甘い手。 甘い声、 俺だけに向ける 優しい微笑み。 それら全部が どうしようもなく大好きで、 お前といる空間は、 幸せそのものに感じられた。
だから
だからさ。
桜
見回りもなく、 暇を持て余した生徒達が 集まりに集まって ワイワイ楽しそうに 過ごしていた。 どの顔も皆本気の笑顔そのもので、 俺には持ってないものを 持っている様に感じた。
安西
蘇枋
蘇枋
突然放送室からスピーカーへと 聞こえてきた爆音の音声。 皆がいそいそと耳を塞ぐ中、 級長の呼び出しが行われていた。 「わりぃ、蘇枋行ってくる。」 そう俺に一言残し、 ツートーンカラーのした、 猫っ毛の髪の毛を揺らしながら 小走りで屋上へと 走っていった。
安西
蘇枋
蘇枋
そう返すと、 安西君達は顔を顰め、 「イケメンオーラーがっ」 や、 「妬ましい」 などと、 周りにはモヤっとした 黒いモヤみたいなのが かかっている様にみえた。
うらめしやと言って、 今すぐにでも襲いかかって きそうだ。 放っているオーラと、 顔触れは、幽がつくそれだった。 机の上に広げられたスゴロク。 サイコロや、 自分のコマなど しっかりセットは揃っていた。
幾ら断っても聞く耳を持たなかった 安西君に、 腕をズリズリ引っ張られ、 流れる様に ゲームに参加していた。
栗田
鼻息を荒くして 少し興奮している様な 安西、栗田、柿内 の3人。 そんなに必死になってまで、 俺に勝ちたいのだろうか。 ため息を着きながら、 適当に済ませようと 渋々ゲームに参加した。
柿内
1人目が勝ちへと進むと、 ほか2人は 焦りだした様に 「ずるいぞ!!」 などのとブーイングした。 柿内君は、そんなもの耳に入らない 負け犬の遠吠えと 少し調子に乗っていた。
スゴロクの場面は 終盤になっており、 誰がゴールにたどり着いても おかしくない状況と なっていた。 皆がワイワイ威勢よく スゴロクをぶん投げ、 着実にゴールへと 向かって言っていた。
栗田
柿内
そうこう考えている内に、 もう1人がゴールラインを超えた。 周りが盛り上がり、 安西君が 「絶てぇ勝ってやる!」 と大声で意気込んでいる。 そんなことは今の俺の 眼中にはなく、 中々帰ってこない恋人の 事ばかり考えていた。
安西
蘇枋
軽く会話に参加しながらも 結局のところ 考えるのはツートーンカラーの 頭の色をした恋人の事ばかり。 思い出すのもカッコイイ君や、 俺にそっと照れくさそうに 甘えてくる可愛い君 何を考えるも、 思考が全て君で埋め尽くされていた。
安西
そうぼーっと 考えていると、 急に教室に響いた大声で、 一気に現実へと引き戻された。 机に置かれたボードゲームに 目をやると、 そこにはゴールまで 一気に流れ進む 安西くんのコマがあった。
先に勝利を勝ち取っていた2人も 安西君の声に交わり、 ワイワイ賑やかそうにしていた。 本当に仲がいいなぁと、 俺も最後サイコロを転がし ゴールへ足を踏み入れた。
安西
蘇枋
やっと終われた。 そう思いながら、 この賑やかな場から去ろうとした。 それを逃がすまいと、 安西君チームが 俺の腕を思いっきり引っ張った。
安西
蘇枋
怪しげな笑いをうかべる3人に、 俺はそこでやっと 何かに嵌められたことに 気がづいたのだった。
安西
蘇枋
安西
確かに桜君の事ばかり 考えており、 すごろくのルールを軽く聞いた 後の記憶はなかった。 この時本当に やってしまったなぁと 思った。 笑ったままのポーカーフェイスは 崩さず、 何とか逃れる方法を探した。
蘇枋
栗田
蘇枋
安西
柿内
ドヤ顔をしている安西君だが、 周りのツッコミにウッと 喉が唸った。 本当にどう言う罰ゲーム なのだろうか。 すっぽかしてしまってもいいだろうが、 それはそれで あとがめんどくさいだろう。
安西
蘇枋
