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──ごめんね。
また、来世で
闇の中、声だけが響く
水面が足元から割れていくような感覚
手を伸ばしても、何も掴めない
ただ、
冷たい風が指先をなぞって消えていく
胸が締め付けられた瞬間、
世界は音もなく沈んだ
灰色の空
制服の裾が濡れたあの日、
君は笑っていた
潔
潔
和葉
和葉
その数日後、私は駅のホームに立った
理由なんていくつもあったけど、
最後に浮かんだのは、君の顔だった
風が頬を撫で、
視界が反転する
──また、来世で
目を開けると、
そこは全く知らない街だった
私は「一葉」という名前で、
普通の生活を送っている
でも、物心ついた時からずっと、
誰かを探しているような感覚が消えなかった
顔も、声も、名前も思い出せない
けれど、胸の奥がずっと騒いでいる
ある日の放課後、人混みの向こうに、
見覚えのないはずの後ろ姿があった
一瞬で、心臓が跳ねた
名前を呼ぼうとしたその瞬間、
一葉
彼は人並みに消えていった
家に帰ると、
机の上に小さなペンダントが置かれていた
一葉
いつから持っているのかはわからない
けれど、それを見ると理由もなく涙が溢れた
裏面には、
小さく刻まれた文字
──和葉へ
知らないはずの漢字に、胸が痛んだ
頬を伝う涙の向こうで、
誰かが囁いた気がした
「また、来世で」と
#杏月のコンテスト
また来世で
──end