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第1話 - あ

2023年09月29日

#恋愛

結城　真矢

ヒロ

ショウタ

はい！お疲れ様です！

ヒロ

おつかれ

ヒロ

いよいよ、来月10月から弟子のお前たちが店の「今週のお菓子を販売する」

ヒロ

今までは、俺の補佐をしながら、販売するためのお菓子を考案してもらっていたと思う

ヒロ

ついに、お客さんに食べてもらえる時が来たんだ

ヒロ

一層、気を引き締めて仕事してくれ

ショウタ

はい！

ヒロ

第1周目は、ショウタ、お前だ

ヒロ

良い結果、楽しみにしてるからな

ショウタ

頑張ります！

ヒロ

じゃあ、また明日

～5分後～

セイタ

ショウタ

セイタ

来月から始まる「今週のお菓子の販売、ショウタからスタートだっけ？」

ショウタ

ああ、そうだよ

セイタ

第1周目がショウタなんて、

セイタ

店のクオリティー下げるんじゃねーの？（笑）

ショウタ

は？どういう意味だよ？

セイタ

だって、トップ成績で成績を収めた俺が1種目を飾る方が、

セイタ

絶対にお客さんの好感度も上げるのにさ

セイタ

なんか、最初からショウタのお菓子で週が始まると思うと...