彼の恥ずかしがり屋な 性格を考え、 隠しては無いが 周りには伝えていない。 相手の名前や、 どこの学校の人かも 分からないが、 俺の溢れ出る幸せオーラで、 クラスメイト達は 恋人がいると勘づいている 者も多くいるだろう。
意外にも桜君は、 俺よりも隠すのが上手いらしく、 俺の相手が、 美しい瞳と 猫っ毛なツートーンカラーの 髪を持つ、 このクラスの級長だとは、 誰も思っていないらしい。
安西
安西
栗田
安西
柿内
安西
蘇枋
自分から出た言葉は、 今までには なかったかの様な 冷たい言葉だった。 嘘だろうと、 彼に別れると告げる というのは、 俺の世界にとってはありえない 事だからだ。
安西
有り得ない程 不機嫌顔の俺に、 安西君は 宥める様に罰ゲームの 内容を喋って言った。
安西
安西
それでも俺は嫌だと思った。 彼の傷つく顔を、 見たくはないと思ったからだ。 あの綺麗な瞳が、 また闇に堕ちてしまうのを、 俺は酷く恐れていた。
蘇枋
安西
蘇枋
栗田
栗田
蘇枋
俺はスマホに来ていた 誤字だらけのメールに目を向け、 教室に一言放ち、 下駄箱にいる恋人の元へと向かった。 いつもなら軽い足取りも、 今だけは少し重く感じた。
俺は今から、 彼を泣かせてしまうのだろう。
蘇枋
腕を後ろに組みながら、 優雅に廊下を歩いてきたのは、 眼帯をつけ、 不思議な雰囲気を漂わす 俺の恋人。 落書きばかりされ、 薄汚れ廊下を歩く姿は、 こいつにはあまり似合わないと 思った。
桜
蘇枋
蘇枋
図星をつかれ、 ウッと少し唸った。 男の優しい笑顔は、 赤くなった俺をみて すごく楽しそうだ。 その笑顔は 今にも周りに薔薇が 咲き誇りそうだった。
蘇枋
桜
不意に言われた 「かわいい」 という言葉に、 さらに顔に体温が上り詰めるのを 感じた。 こんな真っ赤な姿見られたくなくて、 思わず下に向いたが、 頬を優しく包み込まれ、 顔を無理やり上に挙げられた。
蘇枋
初めて会った時とは少し違う 馴れ馴れしさ。 この男は、 こんなにも甘くなってしまうのか。 砂糖のような優しい笑みに、 どんどん心がドロドロと 溶かされていくのを感じる。
ずっと下駄箱で やり取りしていた所為か、 他の生徒達の声と足音が聞こえ始めた。 急いで蘇枋を引き剥がし、 さっさと帰ろうと促した。
蘇枋
蘇枋の胸板を バシバシ叩きながら 減らない口を 蘇枋より小さな自分の手で 抑えた。 渋々歩き出した蘇枋は、 甘い笑顔をまた俺に向けた。
シュガー100%の 甘い笑顔。 たまに見せる黒い笑顔も、 フライパンでよく焼いた 砂糖のようだった。 この男に1番似てるのは、 砂糖なのだろう。
桜
桜
砂糖100%の笑顔を向けられると、 無性に羞恥心が沸いた。 頬や耳、顔に熱が昇り暑くなった。 身長差があり、 男はかがみ気味で、 俺の顔を覗き込んできた。 綺麗な蘇芳色の隻眼が、 俺のオッドアイを覗き込んだ。
蘇枋
蘇枋
桜
この笑顔にどうしても勝てなくて、 ただ顔を赤くするだけで 何も言い返せなかった。 出てこない言葉に戸惑っていると、 蘇枋がまた笑った。 本当に幸せというオーラを 放ちながら。
蘇枋
桜
突然そう言われ、歩みを進める 足を止めた。 お互いに進むことなく、 その場に留まり見つめあった。 顔付きは、さっきまで見ていた お砂糖100%の幸せ笑顔ではなく、 真剣そのものだった。
その様子に、 俺の体はガチっと音がなりそうな程、 固く強ばった。 蘇枋から放たれる言葉が怖くて、 出来れば聞きたくない。
蘇枋
蘇枋
出てきた言葉は 「なんで、」「嘘だ。」 信じたくなかった、 俺の戯言だ。
甘い手。 甘い声、 俺だけに向ける 優しい微笑み。 それら全部が どうしようもなく大好きで、 お前といる空間は、 幸せそのものに感じられた。
