが分からなかった。
尤も、両親は既に僕が14歳程度の時に亡くなっていて、僕が18になると無情な祖父母たちは僕を追い出した。
それでも幸運なことに僕は18歳の時、今は僕が継いでしまった探偵事務所の元責任者に拾われた。
それからなんやかんやあって大学も行ったし、今は無事に事務所で働いている訳だが。
僕は過去の僕と同じような男を見つけてしまった。
どうしても放っておけなくて、後先を考えないことを口走ってしまったことは、少し申し訳なかった。
月見 晴翔
月見 晴翔
出雲 治
出雲 治
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
まくし立てるように喋りたいことを喋った僕に、彼は目を白黒させていた。
まあ、それもそうだ。
失敗続きで、上手くいかない原因も分かっていて、これからどうしようかと悩んでいて、それでいて探偵事務所からスカウトなるものを受けた。
普通はありえない話なのである。
それでも僕は彼を手放すつもりはなかった。
ここでいい人材を見つけられたのはなんとも都合がいい。
つい最近までは元責任者と二人で回してきた仕事も、一人ではなかなか回らない。
それに、彼の目は揺らいでいる。
この突然降ってきた職に就くチャンス。
取るべきか、取らぬべきかで迷っている。
__もうあと一押しなのだ。
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
月見 晴翔
もちろん嘘は言っていない、とは言っても僕はバイトもしたことがなければサラリーマンとして働いたこともないが。
さて、この言葉なら僕の下についてくれるだろうか、と彼の様子を伺うと、決断した瞳をしていた。
出雲 治
その言葉にほっと息をついた。
月見 晴翔
月見 晴翔
出雲 治
出雲 治
月見 晴翔
出雲 治
月見 晴翔
月見 晴翔
申し訳なく思っている様子に、根は大変いいやつなんだと理解した。
かく言う僕もあまり人と関わるのが上手い方ではないが、何となく同類意識で上手くやっていけそうな気がした。
一通り話し終えてみると、少し余計なことまで喋ったかもしれないと思った。
だが、なかなか眞琴も真剣に聞いていたようだった。
宮田 眞琴
宮田 眞琴
月見 晴翔
宮田 眞琴
出雲 治
宮田 眞琴
月見 晴翔
出雲 治
あからさまに話を逸らした出雲に、ひとつため息をついた。
それを分かって、眞琴も安堵の表情を浮かべている。
宮田 眞琴
出雲 治
月見 晴翔
宮田 眞琴
月見 晴翔
月見 晴翔
出雲 治
月見 晴翔
宮田 眞琴
出雲 治
自分の話で盛り上がられても、とやれやれと首を振った。
先からこの二人に呆れてばかりだ。
本当に、こいつらとてつもなく仲がいい__というか、気が合うんじゃないか?
そんなことを考えると、なんだか面白くなってくすりと笑みがこぼれた。
出雲 治
月見 晴翔
月見 晴翔
宮田 眞琴
宮田 眞琴
突然、眞琴の鞄の中でスマホが震えた。
彼はその画面に映る名前を見て、納得したような顔をした後電話に出た。
出雲 治
月見 晴翔
宮田 眞琴
宮田 眞琴
宮田 眞琴
出雲 治
月見 晴翔
ちょこちょこ聞こえてくる彼の電話内容に根拠もない妄想を広げる。
暫くすると電話が終わり、こちらへ戻ってきた。
宮田 眞琴
月見 晴翔
分からないものを分からないままにしておくのもモヤモヤしてスッキリしないので、思い切って聞いてみる。
すると彼はなんともないような声で
宮田 眞琴
と言った。
はて後輩とあんなに重い会話をするものかと不思議に思ったが、もう突っ込まないでおく。
宮田 眞琴
月見 晴翔
出雲 治
宮田 眞琴
そう言って事務所の扉を開き、出ていった。
出雲 治
月見 晴翔
月見 晴翔
出雲 治
既に遠い目をしていた出雲だったが、僕からももう何も言えなかった。
眞琴の居なくなった事務所はどうも広く感じられた。
そもそも、3人いてもだだっ広い事務所なのだが。
それでも、この広い事務所に1人だった頃よりも寂しさは無い。
今は出雲がいるから、その寂しさは緩和されているのだと、そう考える。
__to be continued