セイタ

なんか残念だよな～

ショウタ

俺は、今回のお菓子は何回も試作して考えて作ってきたんだよ

ショウタ

だから、絶対に成功する自信はある

セイタ

え？本当かよ！

セイタ

いきなりハードル上げちゃって平気なの？（笑）

セイタ

あとで後悔するのは、自分だと思うけど

ショウタ

別に、後悔なんてしねーよ

ショウタ

そっちこそ、準備できてるのかよ？

ショウタ

俺は店を閉めた後も試作で何時間も店に残ってたけど、

ショウタ

セイタはほとんど店に残って試作してなかったじゃん

セイタ

店に残ってまで、試作するほど焦ってねーから

セイタ

営業してる時、手が空いてる時と少し残業していけば俺は完成できるの

セイタ

それほど優秀な奴ってことだから

セイタ

ま、ショウタは効率悪いし、時間も俺の倍かかるんだろうけどよ

ショウタ

最初は効率さよりも丁寧さと質が大事だろ

ショウタ

慣れてきたら、クオリティーも下がる

ショウタ

ヒロさんだって、いつも言ってるだろ

ショウタ

「食べてくれる人のことを考えて作れば美味しくなるって...」

セイタ

俺は、最初につくるときからいつもハイクオリティ―なものを作る出せるんだよ

セイタ

なんか、突然インスピレーション、っていうの？

セイタ

浮かんできてさー

セイタ

すぐにぱぱっと良いもの作れちゃうんだよね

セイタ

だから、今回の「今週のお菓子は俺の方が売り上げを出しながら、」

セイタ

コストも最小限に抑えて売れちゃうな～

ショウタ

ふーん、随分自信あるじゃん

セイタ

今までヒロさんの弟子だった奴、何人も辞めていって、

セイタ

残ったのは俺とショウタだけだけど、

セイタ

他の弟子がいた時も、今も俺のほうが仕事終わるスピードも速かったからな

セイタ

そりゃあ、自信は100％よ

セイタ

ちなみにショウタは？売れる自信何パーセントくらいあるの？

ショウタ

俺は、何とも言えないけど売り切りたい、って思ってるよ

セイタ

マジかよ！？

セイタ

ヒロさんにいつも怒られてるお前が、いきなり完売を目指すのは正直厳しいだろ～

セイタ

あとで泣くような結果になるんじゃね？（笑）

ショウタ

お前にそこまで言われる筋合い、ないだろ

セイタ

まあ、結果が出てからそれは言ってくれよ

セイタ

じゃあ、来月から1週間、頑張れよ～

～10月２周目の終わり～

セイタ

おい～ショウタ～

セイタ

何だよお前が作ったお菓子の売り上げ...！

セイタ

俺の売り上げの方が、お前のよりも２倍も多いじゃん！

セイタ

ショウタの作ったケーキは半分ちょっとしか売れなかったんだろ？

セイタ

やる気あんの？

ショウタ

そりゃあるよ！

ショウタ

まだ1回目だし...ちょっと感じが分からなかっただけだよ

セイタ

本当かよ？

セイタ

っていうか、最初から本気で行くのがプロ意識、ってもんだろ

セイタ

まだまだアマチュア気分だったか？（笑）

ショウタ

ちげーよ！

ショウタ

今回売れなかった理由は次に活かすためにしっかりまとめて、

ショウタ

絶対に完売してやるよ

セイタ

へ～強気じゃん

セイタ

でも、いきなり完売は無理なんじゃないの？

セイタ

だって、1回目で半分も売れなかったやつが、急に完売とかさすがに厳しいだろ～

ショウタ

いけるよ

ショウタ

俺は、やってみせるから

セイタ

ヒロさんも呆れた顔してたし、ロスも多くて怒られてたじゃん

セイタ

「何が悪かったのか、反省してしっかり次に活かせ！

だってな」

セイタ

俺が今度のレシピの考案、手伝ってやろうか？

セイタ

ショウタだけのアイディアじゃ、次もどうせ同じ結果になるだろ

セイタ

店の評価が下がるのは、同僚の俺にも迷惑なんだよ

セイタ

だから、黙って俺の言うこと聞いとけよ

ショウタ

そんなに人のことけなす暇があったら、自分の腕磨いた方がいいんじゃないの？

ショウタ

次の俺らのお菓子販売まで、あと1週間しかないんだし

セイタ

え？さらに本気出しちゃっていいわけ？

セイタ

製菓専門学校をトップの成績で卒業した俺はもっと本気なんか出しちゃったら、

セイタ

次は買えなくて、泣く泣く帰るお客さんとか出てくると思うけど...

セイタ

それでもいいの？

ショウタ

そんなに自信あるなら、俺も本気出してやってやる

ショウタ

あと1週間で、俺も本気で今までの最高のお菓子作って見せるから

セイタ

そんなこと言うなら、俺も本気出そうかな～

ショウタ

じゃあ、売り上げとフードロスの金額と量も入れて、勝負な

ショウタ

売り上げと、フードロスの損も足して金額が多かった方が、勝ち、ってことで

セイタ

いいじゃん、面白そう～

ショウタ

それで、俺が勝ったら、もう俺に口出しするの止めろよ

ショウタ

俺は、自分が作りたいものを作っていきたいんだ

セイタ

わかったよ

セイタ

お前が勝ったら、もう何も言わない

セイタ

その代わり、俺が勝ったら俺が頼んだこと、やってくれよ

セイタ

俺のさらに弟子、ってことで！

セイタ

色々使わせてもらおうかな

セイタ

そっちも、随分と自信あるんだな

セイタ

じゃあ、また2週間後の発表で

～2週間後～

ショウタ

おつかれ～2回目の「今週のお菓子の販売」

ショウタ

どうだよ？今の気持ちは？

セイタ

お前、２回目だけだろ！

セイタ

俺に勝てたのは...