俺の瞳を濡らす物には、 気付かないふりをした。 頬を伝う何かは、 俺の目から滑り落ち 地面を濡らした。
大好きなんだ。 お前の全てが。 その一言は、 この後に及んで恥ずかしくて、 何も出てこなかった。
今までの全てが、 甘い砂糖の様な 幸せの空間が、 嘘だなんて、 信じたくなくて 自分の中で言い訳を並べた。
恋なんて知らなかった俺は、 いつの間にか、 こんなにお前の事が 好きになってたなんて。 そう気づいたのは お前に振られたこの瞬間だった。
桜
桜
蘇枋の顔を見るのが怖くて、 ギュッと自分の手を握り 下に俯き言葉を待った。 「俺の事好きじゃなくてもいいよ。 だからさ、お試しで付き合ってくれないかな……?」 そう行ってきた1か月前の お前の告白。 そのことを思い出すと、 この男の残酷さをしった。
蘇枋
俺がお前を好きになった後に 突き落とすだなんて、 本当に酷い男だ。 そんな酷い男のことが好きな俺も、 きっとどうかして いるのかもしれない。
蘇枋
まだ俺から何も言えていない。 『好き』という言葉。 まだお前に、 俺の気持ちも何も伝えていないのに。 このままで終わってしまうのだろうか。 返事をずっと待っているお前に まだこの気持ちを伝えられてないんだ。
だから
だからさ。
桜
その瞬間、 俺の少し冷えた体温に、 暖かな体温が伝わってきた。 香水をつけていない男の匂いは、 さっぱりとした柔軟剤の匂いだ。 何が何だか分からなかったが、 俺の目からは、さらに涙が 出てきて、 男の肩を濡らした。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
蘇枋
男から出た弱々しい言葉に 俺の頭はさらに混乱する。 1か月。その期間が今日で終わる。 そこでも行動しない俺に 痺れを切らし、 男はこんなことをしたのだろうか。
桜
桜
桜
桜
涙声の中出た言葉は、 とても震えていた。 蘇枋が俺に向き合って、 優しくも俺を虜にした 優しい砂糖の笑顔を また俺に向けてくれた。
蘇枋
この体温をもう少し味わっていたくて、 蘇枋の背中に手を回し、 制服をギュッと握った。 そこで蘇枋は ポツリポツリと話し出す。 何故このような事をしたのかを。
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋
桜
ちょっと不貞腐れた態度をとると、 それも愛おしそうな目で俺を見てきた。 「ごめんごめん、」 と悪びれた様子も無い 言葉が返ってきた。
蘇枋
確かにそれもそうだ。 きっと俺は何も言わず、 後悔したまま この恋人期間の事を思い出すだろう。 俺の事をよく知ってる男に 少し関心する。
蘇枋
蘇枋
その言葉の先を聞く前に、 俺は蘇枋の言葉を静止した。 俺に口を塞がれ、 びっくりした顔で 俺を見てきた。
桜
後悔はしたくない。 そう思い、 自分の口から言うことにした。 息を整え、 濡れた目を制服の袖で拭った。 面と向かって、 俺はこの言葉を口にした。
桜
イエスの言葉の代わりに、 また思いっきり抱きしめられた。 力いっぱいぎゅうぎゅう に抱きしめられ、 俺の唇も奪われた。
恋人2人、 唇を離し 俺の瞳の様な 夕方の時刻 2人して笑いあった。
シュガートーストの嘘と恋と。
ℯ𝓃𝒹
コメント
13件
素晴らしい作品をありがとうございました! 読み切りでもものすごく満足感がありました! どっかの誰かさん。の作品めっちゃ好きです! タイトル名はセンスの塊だし、伏線回収も凄いし、尊敬します! 最高でした!
見るの遅れて住みません!読み切りありがとうございます!甘さと共にくる切なさが美味しかったです!(?)素敵な作品をありがとうございます!
毎回思うけど、タイトル名センスありすぎて好き 甘々100%ご馳走様でした˘,,ᴗ ̫ ᴗ,,˘