客
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
客
客
惣塚衣岸
惣塚衣岸
言葉を理解ができず、客が片眉を上げる
その疑問を言葉なく受け止め、惣塚は剣呑そうに肩を竦めて見せた
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
客
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
丸メガネのレンズ越しに、血色の瞳が暗く光る
それと同時に、周囲の段ボールからじわりと水気が滲み出した
客
客
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
滲んでいたはずの水分はやがてしたたる水滴を経て
今やざぁざぁと音を立てて流れ出る川となって
店内を浸し始めている
足首まで増した水量におののき後ずさった客人は
わずかに怯えた目で惣塚を凝視していた
客
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
思わず後ずさる客の眼前に指を突きつけ
その記憶を透かし見るように瞳を凝視した
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
客
客
とたん、男の脳内にノイズが走る
甦るのは当時の重く冷たい、腹の底にひどく凭れる感覚だった
男には、幼い頃から自分が不器用だという自覚はあった
それは例えば手先であり
考え方であり
はたまた人間関係であり
もしくは生き方でもある
ただそれを補って余りある真面目さが自分の長所だと信じ
どんなに笑われ、揶揄され、哀れまれても
ひたむきに自分のやるべき事をこなし続けていた
しかしそれも、上司に疎まれるまでの話だ
自らの部下を上司のセクハラから守ろうとした事が
たやすく上司の逆鱗に触れた
組織の幹部クラスにとって
下位の中間管理職などどうにでもできる
管理体制の変更や指導役としての異動など
むしろ一般社員よりも容易にできる立ち位置にあった
ただ一度正義を行っただけで、堅牢と信じた足下は
果てしなく沈む沼地へと変貌した
その事が、人並み程度の強度しかない男の心にヒビを入れる
研修ではどんな綺麗事を説かれようと
実行すれば貶められる
理想と現実が一致しない世界は
脳内にひどく混乱を起こした
なにが正しいか、なにをすべきか分からなくなり
男は無能と蔑まれ、嘲笑われ
なんのために生きているべきなのかを見失った
気が付けば、本社の屋上からひょいと足を踏み出していた
遺される家族の事を考えている余裕などない
苦労をかけるが後は頼んだと、小さく懺悔しただけだ
五感を伴う急激な走馬灯に襲われ、男は愕然と中空を仰ぐ
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
流れ出る水音は、追体験の間に止まっていた
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
和らげられた声色に、男は悲しげな笑みを浮かべる
客
客
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
客
男はゆっくりと頭を垂れる
客
声を最後に、その場所には第一裁判処と宛名書きされた小包が落ちた
店内を満たしていた水は、今や痕跡もない
富士原千方
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
富士原千方
富士原千方
富士原千方
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
富士原千方
惣塚衣岸
富士原千方
惣塚衣岸
富士原千方
惣塚衣岸
惣塚衣岸
富士原千方
富士原千方
富士原千方
富士原千方
惣塚衣岸
不服そうに頬を膨らませ、まとめられた荷物をついと指で押す
するとそれぞれ地面に沈み、または空に浮かんで
溶けるように消える様子を見送り、惣塚は穏やかに目を細めた
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
生まれついての業は簡単に消えてくれないのだと肩を落とし
先ほどの客人から受け取った荷物を持って店先へ出る
静かに息を吹きかけると包みは綻ぶようにふわりとほどけ
幸せな家族写真がビル風の中に浮き上がった
惣塚衣岸
惣塚衣岸
惣塚衣岸
写真はサラサラと風の中に溶けていく
それが遙か上空に巻き上げられるのを見届けた後
鳴った雪駄がひょいと暖簾をくぐった
コメント
16件
この話もっと読みたくなりました!
ちょっと!! カタヅケ屋さん登場してるじゃないですか😳 別の作品で、こういうゲストキャラとしてこっそり登場しているの好きなので嬉しかったです✨ そうづか運輸は、死者の心残りだったことを配達して叶えてくれるのですね 井之上さんの書かれるお話はどこか温かみがあって、そんな優しい雰囲気が大好きです☺️