セイタ

１回勝てたくらいで、でけー顔してんじゃねーよ！

ショウタ

俺は、今回全部、自分の実力で勝てたの

ショウタ

前回も、全部自分のスキルとアイディアで挑んだけどな

ショウタ

セイタは、違ったんだろ？

セイタ

は？何言ってんだよ？

セイタ

専門学校をトップで卒業したんだぞ？

セイタ

俺の手にかかれば、完売なんて余裕なんだよ！

ショウタ

俺、セイタがどうして完売できたか知ってるけど？

ショウタ

知り合いに頼み込んで、セイタが作ったケーキ買ってもらえるように、

ショウタ

頼んでたんだろ？

セイタ

は...？そんなわけねーだろ！

セイタ

なんでそんな適当なこと言ってんだよ

ショウタ

お前の友達、セイタのこと裏切ったみたいだな

ショウタ

たまたま店頭にいたヒロさんに、

ショウタ

「セイタに俺が今週のお菓子を売る週だけ来てほしいって言われましたって言ってたみたいだよ」

セイタ

あいつら！裏切りやがって！

ショウタ

頼む相手が間違ってたんじゃないの？

ショウタ

専門学校が同じだったやつに、片っ端から頼んでたらしいじゃん

ショウタ

セイタ、学校で周りのこと見下してたせいで、結構恨み買ってたんだって？

ショウタ

たまたま聞いちゃったんだよな～俺が店頭にいる時に

ショウタ

よく先生に怒られてる生徒に、「パティシエ向いてないだろとか言ってこともあったんだって？」

セイタ

そりゃ、そうだろ！

セイタ

上手いものを作れるやつが成功するし、

セイタ

人気店を作っていくだろ

ショウタ

違うだろ

セイタ

は？何が違うの？

ショウタ

２回目、セイタが敗退した理由分かってる？

ショウタ

十分リサーチしなかったからだよ

セイタ

そんなの、必要ないだろ

セイタ

時間の無駄だし、それに美味しいものを作れば、

セイタ

客は自然と来るんだよ！

ショウタ

でも、今回は俺が完売して、セイタは３割近く売れ残ったじゃん

ショウタ

その理由は、まずいケーキだったから、買ってくれなかった、って言ってんの？

セイタ

今回は、口に合わなかった人がたまたま多かっただけだよ

セイタ

だから、次からは必ず、売れるものを作れる！

ショウタ

自分が作りたいものを作るよりも、何を求められているのか作るのが、大事なんじゃないの？

セイタ

ケーキを買いたくてうちの店に来るんだから、

セイタ

見た目が良くて価格も手ごろであれば、みんなそれを買いたがるだろ

ショウタ

セイタ、ほんと今までヒロさんから何学んできたんだよ？

ショウタ

ヒロさんは、「心から食べてほしいと思うものだけを作るって決めてるから、」

ショウタ

流行とお客さんの声を聞いてるんじゃん

セイタ

え？お客さんの声？

ショウタ

自分の考案した今週のお菓子を販売する週は、

ショウタ

裏で作業するか、お客さんの前に出て様子を見るか...どっちでもいいって、いってたじゃん

ショウタ

どうしてヒロさんがそう言ったか、知ってる？

ショウタ

ヒロさんはお客さんがいる時は、なるべく表に出ようとしてるからだよ

ショウタ

お客さんの好みを聞くために

セイタ

え？そうだったのか？

ショウタ

俺も、最近知ったけどね...ヒロさんは、俺らにそのことに気づいてほしかったんじゃない？

ショウタ

ノートに細かく年齢とか性別に分けて、甘すぎないのか、フルーツのフレッシュな甘さがいいのか、

ショウタ

細かく、まとめてるんだよ

ショウタ

それが、自分の店に来てくれるお客さんの大事な情報なんだ、って俺は気づいた

ショウタ

だから、その人たちに届けるために、俺もリサーチしてたんだよ

セイタ

そんなのヒロさんに聞いて、ずるいだろ！

ショウタ

聞いたんじゃないよ

ショウタ

俺も店頭に並んでみたんだ

ショウタ

そしたら、たまたまヒロさんがメモに色々書き込んでいるのを見つけただけ

セイタ

それだけで...２回目に店頭に出したケーキが完売したのかよ？

ショウタ

そうだよ、たったそれだけ

ショウタ

シンプルだろ？お菓子を届ける、って

ショウタ

シンプルだけど、プロ意識がないやつには難しいかな～

ショウタ

最初に俺のこと「アマチュア気分？とかって馬鹿にしてたのはセイタなのに...」

ショウタ

随分成績下がっちまったな

ショウタ

ヒロさんも、きっとめちゃくちゃ怒るだろうな～

セイタ

うわっ...！ヒロさんからめっちゃ連絡来てる！

ショウタ

じゃあ、俺はここらへんで失礼するよ

～1分後～

ヒロ

セイタ、話がある

セイタ

はい

ヒロ

お前、自分の作った商品に誇り、ってものがないのか？

ヒロ

自分の友人に頼ってまで売り上げを伸ばそうとするなんて...

ヒロ

やっていいことじゃないだろ

セイタ

すみません...

ヒロ

弟子失格だぞ！

セイタ

本当に、すみません...あの、これからは本当にやりません！

セイタ

ヒロさんの下で働かせてください！

ヒロ

俺の弟子のままでいたいって？

セイタ

はい！

ヒロ

じゃあ、これからはショウタのサポートもしてくれよな

セイタ

え？

ヒロ

ショウタの実力と、熱意を感じてな

ヒロ

定期的に、ショウタにもうちの店の期間限定商品を作ってもらうことにしたんだ

セイタ

ショウタがですか！？

ヒロ

自分の作った最高のお菓子を食べてもらいたい、って言う思いは誰よりも大きい、

ヒロ

って分かったからな

ヒロ

俺はその気持ち、応援したいと思ったんだよ

ヒロ

でも、まだ時間配分とか掴めないとこがあるから、

ヒロ

洗い物とか、主に雑用してショウタのサポートしてくれ

セイタ

雑用、ですか...

ヒロ

なんだ？できないのか？

セイタ

いや！できます！やらせていただきます！

ヒロ

よし、それじゃあ、よろしく頼んだぞ

～後日談～

ショウタ

俺はまず、月に１回のペースでヒロさんの店の期間限定商品を出すことになった

ショウタ

１回目の限定商品はお客さんに好評で、完売することができました

ショウタ

また、店頭に立つことで数人のお客さんにも顔と名前を憶えてもらえました

ショウタ

セイタは俺を見下すこともやめてくれて、気盛がすっきりしています

ショウタ

これからも、お菓子作りに愛情をこめて向き合っていきたいです

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結城　真矢

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